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愛しのバベイオモイド神さま💕【1/13】 「西田少女地獄【3】」
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にんげんが
皆良心を無くしつゝ
夜のあけるまで
ダンスをしてゐる
~ 猟奇歌 夢野久作
■ 注意 ■
この作品はフィクションです。
ところどころに、実在の人名・地名が登場しますが、それ以外は全てフィクションです。
また、実際の事件をモデルにした事件もいくつか登場します。
それらの事件は物語の構成上、発生年や関係者の名前を変更しています。
予めご了承ください。
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90年代末~ゼロ年代初頭と、故・村崎百郎氏に捧げます
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■2022年:31歳
今年、あたしは結婚する。
あたしは31歳。
相手は一つ年上の会社の同僚。
お互いなんとなく、見事にタイミングを逃して、切羽詰まったかんじ。
相手は可もなく、不可もない、どこにでもいる、これといった個性のない……はっきり言うと退屈でつまらない男だ。
でも誠実で、やさしい。
顔は十人並みだけど、それほど悪くはない。
セックスはふつう。
いたってふつう。
ふつうすぎるくらいふつうだ。
めちゃくちゃ良くもないし、めちゃくちゃヘタでもない。
変態的なことはしない。
アブノーマルなことはしようとしないけど、本当にそういうことをしたくないのだろうか?
ほんとうはそういう欲望をひたすら覆い隠していたりして。
べつに無理せず曝け出してもいいのに。あたしとしては。
8月に入籍するけれど、一緒に暮らしはじめる前に一度、あたしから誘ってみようと思う。
彼は引くだろうか。それとも、喜ぶだろうか。
喜んでくれたら、それはそれでうれしい。
なぜなら彼は、あたしがどんな女かあんまり知らないだろうから。
そりゃ、結婚までに一応二年半、付き合った。
デートもしたし、セックスもした。
お互いのことをいろいろ語り合った。
あたしの恋愛遍歴はそれほどたいしたことはないけど、彼のほうもそのへんでは変わらない。
彼に打ち明けて、彼がびっくりするようなことはないはずだと思う……
たった一つの例外を除いて。
実家を出て、彼と新居で暮らし始めるので、いろいろと自分の持ち物を整理している。
そこで出てきたのが、この日記だ。
1999年から、2005年まで……あたしが8歳から14歳の間につけていた、秘密の日記。
これを十数年ぶりに読み返してみた。
やはりこれだけは……この日記だけは、彼の目に触れさせるべきではないと思う。
彼だけじゃない。
あたしが実家を去ったあと、両親がこの日記を見つけたら大変だ。
そんなことが起こったら、マジで舌を噛んで死んでやる。
この日記だけは、やっぱり焼き捨てないといけない。
しかし……それにしても。
いったいあたしは当時、何を思ってこんな日記を書いていたんだろう?
「バベイオモイド神」って何だ?
なんだって8歳のあたしは……
遺薔薇鬼屠死夫みたいな、ちんけな猟奇殺人犯に夢中になったんだろう?
ほんとに理解できない。
そして、あたしは遺薔薇鬼屠死夫に会うために、あんなことまで……
これは倫理や道徳の問題ではない。
誰にだって、あることだと思うけど。
子どもの頃、夢中になっていたものを思い出して、なんで自分がそんなに夢中になっていたのか、夢中になっているがゆえになにをしたのか、それを思うと、ほっぺが真っ赤になるどころか、髪をかきむしって床を転げ回りたくなるようなことの一つやふたつ、あなたにもあるはずだ。
だから、あなたにだけ、この日記からの抜粋を伝えて……その後はこの日記を焼き捨ててしまおうと思っている。
あなたは、あたしの少女時代の秘密を共有する。
秘密を守れるでしょ?
誰にも言わないでね。
たのむよマジで。絶対。
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