なぜ村上春樹のエッセーは面白いのか
毎年ノーベル文学賞の時期になると、候補に名を挙げられ、世界中のファンが今か今かと受賞を心待ちにしている日本を代表する小説家、村上春樹。
私が読んだ村上作品で一番印象に残っているのが「アンダーグラウンド」。地下鉄サリン事件を彼の視点で描いたノンフィクションである。単行本は辞書並みのぶ厚さの738ページ。十数年前、10日間入院する機会があり、その時に持ち込んだ。村上春樹自身による、被害者を含む62名の関係者へのインタビューは、世間を震撼させた事件だけに内容もすごかった。けれど、