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2020年3月福島取材⑮/歩行者通行禁止エリア

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車のみ通行可の場所に来てしまったとT字路についた頃にはなんとなくわかった。しかし警備員もおらず誰も咎めることもなく、トラックやパトカーは目の前を素通りしていく。T字路を右に行けば6国へ行けることは知っていたが、行った先が高線量なのもわかっていた。

浪江の県道253号には、飛び地のような帰還困難区域があり、そこはパトロールの車に止められることもないグレーゾーンな空間だ。そんな空間なのかと思いつつも、それにしては線量が高すぎると戸惑っていた。

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T字路を左に曲がると陸橋がある。

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陸橋を渡り、少し歩いて手元の線量計に目をやると、手元の線量計は4.56μSv/hだった。思わず「うわ」と声を出す。

なんだこれは? 除染もしないで立入規制を緩和したのか? 頭が混乱する。ふと後ろを見ると、10代と思しき少年が、陸橋の脇にある絶好の撮影ポイントで写真を撮ろうとしていた。思わず僕は線量計を持って少年に向かって、「そこ2.5マイクロあるよ! 気をつけな!」と叫んだ。すると少年は、「夜ノ森は0.2くらいだったのに!」と言って走って逃げていった。

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ここは、高線量のため立入規制緩和が見送られた商店街。

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「緊急時の避難路」の空間線量は

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4.49μSv/h。この道自体が緊急事態じゃないか。

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右のバリケードの脇に警備員がいたが、徒歩で立入禁止とは言われない。警備員もよくわかってない。

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バリケードの向こう…
ここまでで一旦駅へ引き返すことにする。

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10代と思しき少年が、電車の写真を撮影してたのはここだった。撮り鉄にとっては絶好の撮影ポイントだ。しかし線量は2.5μSv/h。その少年以外にも、脚立まで持ち込んで撮影しようとしていた人がいたが、成人しているようだったので放置した。

大手マスコミは3.11の特番で線量計を持ち出して現地の線量を伝えるようなことはしない。帰還困難区域でも、防護服も身につけずに線量の低いところに行ってレポートするだけだ。そんな報道ばかり見てきた人たちが、自分で確認もせずに「線量は下がった」と思いこみ、線量計を持たずにこの地を訪れて撮影ごっこをしたりする。

このエリアはまだ線量計が必要な場所だ。

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T字路へ戻った。この先は6国に繋がる。歩行者立入禁止だが、「次回行ってみよう」と思った。見ての通りどこにも「歩行者立入禁止」を伝える看板はなく、「知らなかった」と言ってしまえば通るからだ。

(しかし2020.6.7、大野駅を再訪したところ、歩行者立入禁止についての警戒看板が駅前にしっかりと設置されていた。知らずに人が行ってしまうようなことはなくなったと思う)

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廃墟。

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福島東友倶楽部。

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駅前ロータリーにパトカーが停まっている。僕はあのパトカーと「歩行者立入禁止」の場所ですれ違ったが、何も言われなかった。

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この公園だって、入ろうと思えば入れてしまう。

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バス。仕事関係者を運ぶ。原発の廃炉関係者なのだろう。

大野駅東口は、駅前ロータリーだけが徒歩での入域可。それ以外の場所は、車しか通行してはいけない。しかし、僕だけでなく、テレビカメラを抱えたメディアでさえ、あの坂を歩いて上っていたのを見ている。それほど、3/14時点の大野駅東口の案内看板(サイン計画)はわかりにくくいい加減だった。

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駅に戻った。マスコミが訪れた人にインタビューしている。線量計を首からぶら下げた僕には絶対声をかけてこない。

夕方、ホテルに戻ってNHKニュースを見ていたら、この時の様子が放送されていた。元住民の方に話を伺っていたらしい。撮影時のNHKスタッフは誰も彼も笑顔でインタビューしていたが、元住民の方はとても複雑な表情をしているように僕には見えた。

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西口へ降りた。

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この辺りに住んでいた人たちは、どんな心境で駅周辺の立入規制緩和を受け止めただろう。

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西口もバリケードで囲まれ、駅前ロータリーは東口よりも狭い。線量は東口ロータリーよりも高いだろうか。0.6〜1.5μSv/hほどはある。細かく見ればもっと高い場所もあるだろう。廃墟だらけだ。

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さっき見たバリケードで封鎖された商店街を反対側から見る。

ここは、ドキュメンタリー「原発の町を追われて」を作った堀切さとみさんによれば、10μSv/h以上のホットスポットがあり、木幡ますみ大熊町議がお願いして立入禁止にしてもらったという。

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反対側。

この場所は舗装も新しくなって線量は1.0〜2.0μSv/h程度だが、このバリケードの先は一体どれだけの高さなのか。

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これでよく出入り自由にしようと考えたな。

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今度は西口から少し歩いてみる。

<続く>


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