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ビジャレアルで考えた「グローバルとローカル」というテーマ

2月9日から17日(帰国は18日)まで、ヨーロッパのサッカークラブを2クラブ訪問させて頂く旅に出ています。2月9日に日本を出発し、1つ目の訪問先であるスペインのビジャレアルに無事に到着。1日目のレポートはこちらにアップしました。

今回は滞在2日目の2月11日のレポートです。

Jリーグと圧倒的なレベルの差を感じたトップチームの練習

滞在2日目はレンタカーを運転して、トップチームの練習グラウンド「Ciudad Deportiva」に。

目的はトップチームの練習を見学すること。トップチームの練習が公開されていないチームもありますし、公開しないチームが増えてきていますが、ビジャレアルは会長の方針もあり、Ciudad Deportivaでトレーニングするときは、誰でも練習を見学することができます。

木下さんが翌日に帰国するので、マルコス・セナに行くか迷いましたが、トップチームの練習を選択。

トップチームの練習はリーグ戦の合間ということで、特別な内容はありませんでした。ハードルを飛んだ後の1対1、ボールを使ったレクリエーションなどのウォーミングアップを終えた後はボールを使ったトレーニングに。

行われたのは、ペナルティーエリアほどの広さのコートの両端にゴールを置いて行われた、1対1、2対1、2対2、3対2と少しずつ人数が増えていくトレーニング。ゴールキーパーもついていたので、至近距離で凄いスピードのシュートが放たれていて、迫力がありました。

続いて行われたのは、白線でエリアが区切られたコートで行われた11対11のミニゲーム。ゴールも設置されていますが、ゴールを奪うより、ボールを奪われずにキープし続けることを目的としたトレーニング。

最後に行われたのは、3チームに分かれての7対7(プラスGK)のミニゲーム。このミニゲームでも、ゴールが見えたら積極的にシュートを狙っていきます。

どのトレーニングでも共通していたのが、どの選手もボールがないときもアクションを止めずに動き続けることです。ボールを持っていないときのプレーのレベルが高いのは当たり前。違いを創り出していたのは、ボールがないときに、いかに相手を外し、外されないようにするのか、です。

止まっている時間はほとんどなく、止まる時間が多い選手(特にチャックエズ)は何度も注意を受けていました。パススピードもシュートなのかと思うほど速いので、コントロールするだけでも大変だと思うのですが、選手たちはニックネームで味方の名前を呼び続け、次々とプレーに関与し、隠れていることは一切ありませんでした。物凄くレベルが高かったです。

どの選手も分かっていても止められない武器をもっています。パウトーレスの左足、チャックエズのスピード、ラウル・アルビオルやイボーラの体格、トリゲロスのターン、バッカのドリブルシュート、パコ・アルカセルのワンタッチと背後を取るアクションなど...どのプレーの強度も、Jリーグでは見れないレベルの高さを感じるのですが、特にカソルラのプレーは圧巻でした。

どんなボールも正確にピタッと止めるし、ボールを持っているときでも、ギリギリまでシュートを打つのか、切り返すのか、パスを出すのかわからないので、どんな相手もカソルラにコントロールされてしまいます。他の選手は必死にこなしているように見えるトレーニングでも、カソルラだけは常に余裕。ワンタッチパスを増やしたり、ドリブルを使ってみたり、実戦を想定して様々なトライをしていました。レベルが違いました。

これは木下さんが語っていたのですが、とても強度が高いトレーニングなのに、選手たちは「やるのが当たり前」とばかりに、淡々とやっていたのが印象的でした。おちゃらけたり、トレーニングに不満を漏らすようすも一切ありません。J1トップチームのトレーニングより明らかに強度が高いのに、淡々とこなす。体格、技術といった点だけではなく、心構えでもJリーグとの差は大きい。そんなことを感じたトップチームのトレーニングでした。

なお、ビジャレアルの試合のレビューはマガジンにまとめています。ぜひ読んでみてください。

メスタージャと恐怖のバレンシア市街

トップチームのトレーニングを見学した後は、車を50分ほど走らせて、バレンシアの街中へ。バレンシアのホームスタジアム、メスタージャを観に行きました。

同行者の木下さんがスタジアムを見学するのが好きだということで行くことにしたのですが、50分の運転をするのは僕(木下さんはペーパードライバー)です。そして、バレンシアはビジャレアルより圧倒的に都会。ウインカーの右左を出し間違える人にとっては自殺行為と思ったのですが、木下さんは引き下がりません。しぶしぶ行くことにしましたが、行ってよかったです。

高速の出口がメスタージャだったので、メスタージャの場所は分かったのですが、街中にあるので、車を駐める場所を探さなくてはなりません。マゴマゴしていると、バレンシア市民の牙をむいて、僕にクラクションを鳴らしたり、真横にピタッとついて車線変更させないように運転してきます。土地勘もなく、ナビも役に立たない状態で、車を駐める場所を探していた15分ほどの時間は、永遠にも長く感じました。

メスタージャから徒歩15分ほどの場所に車を駐め、歩いてメスタージャに。メスタージャの大きさはビジャレアルのホームスタジアム「エスタディオ・デ・ラ・セラミカ」とは比べ物にならないほど大きく、圧倒されました。

印象に残ったのは、スタジアムの入場ゲートに描かれていた、クラブの歴史を説明した写真と文章です。入場ゲートに描くことで、クラブの歴史に手軽に触れることができます。こうした歴史やスタジアムを体感すると、ビジャレアルがいかに大きな規模のクラブ、都市と戦っているのか分かりました。

メスタージャを観終わったので帰ろうとしたのですが、木下さんは「レバンテと建設中のバレンシアの新スタジアムを観たい」と言います。駐車場を探すときの緊張感を味わいたくなかったので嫌がったのですが、車の中からという条件で立ち寄ることに。

