【2024年10月、双葉大熊富岡取材その3】帰還困難区域との際にて
「有料」とありますが、基本的に全て無料で読めます。今後の取材、制作活動のために、カンパできる方はよろしくお願いします。
〜〜〜〜〜
<続き>
人の消えた住宅街
怪しくて小さなトンネルを抜け、常磐線の西側へ。かつての住宅地は誰も住まないゴーストタウンとなり、太陽光パネルと変圧器だけがジーっとノイズを鳴らしている。夜になれば街灯はつくが、かなり暗く音もなく、野生動物が徘徊することだろう。駅西住宅は綺麗に整備されているが、あの場所に夜中になって野生動物が現れることはないのだろうか。
国も買い取らない「売地」
ぶつくさいろいろ考えつつ、緑に包まれた森や林、耕作放棄地を眺めながら、新山〜前田〜目迫地区と歩いた。途中「売地」と書かれた看板が立つ。「放射能に汚染されてるから」と国が買取を拒否し、東電も二束三文でしか買い取らない土地を、一体誰が買うのだろうか。国は移住政策を進めているが、こうした場所への居住は想定してないはずだ。整備された復興住宅ならともかく、未除染の山に囲まれたこういう場所に移住者を住ませて、もし将来的に何かあっても国は責任は取れない。そんな場所に住めということは国も言わない。この国の政府は二枚舌である。
緑と黄土色の絨毯
広大に広がる耕作放棄地は、定期的に整備がされているようで、放置された宅地よりも綺麗な緑と黄土色の絨毯のようだ。空間線量はさほど高くなく、0.3〜0.6μSv/hほど(震災前の7〜15倍)で推移している。ちゃんと調べればホットスポットもあるのだろうが、僕の取材はそれが目的ではない。
放射能に汚染されているといっても、目に見えないし臭いもしないので、正直にいってとても心地の良い森林浴と散策である。しかし手元の線量計は悲しい現実を物語っている。何を感じそれをどう作品に落とし込むか。撮影中は夢中だが、帰った後はそのまとめ、アウトプットが何よりも大切だ。
前田から目迫にかけて、2軒ほど、帰還したと思われる家があった。1つは新築の一軒家、もう一つはかつての住宅を綺麗に掃除して住んでいるようだ。新築の家はともかく、掃除して住んでいる家はどこまで除染したのだろうか。解体されれば「放射性廃棄物」として処理される家に住む…つくづく、この国のやってることは罪深いと思う。
放置されたままのリンカーン
帰還困難区域との際に建つ廃工場
2021年に初めて見てからずっと置きっぱなしのリンカーンの脇を抜け、目迫の廃工場にたどり着く。これまで何度も双葉駅の南側を歩いているが、ここに来るのは初めて。立っている看板を見る限り、今年10月31日までに解体されるようだが…実際には被災建物の解体作業は予定よりも遅れているようで、3月末までに解体されるはずだった双葉中学も未だ存在している。
帰還困難区域との際に建つ家屋
廃工場の北側、向こうに見える家のそばにも行ってみる。
除染解体によって確かにその周辺の空間線量は下がるが、それは極めて限定的だ。そうした場所で安心して子育て等が出来るかといえば疑問だし、そうしたい人もどれだけいるかわからない。実質的に町を破壊しているだけの除染解体作業に、本当に意味があるのかと問われたら、国は何と答えるのだろう。「原発事故をなかったことにしたい」そうとしか僕には思えない。
<続く>
ここから先は
¥ 300
サポートしていただけると大変ありがたいです。いただいたサポートは今後の取材活動や制作活動等に使わせていただきます。よろしくお願いします!