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人生2回目の職質を受けた。そして僕は吠えた


数日前、僕はバイトを終え、最寄り駅である中村橋に帰ってきた。

時刻は0時前。

フラフラである。

ここ数ヶ月、働き過ぎなのだ。

この日も5時に起きて早朝のコンビニに行き、14時に別のバイト行ってから0時に帰ってきて、翌日は6時起き。

しかも朝から晩まで。

倒れるて。

わしゃ東京に何をしに来たんや。

こんなもん東京バイトサバイバル編やないか。

そもそも今年40歳やぞ。

いつまでバイトしてるねん。

そんな事を考えながら改札を出ようとすると、見慣れない光景に目を奪われた。

改札の外に警官が3人ほど立っているのだ。

中村橋は各停しか停まらない比較的小さな駅で、普段は駅前に警官が立っている事なんてほとんどない。

非常に珍しい光景なのである。

おそらく何か事件的なものがあったのだろう。

僕は立っている警官をチラッと見ながら改札を出た。

駐輪場へ向かうため右側に行こうとすると、ある男性の若者が目に入ってきた。

上着のシャツが肩からズリ下がり、フラフラと歩いていて、目はバッキバキである。

そんな彼を見て僕は思った。


お巡りさん!!

いましたよ!!!

この人です!この人!

絶対この人!

サービス問題!

分かりやす過ぎる!

誰がどう見たってこの人!

簡単過ぎて逆に「え?こんな答えでいいの?」ってちょっと迷ってしまうやつ!

さあ、早く職質を!

レッツ職質!!!


僕は何故かワクワクしながら、駐輪場へと向かった。

するとその目バキバキの若者も同じ駐輪場に向かっている様で、少し前を歩いている。

僕と若者の間には3人。

この日は雨が降っており、道の右側に駐輪場まで続く人1人分ぐらいの屋根があるので、みんなそれに沿って1列で歩いた。

目バキバキを先頭に縦に並んで歩く5人。

どんなパーティーや。

こんなパーティー1面もクリア出来ひんやろ。

メダパニかけられてる奴先頭にしてもうてるがな。

ていうか、警官はこの若者にいつ声かけるねん。

全然こうへんやないか。

こいつに声かけんと誰に声かけるねん。


そんな事を思っていると「タッタッタッ」と走ってくる音が聞こえてきた。

僕は「来た来た!」と思った。

この駆け足の音はたぶん警官である。

警官が先頭の彼に声をかけにいくのだ。

「、、、ませーん」

おそらく彼は何かしらやっているだろう。

誰が見たって分かるレベル。

「、、いませーん」

まあ僕はとりあえず早く帰ろう。

明日もめちゃくちゃ早いし、はよ寝んと。

「すいませーん」

??

さっきから何か話しかけられている様な。

振り返るとそこには僕をじっと見る1人の警官が。

警官「すいませーん!ちょっといいですか?」


、、、


ワシかい!!!!!


職質、ワシかい!!!

何でや!

何でにっしゃんなんや!

おかしいやろ!

もっと怪しいの前にいるやん!

あれ差し置いて何でにっしゃんなんや!

いつの間にか怪しい人ランキングトップに踊り出とるやないか!

どういう事やねん!

にっしゃん何もしてへんて!

てか、今めちゃくちゃ疲れててさらに明日めちゃくちゃ早いねん!

勘弁してくれ!

重ね重ね何で俺やねん!

あかん、めっちゃ腹立つ!

ほんまに何もしてへんのに!

今までの人生マジでロクな事ないけど、何も悪い事せんと生きてきてるのに!

常人なら即グレるレベルのロクな事なさやけど、そこを耐えてるのに!

理性が凄いのに!

にっしゃんの最大の売りは理性の凄さやのに!

そこを評価されへんどころか、また職質されるとは!

そんな見た目、怪しいか!?

どういう犯罪してる想定やねん!

あかん!

これ、あかん!

めっちゃ腹立つ!!!


声をかけられた一瞬のうちに様々な想いが僕の中を駆け巡り、結果激しい怒りが湧いてきた。

何せ職質されるのは

3年ぶり2回目。

何かここ数年やたらハイペース。

こんな不名誉な3年ぶり2回目も中々ない。

苦しいながらも真面目に生活してるのに何でこんな疑われなあかんねん。

なので第一声僕はこう答えた。


「何なんですか!!僕何もしてませんよ!!!」


はい、怪しい。

すんごい怪しい。

絶対何かしてるやつ。

もはや自己申告レベル。


警官の目がキラーンと光った。

こいつは!?と目をつけたデブが見事に怪しい反応をしたのだ。

警官からすればしてやったりだろう。

警官はとりあえず僕をなだめる様にこう言った。

「皆さんに声かけてますんでね、どうかご協力いただければ」

どこがやねん。

何がみなさんや。

俺目がけて一直線に走ってきたやないか。

にっしゃん狙い撃ちやないか。

ていうか、今まで他人が職質されてんの何回か見た事あるけど、悪そうな奴とか怪しい奴とか職質されそうな奴しか職質はされへんねん。

大人しそうな女子が職質されてんのとか見た事ないしな。

という事はやっぱりにっしゃんもそっちに分類されてるって事や!

何でやねん!

おかしいやろ!

今までの人生マジでロクな事ないけど、何も悪い事せんと生きてきてるのに!

常人なら即グレるレベルのロクな事なさやけど、そこを耐えてるのに!

理性が凄いのに!

