見出し画像

【2024年2月、双葉、大熊、富岡取材その2 更地だらけの前田地区】

「有料」とありますが、基本的に全て無料で読めます。今後の取材、制作活動のために、カンパできる方はよろしくお願いします。

〜〜〜〜〜

<続き>

 数軒残った家を眺めながら、双葉町前田地区を歩く。この地区を歩くのは3年ぶりか。それ以降は、レンタサイクルで来たことが2回ほど。このエリアの空間線量は、双葉駅の北側に比べればそれほど高くはない。概ね0.2〜0.6μSv/hといったところだ。尤も、その先の水沢や山田といった場所は線量が高く、今も帰還困難区域だ。双葉町で避難指示解除されたエリアは狭く、僕はもう既にそのほぼ全ての地区を歩いている。

更地に解体番号の墓標が立つ。
前田の大杉がある稲荷神社までの参道入り口。
帰還困難区域。右に見えるR288だともう少し先まで行ける。
帰還困難区域の中では最も線量の高い場所の1つ。

 今も残されている家屋の多くはほぼ廃墟だが、その中で一軒だけ、今すぐにでも帰還できる(もしくは帰還している)風な家があった。その家には自民党のポスターが貼ってある。表札にはかつての町長と同じ苗字が書かれており、もしかしてと思った。

自民党のポスターは見るたびに嫌になる。

 前田団地の跡地は白い鉄板で覆われ、中にはトラックや重機、フレコンバッグなどが置かれていた。アスベストを使用していた前田団地の解体には時間を要したが、今はもう跡形もなくなり、こうしてゼネコンの資材置き場となっている。双葉中学も双葉北小も同様に資材置き場になっており、それを見るたびに僕は毎度毎度胸がざわざわする。家が解体され更地になった場所もゼネコンの駐車場にされることがあり、僕は何度見ても嫌な気分になる。

前田団地跡地。
この辺りの線量は低め。しかし、ここから少し西に進むと帰還困難区域となり、
10μSv/h以上の場所が現れる。

 かつて大沼勇治さんに双葉を案内してもらった時、ゼネコンが勝手に大沼さんの土地を駐車場にしていたことがあった。それに抗議する姿が僕の頭からどうしても離れない。「復興」の名の下に、国や東電やゼネコンによって双葉町が蹂躙されているように僕には見えるのだ。

 「まつろわぬ民」のポスターの元になった風景も、1、2軒だけを残して今はすっかり更地となった。僕は「ここがあの絵の舞台になった場所です」と言えるが、他人にはさっぱりわからないだろう。

 歩きながらふと、3年前に訪れた熊野神社を思い出した。線量は比較的高めで、帰還困難区域との際にある神社だ。そこに行ってみることにした。

左奥の山中に熊野神社がある。
解体後の風景。
この庭木もいずれは伐採されるのだろうか。

<続く>

ここから先は

0字

¥ 300

PayPay
PayPayで支払うと抽選でお得

サポートしていただけると大変ありがたいです。いただいたサポートは今後の取材活動や制作活動等に使わせていただきます。よろしくお願いします!