【2024年2月、双葉、大熊、富岡取材その7 大熊中学は太陽光発電所となった】
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大野駅からさほど離れてない場所に「未除染の場所」はある。避難指示解除されており、誰でも行くことは可能だ。大野駅前に完成予定の集合住宅に子連れの家族が住んだとして、その子がここに来ないとも限らない。6.0μSv/hもあるこの場所を、一体、行政はどうするつもりだろうか。まずは避難指示解除ありき、それはおかしいのではないかと思う。
県道252号、夫沢大野線に戻り、大熊中学校入り口へ向かう。この道は非常に高線量だ。常磐線を越えてから大熊中学校入り口まで300mほど、いくつかの廃墟は今もそのままで、周囲は高濃度に汚染されている。場所によっては3.0μSv/hを超える場所もある。避難指示解除前の22年6月に訪れた時と数値はほぼ変わっておらず、フォローアップ除染は行われていない。
かつては、僕がSNSに高線量の場所を掲載すると、次に訪れた時は除染されているということが何度もあったが、それも東京五輪までだったようだ。そういえば、東京五輪が終了してからは、警察に職質されることも少なくなった。
大熊中学校入り口から先の夫沢大野線は帰還困難区域となり、東の中央台公園には徒歩では行けなくなる。僕はこの先、六国の中央台交差点までの道を歩いたことはないが、2020年3月に知り合った少年が間違って歩いて行ってしまった時は、途中で7.5μSv/hまで上がったという。数千円で買える感度の悪いエステーの線量計でその数値なので、僕が持つガイガーフクシマなら10は超えるだろう。中央台公園は、1F周辺の帰還困難区域の中でも特に高線量の場所の1つだ。
周りに人目はないが、僕は真面目に大熊中学校入り口で右折し、中学校跡地へ向かう。その先もやはり高線量だ。1.0〜2.5μSv/hといったところか。東側にある中央台公園の汚染があまりに酷いので、そこから放射線が降り注ぐのだろう。
大熊中学校跡地に行く途中に、中央台西ハイツがある。ここは東京電力の社宅だった。綺麗に片付けられてはいるが、地震で傾いた駐輪場もそのままで、相変わらず痛々しい。線量も高めだ。
大熊中学校跡地には太陽光パネルがずらっと並んでいた。かつて大熊町を訪れた際に、大野駅で町の広報を持ち帰ったが、そこには「跡地の太陽光発電所を中心としたスマートシティ構想」が書かれていた。かつての中学が更地になり悲しい思いをしていたところに、お約束の太陽光パネル。電気の自給自足、スマートシティ。いい話なのだろうが、解体前の大熊中学を見ているだけに、どうにも胸中は複雑だ。
建設中の太陽光発電所には、日曜日だというのに作業員が何人か働いていた。何人かが僕に気付いたので「お疲れ様ですー」と挨拶をする。無視をする人がほとんどの中で、一人だけ笑顔で挨拶を返す人がいた。少し救われる思いがした。
<続く>
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