【2024年2月、双葉、大熊、富岡取材その10 熊町地区】
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熊町地区は、六国を歩いていたらいきなり現れた。そんな印象の場所だ。広大な荒野を南下した後に突然町が現れる。ここはかつては六国沿いにバリケードが並ぶ「バリケード通り」で、原発事故の象徴的な場所だった。しかし、2021年11月30日に特定復興再生拠点区域に追加指定されて以降、バリケードは撤去され、除染、解体が進んだ。
六国を南下して最初に現れた初発神社は、境内が砂利になっており、既に除染済み。境内に設置されたモニタリングポストには0.45μSv/hと表示されている。しかし実際は、0.6μSv/h程度の場所がほとんどであり、場所によっては1.0μSv/h近くまで上がった。建て直された真新しい社殿からは、正直、歴史や風格といったものは感じない。長年蓄積された歴史というものを、原発事故が全て奪っていった。
初発神社の正面の道路へ出ると、面的に1.0μSv/h以上、まだ解体されずに残っていた家の周辺は2.0〜3.5μSv/hと線量は非常に高め。周囲を帰還困難区域に囲まれているし、そもそもここに来る人自体がほとんどいないと思われ、まさに除染、解体してなかったことにするためだけに特定復興再生拠点とされ避難指示解除された場所だ。いずれはここは全て更地にしたい、それが国の思惑だろう。
家の周囲を測って道に出てくると、いきなりパトカーと出くわした。一瞬ドキッとし、2022年10月以来久しぶりの職質に備えたが、こちらをじろっと見ただけで何も言わずに通り過ぎて行った。ここは避難指示解除されている場所だから焦る必要もないのだが、やはりパトカーを見ると少しは緊張する。
しかし、本当に職質されることがなくなった。2022年10月に高圧的な職質をされ、撮影した写真を全部チェックされた上に数枚消されたことがあった。その数日後に双葉警察署の警官が11年半放置された女性ものの下着を盗んでいたことが判明、高圧的な職質の原因はこれかと憤慨し、双葉警察署へ抗議の電話をかけたことがある。もう完全に僕のことは、あの地域の警察には面が割れているのかもしれない。
この日は熊町小学校が大熊町の人たちに解放された日でもあったので、この熊町地区を訪れる車が数台みられた。更地の前に車を止め、降りてきて立ち尽くす人が何人もいた。かつて自分の家が建っていた更地を見つめ、何を思うのだろう。切ない時間だった。
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