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【2024年10月、双葉大熊富岡取材その17】熊町地区

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<続き>


熊町地区

 熊町地区は、周囲を帰還困難区域に囲まれた非常に狭い区域で、六国経由か、大熊の旭台〜錦台地区経由でなければ行くことが出来ない。徒歩で行くには、高線量地帯を抜けるか、かなりの遠回りを強いられる。避難指示解除はされてるものの、電気ガス水道のインフラが整備されてるだけで、実質的に人が暮らすことは出来ない。当然、人口はゼロだ。

 熊町地区は、その真ん中を国道6号、六国が走り抜ける。かつて六国の熊町地区には、帰還困難区域の看板の立ったバリケードが並び、その姿はまさに異様だった。国はその「見た目」をなんとかするために、この地区を特定復興再生拠点区域に指定し、除染、解体を進めて、原発事故を「なかったこと」にしようとしたと僕は考えている。復興のためではなくごまかしのため、僕は、この地区の除染はそういうものだと受け止めている。

* * *

解体が復興?

 六国の三角屋交差点から熊町地区まで、ざっと1kmほどのカオスな空間を抜けると、大熊町の熊のマークを連想させる「ビッグベア」が描かれた「カマタ商店」が出てくる。ここもいよいよ解体が始まっていた。こうして震災前の風景は消えてゆく。

カマタ商店もいよいよ解体。

 どこかの誰かが、原発事故当時のまま廃墟になってれば「復興はまだまだ」といい、解体して更地にすれば「これが復興か」といい、何をやっても批判、と国や東電の代弁者のようなことを言っていたが、どちらも原発事故の被害なのだから、それを可視化するし批判するのは当たり前のこと。奴隷はせいぜいお上のケツの穴でも舐めてれば良い。

初発神社

 カマタ商店の裏には初発神社がある。ここは既に除染、改修済み。0.4〜1.0μSv/hほど。この神社がここまで整備されたのはやはり氏子の力によるものが大きい。しかしどこの神社や寺も同じように守られているわけではない。前日歩いた双葉町では、必要最小限の除染はしたものの、鳥居も壊れて朽ちたままの熊野神社などもある。貴重な文化財が破壊されなくなっていくことは本当に切ないし頭にくる。それが原発事故というものか。

初発神社のはなどり地蔵。こうした文化財も全て汚染された。
本殿は改修工事済み。

消えていく風景

 初発神社を出た後はさらに東へ。2月にはまだあった初発神社の前の家は解体され姿を消していた。そこには家族の営みがあったが…それを壊すのが原発事故。実験室のなかで実験をするのとは全く意味が違う。

家屋は解体されたが門扉は残る(門扉の解体は自費)。

見晴らしのいい丘の上から

 家がいくつも解体され、歯抜けとなった住宅地を抜け墓地を過ぎると、海まで視界が開けた空間に出た。少し先にはパトロールの車が止まっているが、別に悪いことは全くしてないので気にする必要もない。遠くに見える大量のフレコンバッグの山へシャッターを向け、その後三脚を立てて動画も撮影した。かつてこの周囲は農地だったのだろうか…

フレコンバッグの向こう、白い鉄板の向こうは瓦礫。

 一息ついてそこに立ち尽くしていると、パトロールの車が動き出し、近くまで寄ってきた。

 「この先、海までは行けませんよー」
 「はい、わかってます」
 「気をつけて帰ってくださいねー」

 そんな会話を交わしながら、次回来たときは帰還困難区域との境まで、行けるところまで行ってみようと考えていた。

引き返すことにする。

1.53μSv/h

 引き返して六国に向かっていくと、墓地のところに「1.53μSv/h」と書かれた立て札があった。それで避難指示解除されてしまうのが、原子力緊急事態宣言下の福島県。

墓地は1.53μSv/h。

<続く>

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