レバンテと建設中のバレンシアのスタジアムを観て、ビジャレアルに帰ろうと高速に乗ったのですが、高速を降りる場所が複雑で、ナビを頼りに進もうとするのですが、何度も間違え、何度もUターンするはめに。10回近く間違え、30分以上ぐるぐると回った後、正しい高速に戻ったのですが、今度は事故渋滞。事故現場を通るとトラックが横転していました。

ヨーロッパどころか、海外で車を運転するのが初めての人にとって、バレンシアの車の運転は疲れました。街中の運転は、レースを走っているような感覚で楽しかったのですが、ビジャレアルに到着したときはグッタリしました。

でも、行ってよかった。自分1人だけだったら、絶対に行かない場所だし、珍道中を楽しみました。

サッカーと地域とコミュニティ

ビジャレアルに戻ってきた後は、鹿島学園高等学校サッカー部(以下、鹿島学園)とビジャレアルU17の試合を見学。(TwitterにはU18と書いてありますが、U17の間違い)

鹿島学園の選手で印象に残ったのは、中央のDFの3番と4番、中央のMFの8番の3人です。この3人はビジャレアルの選手たち相手でも、余裕を持ちつつ、相手を攻略していました。この試合は3-2で鹿島学園が勝利するのですが、この3人を攻略できなかったことが、ビジャレアル側の敗因だと思いました。

この試合を観終わった後、ビジャレアルの佐伯さんに連絡したところ「カシマフットボールアカデミーの試合が終わった後、食事をしましょう」ということになり、19:15スタートのカシマフットボールアカデミー選手が参加する試合が始まるまでしばし待機。

佐伯さんに教えて頂いたのですが、ビジャレアルのロイグ会長は「地域の人が生きがいにしたり、集まる場所を作りたい」と考え、ビジャレアルを運営しているのだそうです。

夕暮れのビジャレアルはとても素敵な場所でした。たくさんの子供たちがサッカーを楽しみ、親たちは楽しそうに見守る。フットボールを取り巻く幸福な環境がそこにありました。それは、Jリーグが理想としている姿でもあると思います。

もちろん、ビジャレアルも課題はたくさんあります。街の規模が小さく、予算も小さく、他のクラブと同じことはできません。育てた選手も長く在籍してもらうのは難しく、選手の育成が凄いといっても、ばらつきはどうしても出ます。指導者もピンきりです。

でも、これらの課題を踏まえつつ、前向きに解決して、よりクラブを成長させていこうという意志をビジャレアルからは感じます。

昨日の反省をどう活かすか

19:15からは、練習参加しているカシマフットボールアカデミーの選手が参加する試合を見学。

カシマフットボールアカデミーの選手が参加したのは、ビジャレアルが提携している「Wanda」という中国のクラブの選手が多く参加しているチーム。「Wanda」については細かい説明は省きますが、Wandaの選手たちは中国からビジャレアルにやってきて、周辺の家でホームステイしつつ、地域の学校に通い、ビジャレアルでトレーニングに励んでいます。Wandaの選手たちは、2チーム分くらいの人数がいたと思います。

ただWandaのメンバーは、スペイン国内の規定のため、公式戦に出場することができません(久保建英が帰国したのはこの規定にひっかかったためです)。代わりに地域のクラブとの練習が組まれており、この日は、ビジャレアルが提携している街クラブとの練習試合でした。カシマフットボールアカデミーの選手は、この練習試合に後半から出場しました。日本と中国とスペイン。このチームの問題は、グローバルに横たわる問題でもあると感じました。

Wandaのメンバーも試合序盤はビジャレアル同様に、GKもパスをつなぎながら、相手陣内にボールを運ぼうと試みるのですが、ミスから失点すると、アクションが止まり、失点を重ねてしまいます。

気になったのは、選手同士のコミュニケーションがほとんどないこと。スペイン人も3名プレーしていたのですが、スペイン人同士のコミュニケーションもほとんどなし。個人の技術はそこまで低いとは思いませんでしたが、連携して何かを成し遂げようという意志を、ほとんど感じませんでした。

そんなチームの中に入って、カシマフットボールアカデミーの選手は後半から出場。前日の練習では、ほとんどボールを持たせてもらえなかったのですが、この日は積極的にボールを受けるアクションを起こし、ボールを受けたら、目の前の相手を気にせず、ドリブルで運ぼうと試みていました。

アクションの質には課題はあるし、ドリブルで全員抜こうとするのがいいのかというのは別だし、失点に絡むプレーもありました。でも、昨日の結果を受けて、改善させようという意志をみせたのが嬉しかったのです。

試合後に一緒に食事をしたのですが、もう少し自分の意志をはっきり話したり、深く掘り下げて考えられると、もっと成長できるような気がしました。でも、彼はまだ15歳。これからの成長が楽しみです。

1人でドライブするのは抵抗がある

ホテルに戻った4時間後、木下さんをバレンシア空港に送り届けるため、深夜の高速をドライブ。タクシーでもよかったのですが、タクシーだと90ユーロほどかかるので、さすがに勿体ないと思い、送っていくことに。ただ、スペインの高速はライトが全くついてないので、真っ暗な中を進まなければなりません。線が分かりづらいところも多く、空港に木下さんを送り届けてからは、緊張の連続。よく帰ってこれたなぁと思いました。

明日はシント=トロイデンに行くのですが、車で行くか、タクシーでいくか悩み中。バレンシア空港に1日駐車したほうがお得だということは分かったものの、1人のドライブは気が引けます。さて、どうしようか。

ここからは1人旅。まだまだ続きます。

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西原雄一
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