ー以下同文ー


僕は再び激しい怒りを覚えながら、こう叫んだ。

「いや僕の事ピンポイントで追いかけてきたでしょ!何で僕なんですか!理由を教えてくださいよ!」


またもや怪しさ満点の内容、そしてトーンで叫んだ僕に警官はこう答えた。

「いや、さっき、改札で目が合ったんでね、何かこっちを警戒してるのかなと思って」

目合ったて何やねん。

何で目合っただけで声かけてくんねん。

ヤンキーか。

しょうもないヤンキーが絡んでくる時のやつやないか。


僕はイライラしながらこう答えた。

「いや、そら見るでしょ!普段おらん場所にあんなお巡りさん何人も立ってたら!何かあったんかな思うでしょ!むしろ一切そっち見んと目逸らしてる方が怪しいでしょ!」

我ながら結構正論である。

いや、そら見るやろ。


そして僕は続けてこう叫んだ。

「若者!前にめちゃくちゃ怪しい若者いたでしょ!あんな怪しいの中々おらんレベル!あれ差し置いて何で俺なんすか!おかしいでしょ!」

すまん若者。

めちゃくちゃ引き合いに出してしまった。

もし何もしてなかったらほんまに申し訳ない。

まあ、何かしらしてると思うけど(勝手な決めつけ)


にっしゃんの見事なまでのなすりつけっぷりに困惑しながらも警官は

「まあまあすぐ終わりますんでね。カバンの中身見せてもらえれば」

と言ってきた。

こっちも怒り続けてもますます帰るのが遅くなるだけなので、とりあえず応じる事にした。

ちなみに怪し過ぎる若者の姿はすっかり見えなくなっていた。

何でそうなるんや。

警官は僕のカバンの中身をしっかりと確認している。

そのしっかりっぷりにまたもや僕は腹が立ってきた。

「いや、何が出てくる思ってるんですか!何も出てきませんよ!!!」

めっちゃ出てきそう。

何かしらの凶器がめちゃくちゃ出てきそう。

凶器出てきてそれ取り返そうとして腕捻り上げられそう。

「何をそんな確認してるんすか!こんな職質されてる姿ね、友達にでも見られたらどうするんですか!恥ずかしい!」

ちなみにこの中村橋近辺に友達は1人もいない。

THE謎の見栄。


一通り見終わった警官は「大丈夫ですね。何もないですね」と言ってきた。

僕は「そらそうでしょ!!!」と叫んだ。

とりあえずようやく解放される、、、

そう思った瞬間、、、

警官「じゃ次は財布の中見せてもらっていいですか?」

に「もうええわ!!!」


まさかの延長。

思わず名ツッコミが漫才の最後に繰り出す味のあるもうええわが炸裂してしまった。

いや、職質の手順で決まってるんやろうけどさ。

財布に何が入ってる思ってんのよ。

何もないって。

悪いもんもお金も何もないって。

お札もな〜んも入ってへんねんから。

エヘヘ。

いやエヘヘやあるかい。


警官は丹念に財布の中を調べ上げていく。

いやまじで何が入ってる前提で調べてんのよ。

僕は「いや、何が入ってる思ってんすか!」と叫んだ。

すると警官は

「いやまあ、他人名義のカードとかね、入ってる場合がありますからね」

と言った。

あるか、そんなもん。

こっちは自分名義のカードで毎月支払いに悲鳴あげとるんじゃ。

何やねん、ほんまに。

と、その時である。

別の方向から違う警官がスッとこっちに加わった。

!?

2人なったやん!

何かモメてるってなって加勢に来たやん!

凶悪犯やん!

警察24時で声変えられるやつやん!

何やねん!

何回も言うけど何もしてへんて!

あかん、めっちゃ腹立つ!

何でこんな疑われなあかんねん!

今までの人生マジでロクな事ないけど、何も悪い事せんと生き

ー以下同文ー

僕はもう1人の警官に向かって

「いや、何すか!何でもう1人増えるんすか!何もしてないですよ!はよ帰りたいんですよ!何なんすか!」

と非常に焦った様子で怪しさ全開ムーブをぶちかました。

その様子を見て財布を見ている警官は再び目をキラーンと光らす。

この焦り様、間違いない。

絶対に財布に何かある。

そう確信した警官はより丹念に財布の中を調べていく。

「いやまじで何を調べてんねん!何が出る思ってんねん!」と叫ぶにっしゃん。

「まあまあまあ」となだめるもう1人の警官。

そしてついに。

警官はある1枚のカードにたどり着いた。

ハッとした顔をする警官。

怪しげなピンク色のカード。

そのカードをゆっくりと取り出す。

固唾を呑む3人。

ゆっくりと表を向けられたそのカードには、大きく


「恋愛成就」と書かれていた。


恋愛成就。

それはお守り。

2年前、京都の八坂神社に行った際、恋愛成就のカード型お守りを購入し、それ以来ずっと財布に忍ばせていたのだ。

恋愛成就を前にした僕は吠えた。


「恋愛成就や!!!それ恋愛成就や!恋愛成就持ってたらあかんのか!恋愛成就何か法に引っかかんのか!」


危険恋愛成就おじさん誕生。

深夜の駅前で警官の前で恋愛成就を連呼するおじさん。

いくらなんでもヤバすぎる。

即逮捕案件。

ちなみに2年前に買って以来、恋愛は成就していない。


こうして何やかんやあったが、カバンも財布も全て見て、僕は解放された。

まあどう考えてもすんなり応じるより時間がかかってしまったのは否定出来ない。

ただ本当に腹立ってしまったのだ。

身も心も限界の時によりによって疑われたのが我慢出来なかったのだ。

何で疑われなあかんのや。

まあ向こうも仕事なんは分かるけども。

それにしても東京に来てから2回。

それまで大阪では1回もなかったのに。

そんなに最近のにっしゃんは怪しいのだろうか。

ちょっと改めて身なりに気をつけよう。

そんな事を思った深夜だった。

あとそろそろ恋愛成就してほしい。




100円で救えるにっしゃんがあります。