【2024年10月、双葉大熊富岡取材その5】帰還困難区域ゲートに立つ警備員との会話
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解体された工場跡
水沢共同墓地からR288へ向かう。この道沿いにあった家も工場も解体されたが、工場の看板、コイン精米所、そして工場脇のアパートは今も解体されずに残っている。アパートに至っては、再利用するのかと思っていたが、今も廃墟となったまま、そこに留まっている。
コイン精米所の向こう、かつて工場があった辺りには、パトロールの車が一台停まっている。中に人がいるのかいないのか、確認してはいないが、遠くからこちらの様子を伺っているようで、非常に不気味ではある。かつてパトロールの車には、後をつけられたり待ち伏せされたこともあるし、罵倒された経験もあるので、正直あまりいい思いはしない。警察の職質の方が丁寧で安心できたりする。
違和感のある英語看板
R288の手前には、例によって「Caution/Turn Left!」と書かれた看板が立つ。いつ見ても違和感のある英語看板だ。確かに、物見遊山といった批判を嫌う日本人と比べて、「ダークツーリズム」という文化が根付いている外国人の方が、こうした被災地を訪れることに抵抗がないかもしれないが、それにしてもわざわざ英語看板を用意するあたり、「違う目的」をどうしても連想させる。
それはつまり、日本の大学研究者には勝手な原発事故被災地訪問や研究を制限してるのと比較して、IAEAなどといった国際原子力推進機関には積極的に調査研究情報提供を行なっているのではないかという疑いだ。陰謀論の類で済まされそうではあるが、これはあながち間違いではないと思う。
R288(国道288号)
R288を西へ向かうと、100mほど先にバリケードが見えてくる。そのバリケードの先には、帰還困難区域の中でも最も汚染された地域の一つである山田地区があるが、特に現時点では急激に線量が上がることはない。0.6〜1.2μSv/hあたりをフラフラしているような状態だ。あのバリケードには警備員が常駐しているので、念入りに除染されてるのかもしれない。
帰還困難区域ゲートに立つ警備員との会話
遠くで僕を見つけた警備員が、両手で「ばってん」を示しながら歩いてくる。何やら大きな声で「この先は進めませんよ」と言っている。いや、そんなことわかってるよ。わかった上で俺はその際まで歩いてきてるんだ。
「ダメです。この先には車しか進めません。自転車やバイクもダメです。」
「特定帰還居住区域が指定されて除染が始まっていると思いますが、この先でも除染してる場所ってありますか」
「いや、ダメです。そういう細かいことは私らにはわかりませんから」
これは事実で、現場で働く警備員には、その先の帰還困難区域がどうなってるかなどと言った申し送りは一切されていない。彼らは内閣府の下請けの下請けのそのまた下請けの下請けぐらいのポジションで、ゲートに立ってやるべき最低限のことを指示されているだけで、余計なことは「個人情報なので」と話さないように指導されている。たまに話好きな人がいろいろ答えてくれることはあるが、それも5、6年前と比べればだいぶ減った。
「たまに僕みたいに歩いてくる物好きな人とか来ますか」
「ああ、たまにいますね」
「外国人の方が多いんじゃないですか」
「うーん、そうかもしれませんね」
いかにも早く帰ってくれと言わんばかりに、警備員は質問に答えながらも蛍光の誘導灯を僕の前で振る。
「すいません、この辺で何枚か写真撮ったら引き返します。ありがとうございます。」
「よろしくお願いします」
警備員はため息をついて首を振りながら振り返ってゲートの方へ戻っていった。何もそこまで嫌な顔をしなくても…と思いつつ、避難指示解除やら復興ムードの醸成やら何やらでここを訪れる人が増えて、少し上から口うるさく言われているのだろうな、と思った。
<続く>
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