ホ ラ ー 官 能 小 説 「 電 動 」【4/4】
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あのお風呂場でわたしを襲った“振動”は……
肉体を失った夫が、わたしを慰めるため……そして死してなお消えない、わたしへの愛情と欲情を満たすため、わたしのもとに現れた証のでは……
全身に寒気を感じました。
と同時に、胸の奥から熱いものがこみ上げてきました。
わたしの思いは、確信に変わります。
あれは、夫なんだ。
わたしのことをあれほどまでに愛してくれた夫が、帰ってきてくれたんだ。
寝床の中で、熱い涙が頬を伝いました。
(……ありがとう……ありがとう……あなた……)
浅ましく風呂場でひとり絶頂を迎えてしまったわたしでしたが、それも肉体を無くした夫のせめてもの愛の証しなのだと思うと……
それほどまで夫はにわたしを愛してくれていたのだと思うと……
わたしは1人寝床の中で泣きました。
いくらでもいくらでも泣けそうな気がしました。
しかし……その時でした。
「きゃっ……えっ?」
突然、わたしを覆っていた掛け布団が、何者かに取り去られたのです。
枕に顔を埋めていたわたしは、乱暴に身体を仰向けに裏返されます。
「えっ? ……えっ?!」
夫が亡くなって以来、パジャマを着る気にもなれず、わたしはいつも下着の上にTシャツだけの姿で寝る習慣がついていました。
「きゃあっ!!」
突然、そのTシャツが胸の上までまくり上げられました。
ブラをしていないわたしの乳房が、躍り出ます。
そのままシャツはわたしの首を抜け、頭の上までせり上がりました。
Tシャツの首の部分が、わたしの丁度目の下あたりで止まります。
わたしは万歳をするような恰好で手の動きを封じられたと同時に、目隠しをされている格好になってしまいました。
「い……いやあっ………………ひっ!!」
「振動」の“群れ”が、一気に襲いかかってきました。
身体のありとあらゆる部分……首筋、両方の乳頭、脇腹、おへそ、内股、膝の裏……体中のいたるところに、一気にその振動する「何か」が、押しつけられたのです。
「そ、そんなっ……や、やめっ……てっ………………うぐっ!」
悲鳴を上げようと開いた口に、「それ」が入ってきました。
同じように振動する、太い何かが。
わたしの口の内壁を、舌を、その振動がなで回します。
それが合図だったかのように、全身に押しつけられたその無数の振動がわたしの全身を這い回り始めました。
「んんんんっ!!! ……うぐっ……くっ……ううっ! ううううっ!」
先ほど風呂場で受けた性感の余韻を残した身体は、わたしの心を置いてけぼりにして、激しく反応を始めました。
無数の「振動」が……振動をもたらす「何か」を握った無数の見えない「手」が、わたしの身体中を蹂躙します。
上に上げられた両方の手のひらに、その振動する筒状の物体を握らされました。
身体はまるでベッドに磔になったように、動かすことができません。
無数の「手」が、わたしの全身を押さえつけているのを感じました。
「んんんんんんんっっっ!!!!」
全身にもたらされる無数の振動に、他愛もなくわたしは身悶え、鳴き声を上げます。
あっというあの部分は火のように熱くなり、蜜を噴き出しました。
ベッドのシーツは腰の辺りまで、ぐっしょりと濡れています。
「んんっ、んんっ、んんっ、んんっ……………………んっっっっっっっ!!」
すぐに絶頂がやってきました。
しかしそれでも、無数の「手」はわたしを許しません。
無数の「手」はわたしをベッドの上で裏返すと、四つん這いの姿勢を取らせました。
(い……いやっ……)
声を上げようにも、口の中にはまだその振動する筒が、押し込まれたままです。
けだものの姿勢にされたわたしに、下から、上から、前から、後から、振動が再び襲いかかりました。
乳首を、敏感な肉の壺を、お尻の穴を……。
こ…………これ、夫じゃない……ぜったい違う…………
わたしは直感でそう感じました。
わたしを弄んでいるのは、夫ではありません。
部屋の中に、大勢の気配と息づかいを感じました。
「んんっ……ん、ふぐっ……んぐっ……んっ……んんんっ……んっ、んっ、んっ……」
四つん這いの姿勢のまま、悶え、喘ぎ、嗚咽し、許しを請うわたしを取り囲む、大勢の男たち。
わたしは、自分に対して向けられている、身を焦がすのような男たちの欲情を感じました。
普通なら、これほど恐ろしいことはないでしょう。
恐怖と戦慄が、わたしを震え上がらせるはずです。
しかし、そのときわたしを支配していたのは、逃れようもない激しい肉体の快楽でした。
わたしは、その姿のない見知らぬ男たちの蹂躙を受け、ひたすらその快楽が成就されることだけを求めていました。
そんなわたしの気持ちを知ってか……
