書評「ペップ・シティ スーパーチームの設計図」
「All or Nothing」というAmazonが制作しているスポーツドキュメンタリーがあるのですが、このドキュメンタリーが日本に知られるきっかけになったのが、2017-18シーズンのマンチェスター・シティに密着したドキュメンタリーです。
勝ち点100を挙げた2017-18シーズンのチームに密着したドキュメンタリーは、最強チームの秘密を知りたいサッカーファンにとって、大きな反響を呼びました。
そんなマンチェスター・シティはどんな人達が、どのように仕事をしているのか。ドキュメンタリーとは別の視点でまとめられた書籍が、本書「ペップ・シティ スーパーチームの設計図」です。
実は「All or Nothing」が好きではない
ここまで書いていてなんですが、実は僕は「All or Nothing」が好きではありません。グアルディオラという人は、自分が提示するプレーモデルに忠実に選手がプレーすることを求める監督です。したがって、グアルディオラが提示するプレーモデル以外のプレーは、マンチェスター・シティでは「NG」と考えていると思います。例えば風間八宏さんの「自分の想像もつかないプレーを見たい」という考え方とは全く違う監督です。
僕はグアルディオラが人望があるのは、誰よりもサッカーに関して深い知見があること、そして何より実績があるからだと思います。選手は結果を出したくてプレーしているので、結果が出せる監督は何より大切です。
グアルディオラの欠点
僕はグアルディオラの欠点は、自分の頭の中にあるサッカー以上のサッカーを描けないことだと思います。どんなに素晴らしいアイディア(めったにないと思いますが)でも、異常値は認めない監督に見えます。したがって、グアルディオラにとっては、メッシとは悩ましい存在であり続けたのではないかと思うのです。
ただ、マンチェスター・シティでのシーズンも4シーズン目に突入し、2019-20シーズンの試合を観ていると、他のチームも研究し、対策を準備していることもあり、マンチェスター・シティが相手を圧倒して勝利するような試合は減りつつあると感じています。グアルディオラも対策を施せるわけではなく、ネタ切れに見える試合もありました。
だからこそ、このニュースには驚きましたし、ある意味納得できるニュースでもありました。
ヴィッセル神戸の監督を務めたファン・マヌエル・リージョが、マンチェスター・シティのアシスタントコーチに就任したというニュースは、グアルディオラがリージョに師事したというキャリアを知るものにとっては納得できるニュースでもあると思います。
グアルディオラとリージョの似て非なるチーム作り
ただ、僕はグアルディオラとリージョのチーム作りの方法は異なっていると感じます。グアルディオラは自分のプレーモデルに当てはまるように選手を当てはめるのに対して、リージョは選手にプレーモデルを当てはめていく監督。出来上がるサッカーは同じかもしれませんが、アプローチは真逆です。
もちろん、真逆と知りつつ、グアルディオラはリージョを求めたのかもしれませんし、自分に足りないものをリージョに補ってもらおうと考えたのかもしれません。ただ、リージョの起用はハレーションを生む可能性もあります。なぜなら、グアルディオラが取り組んできたことを否定する部分もあるかもしれないし、それによって選手や周囲のスタッフとの信頼関係が揺らぐ可能性もある。そんな気がするのです。
本書では、監督、選手、スタッフとの良好な関係が書かれていますが、現実と書籍のチームは異なります。その点を踏まえた上で、本書を読ませて頂きましたが、面白かったです。
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