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【2024年10月、双葉大熊富岡取材その15】帰還困難区域との際で

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<続き>


県道251号線(小良ヶ浜野上線)を東へ

 六国を目指して県道251号線、小良ヶ浜野上線を歩く。この道路のこの区間は解体がかなり進んだ上、除染も徹底的に行われているため、線量は「大熊にしては低め」で、0.4〜1.0μSv/hといったところ。ほとんどは0.5か0.6程度。

 勿論、震災前と比べれば10倍以上のとんでもない数値なのだが、町民のほとんどが住んでいる大川原地区に近い場所でもこれくらいの数値はいくらでもみられる。しかしこちらには人はほとんど住まない。車の通りはひっきりなしにあるが、生活の匂いはしない。しかしそれでも避難指示解除だ。

あぶくま信金。片付けが始まった頃は再開するのかと思ったが、片付けただけで今もそのままだ。
針山の柵で囲われた物騒な工場。目の前には自民党議員の名前の書かれた看板が立つ。
見た目は新しいアパートが並ぶが、震災前からのアパートであり、誰も住んでいない。

帰還困難区域との際

 ここは何気に帰還困難区域との際でもある。空間線量が低いといっても、除染がまだ進んでいない帰還困難区域がすぐそばにあれば、天候によって放射性物質は飛んでくるし再汚染もあり得る。そうしたことを考えれば、線量が下がっていても避難指示解除は時期尚早だったと思う。インフラも電気ガス水道が通っているというだけのことだ。

 なのになぜ避難指示解除かといえば、ただ単に「印象操作」のためであり「税金徴収」のためである。住まない土地に税を支払うのが馬鹿馬鹿しくなれば、帰還か避難先定住かの判断を促すことにもなる。こうして国は避難者に選択を迫り、避難者数の削減を目論んでいる。非常に悪質である。

ここは帰還困難区域との際である。
帰還困難区域との際に建つ作業員用アパートと、その脇の荒れ果てた道。

六国のそばの作業員用アパート

 更地だらけになった県道を歩いていると、遠くに現場作業員向けのアパートが見える。更地ばかりなので、遠くを見渡すことが出来る。六国近くのあのアパートは、元々震災前から建っていたものを除染、クリーニングして作業員向けに再開したものだ。除染はちゃんと行われているのだろうか。

 資材によっては放射性物質が染み込んで、いくら除染をしても放射線を出し続けるものもある。実際にそういう家の中まで足を運んでいるのでよくわかる。そんな場所で、寝泊まりをして生活する…本当にちゃんと除染されているのだろうか。

六国そばの作業員用アパート。
洗濯物と布団が外に干してある。

 ベランダには、洗濯物と布団が干してある。あのあたりは空間線量も決して低くはなかったはず。六国のそばなので放射性物質も舞ってるはず。僕だったら絶対外には干さない…しかし、こうした土地で働く作業員に対して、そうした「被曝防護」についてちゃんとレクチャーされているかといえば、それはほとんどないだろう。そんなところで誰も働きたくないし、そんな話をすれば賃金をもっと上げなければいけないからだ。

小良ヶ浜野上線の風景

事故車が放置されていた。
どんな思いで立ち続けているのだろう。
「7月26日の大火災を忘れるな」の文言が気になる。
かつてのホットスポット。

ガイガーフクシマにトラブル

 この土地には幾重にも不条理が重なっている…そんなことを考えながら、いつもの休憩場所(といっても突っ立って一息つくだけだが)に着いて手元のガイガーフクシマを見ると、画面表示が消えていた。

鉄塔を眺めつつ小休止…と思いきや。

 は?と思い電源を入れ直して各値を見てみると、それまでの積算線量がリセットされ、ゼロになっていた。何てことだ…電池残量はまだ8割は残っているはずなのに、何ということか。愕然としつつも記憶をたどり、確かここまで1時間平均0.4か0.5、3時間で1.3か1.4μSvの積算線量だったよなあ…と思い返す。

 電源を入れ直したガイガーフクシマは、その後正常に動いてはいるものの、どうにもこの機器に対する信頼性が失われたため、念の為持ってきていた、知人の高岡章夫さんから譲り受けた線量計、SM-5Dを併用することにした。値段によって機器の正確さが保証されるわけではないが、これは定価で20万円ほど、今でも10万前後で取引されている機器である。

この日は衆院選の投票日だった(期日前投票済)。公明党の新代表、石井氏が落選し、
あっという間に新代表から新代表へ変わったのは全く以って皮肉。
奥の家にも誰も住まない。

<続く>

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