姿のない陵辱者たちはわたしを焦らし、嬲り、翻弄しつくします。
やがて……新たに2本の「何か」振動を、身体の2つの部分に感じました。
「それ」が、蜜を溢れさせている前の穴と、ヒクヒクと痙攣を繰り返す後ろの穴に…同時に押しつけられたのです。
「むっ! ……ぷはっ……い、いやあっ! そこはだめっ!」
口の中に押し込まれた、見えない振動する物体を吐き出し、思わず叫びます。
それまでに……後ろの穴の経験が、ない訳ではありませんでした。
しかしそれだけに、いまこの状態でそのような刺激をうけて、果たして自分が正気を保てるかどうか、自信がなかったのです。
しかし容赦なく、その2本は侵攻を開始しました。
「んんんんっ! ……くっ…………うっ…………ううっ……いっ……やっ…………だ、だめっ…………」
じわじわとそれぞれの穴に挿入されていく「それ」……
わたしは枕を噛み、思いとは裏腹にお尻を高く挙げていました。
「くうっ!!」
一気に、「それ」が挿入されました。
わたしの両方の肉の穴が、「それ」をきつく締め上げます。
「はあっ! い、いやあ……あ、あ、あっ……は、はあっ………………」
思わず上を向いた口の端から、涎が一滴垂れ落ちていくんを感じました。
2つの穴の中で、「それ」がゆっくりと前後運動をはじめます……
その晩のことは、もう覚えていません。
明るくなった頃には、わたしはTシャツを頭に引っかけたまま、死んだようにベッドに横たわっていました。
わたしが身を横たえていたシーツは、わたしの汗と、涙とはしたない液で、バケツをぶちまけたようにぐっしょりと濡れていました。
■
明らかに夫ではない、姿のない陵辱者たちは、それから毎夜のようにわたしを弄び続けました。
わたしはそのたびに、浅はかな快楽に打ちのめされ、何度も絶頂を迎えます。
日が経つにつれ、陵辱者達は、始めの頃のような滅茶苦茶な愛撫をしなくなりました。
わたしの身体にいくつかある、快楽のつぼを知り尽くしたのでしょうか?
やがて陵辱者達はその部分をゆっくりと、じらすように責めてくるようになりました。
『い、いやっ……そ、そんなっ……い、いじわるっ……し、しないでっ……も、もっとっ……もっとっ!』
わたしは何時間もの間、涙を流しながら絶頂を求めてベッドの上をのたうち廻ります。
今でも、確かに恐怖は感じます。
しかしいつのまにか、わたしは夜を待ち遠しく思っている自分に気づきました。
むしろそのことのほうが、わたしを不安と絶望に追い込みます。
また、陵辱者たちは時と場所をあまり選ばないようになりました。
夫のお墓に参ったとき、墓の前で無数の振動が襲ってきたことがあります。
また電車の中や、人と会っているときも……。
次第にわたしは外出を避けるようになりました。
今はひっそりと夫が残してくれたこの家に暮らし、いつ来るともしれないあの「振動」の群に怯えながら、いやむしろそれを待ちわびながら、日々を過ごしているのです。
仏壇の前で夫の位牌に手を合わせるたびに……
わたしの心の中では、夫への申し訳なさと、こんなふうに、わたしをひとりぼっちにしたことへの恨めしさが交差します。
いっそ悲しみなど、何も感じないようになればいいのに……そんな風に思うこともあります。
それでも今日も、わたしは夫の仏壇に手を合わせます。
ごくまれに……夫の仏壇の前で手を合わせている時に、あの陵辱者たちがわたしに襲いかかってくることがあります。
『そ、そんなっ……こ、ここじゃいやっ! お、おねがいっ……こ、ここでだけはっ……せ、せめて、ベッドでっ…………おねがいっ!』
そんなふうい仏壇の前で辱められ、結局、はしたない声を上げるときは……強烈な快感が、いつもより早く、わたしを絶頂に導きます。
そんなわたしを、天国の夫はどのように見ているのでしょうか?
仏壇の鈴を鳴らすと、お線香の匂いと音の余韻が、静まり返った部屋を満たします。
と、わたしのうなじが鳥肌を立てました。
背中に感じるのです。
わたしに対する果てしない欲情を抱いた、何人もの見えない陵辱者の気配を。
わたしはゆっくりと振り向きました。
相変わらず、彼らの姿は目に見えません。
わたしはもう一度仏壇に向き直り、夫の遺影に微笑み掛けます。
そうするといつも、夫とわたしを隔てている距離が、一歩一歩少しずつでも…………縮まっていくような気がするのです。
姿を持たない無数の気配が、いつものようにわたしを飲み込んでいきました。
あの振動をともないながら。
<了>
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この作品のパク……いやインスパイア元の映画については↓こちら。
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