【2023年12月、小良ヶ浜取材その2 夜ノ森駅〜ケーズデンキ】
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2023年12月3日、朝5時の目覚ましで起きて、いわき駅6時9分発の常磐線で夜ノ森駅まで。この時期の朝6時はまだ暗い。夜ノ森駅までの移動中、富岡駅のあたりで日の出を迎える。かつては2Fの排気筒を写真に収めていたが、今はもう見慣れて撮影することもなくなった。
7時前に夜ノ森駅に着いて、目的である小良ヶ浜まで最短のルートを進む。何度も来てるので、少なくとも六国までは地図をみる必要もない。朝焼けの夜ノ森駅東口は、どこもかしこも更地ばかりで切なくなる。ところどころ家屋が残り、中には壊れた車とバイクだけ残されたりもしている。しかしどれもいずれは解体されるのだろうし、車もバイクも中間貯蔵施設へと消えるのだろう。
除染と解体が進み、駅周辺はほとんど1.0μSv/h以下で、中央値は0.3μSv/hといったところか。桜で有名な土地でもあり、除染は徹底して行われたことがわかる。しかしそれでも、線量計のアラームの鳴り方は首都圏とは明らかに違う。
夜ノ森駅東口のエリアが避難指示解除されたのは2023年4月1日。それから8ヶ月ほどの間に100人ほどが居住するようになったといわれているが、果たして実際にここで日常を送っている人はどれだけいるだろうか。人の気配はほとんどない。避難先との二重生活の人がほとんどではないだろうか。
六国までの道中、比較的新しめのアパートの廃墟が割と多く残っていたりする。ここもいずれは解体するのだろうか。それとも、中をクリーニングして再利用するのだろうか。しかし、放射能で汚染された建物の除染は並大抵ではない。素材によっては放射性物質が染み込んでしまって、いくらクリーニングしても落ちないこともある。しかし、そんな家屋の測定は専門家でなくては出来ない。この地域の建物にそのまま住むということは、「放射性廃棄物の中に住む」ということと同義である。
もちろん、新築のアパートも少し建っている。そこには解体作業員などが住む。空気の抜けていないタイヤのついた車が駐車してあるのが目印だ。もちろん、日曜日の早朝はすっかり寝静まって、人の気配はない。駅から2km離れたこのあたりまで来ると、線量は少し上がり0.4〜0.8μSv/hほど。ホットスポットも散見され、そんな場所は1.0μSv/hを超える。
2018年の12月だったか、富岡の町なかで昼の2時から猪の親子と遭遇したことがあった。ほんの10mほど離れた場所に現れた猪親子に心臓が止まりそうになったが、気配を消してその場を離れて事なきを得た。あれから5年、今の富岡は、夜はともかく昼はあまり猪の恐怖を感じることはなくなった。
六国沿いのケーズデンキ双葉富岡店は、震災直前に建設され、まもなく開店というところで原発事故を迎えた。つまり、一度も営業することなくその役目を終えた店舗だ。ぱっと見はガラスなどが割れることもなく綺麗な状態を保っており、中には営業していると誤解する人もいるらしい。ここは今も解体されることもなく残っているが、どうなるのだろう。いずれ解体されるのか、それともまさか、営業再開という一縷の望みにすがって今も解体せずに残されているのか。22年10月に訪れたとき、駐車場には震災当時のままの車が何台か残っていたが、今はそれはなくなった。これは解体の予兆なのだろうか。
ケーズデンキを抜け、新夜ノ森の交差点で六国を渡り、小良ヶ浜地区へ。六国を渡って300mほど東へ歩くと、急に線量計の数値が1.0μSv/hを超えた。そこがかつての帰還困難区域のゲートがあった場所だった。わかりやすい…
<続く>
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