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【2024年10月、双葉大熊富岡取材その16】六国を歩いて帰還困難区域を縦断する

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<続き>


三角屋交差点から六国へ

 線量計2台体制となり、気を取り直して三角屋交差点から六国に入る。ここから南は帰還困難区域だ。にもかかわらず、徒歩で歩くことも可能。内閣府なのか復興庁なのか国交省なのかわからないが、帰還困難区域を抜ける道を徒歩でも通行可能とした側にしてみれば、「道路はきれいに除染しました」ということなのだろう。

六国の三角屋交差点を潜る地下道。ここはまだ通ったことがないので、
線量をチェックする意味でも一度歩いてみたい。
中間貯蔵工事情報センター。「ホープツーリズム」とやらでここを訪れることもあるようだが、
わかりやすいプロパガンダを好き好んで聞きに来る人はいるのだろうか。
無人の家屋。

帰還困難区域を走り抜ける道路

 ここをダンプが走れば放射性物質が舞い上がるし、周囲の帰還困難区域から放射性物質や放射線も降り注ぐが、何せ国の論理は「内部被曝無視」「土壌汚染否定」「放射性物質は飛ばない」という極めて非科学的なものなので、こんなことも許されてしまう。

 こうした、帰還困難区域との間に引いた線で鉛の壁が出来ているような異常で非科学的な論理は、この国では不思議なことに「科学至上主義」の科学者やその支持者によって当たり前かのように流布されてきた。全国紙や地上波テレビなどの記者でさえもそれを信じる有様である。

調べてみると、六国だけでなくこの脇道も歩けるようだ。
尤も、そんな奇特な人間は僕ぐらいだろう。次はここ行くかな。
3.86μSv/h。

政治によって捻じ曲げられてきた「科学」

 戦前、戦中、戦後、これまでずっと「科学」は政治によって捻じ曲げられてきた。政治によってどうにでも基準が変えられてしまうものを「科学」と呼び、それを盲信する人々によって、特に「核」「原子力」は歪められてきた。そこには、たくさんの踏み躙られてきた命があることを忘れてはならない。

 「国が通行可としたのだから問題ないのだろう」というわけで、この六国が実際にどの程度の空間線量なのか調べるメディアは東京新聞くらいしかなく、朝日も毎日も読売も、共同通信も時事通信もそこにはほぼ関心がない。そんな有様のメディアに乗せられてか、ここ六国でマラソンをするという気狂いじみた団体までも出てきている。

狭すぎる歩道で交通規制もせずにマラソンをする意味

 双葉〜大熊〜富岡間を何度も歩いた経験として、そもそも放射能以前に「歩道がほぼなくてダンプに撥ねられる危険あり」な場所もある道路で交通規制もせずにマラソンするなど、その目的は「安全アピールという印象操作」以外に考えられない。愚かという以外ないその行為が、「福島の復興」として持ち上げられる。これをパラレルワールドと呼ばずして何と言おうか。

さあ、いよいよ熊川橋…歩道が狭すぎる。
熊川(西側)
熊川(東側)
熊川橋を走り抜け、ここで一休みする。
これでも低い方。ここが「徒歩通行可」。

非日常を無理矢理日常にする

 福島民報という地元紙までもが「浜通りサイクリング」を企画し、帰還困難区域を走り抜けるロードレースを開催する始末。非日常を無理矢理にでも日常にし、人々の感覚をどんどん麻痺させていく。この地で進行していることは、ある意味、戦争と同じではなかろうか。

美しいススキの野原(西側)。
東側。

天国と地獄の狭間で

 三角屋交差点から熊町地区までわずか1km足らず。そのわずか1kmの道のりは、今年2月に歩いた時も同じだったが、非常に濃密でとても長い時間に感じられた。手元で鳴り響く線量計、2や3は当たり前の数字、ほぼ歩道がなく、車の通行が切れた隙に走り抜けた熊川橋、走り抜けた先に広がる広大な熊地区のセイタカアワダチソウとススキが生い茂る荒野、荒野の先に広がる阿武隈山地。天国と地獄が入り混じったかのようなカオスなこの空間を、僕はまるで非現実的な夢の世界のように感じていた。

 ちなみに、六国の帰還困難区域の区間では、内部被曝を避けるため必ずマスクを着用している。

道を広げるのだろうか。一車線増やす? ちなみに、工事中のこの区間は歩道がない。
この場所は本来は立入禁止だが、徒歩の場合、ここを歩かなければ、車道でダンプに殺される。
東側(海側)。
ここは、新しく車道を作るようだ。あまり手を加えないで欲しいのだが。
北側(双葉、浪江方面)
南側(富岡方面)
2025年1月末まで工事が行われるらしい。
熊町地区到着。

<続く>

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