今後の介護職員の処遇改善「必要な人材が、確保されるかといった観点から検討していく」
*「最適な介護」を実現するための情報紙*
_/_/_/_/_/日本介護新聞ビジネス版_/_/_/_/
*****令和4年4月15日(金)第725号*****
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今後の介護職員の処遇改善「必要な人材が、確保されるかといった観点から検討していく」
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岸田政権が掲げた「介護職員の抜本的な処遇改善」(=「介護職員等ベースアップ等支援加算」)は、政府の有識者会議の議論を経て、結果的に「収入を3%程度(月額平均9千円相当)引き上げる」ことで決着した。
その財源として、今年2月から9月分までは補正予算(国費)、今年10月分以降は介護報酬を改定した分が充てられることになったが、この10月分以降の介護報酬改定分について、厚生労働省は関係する告示を改正する必要があった。
このため厚労省は改正内容(=告示案)について、今年3月1日より、広く国民から意見を募集(=パブリックコメント)し、3月30日を締め切りとしたが、この結果を4月14日に公表した。結果的に、15件の意見が寄せられた。
厚労省はこれを10項目にまとめ、それぞれの意見に対して、厚労省としての「考え方」を示した。この中で「3%程度の収入増では不十分」とする意見に対して「必要な人材が確保されるかといった観点から、検討していく」等と回答した。
厚労省が公表した10項目の意見と、厚労省の回答は次の通り。なお、文頭の□印は寄せられた意見で、■印は厚労省の回答内容。
【「さらなる引上げを継続すべきで『3%程度の収入増』では不十分。追加措置を……」】
□1.令和5年度以降、処遇改善の原資を拡充するための介護報酬(基本報酬及び加算)のさらなる引上げを継続すべき。また「3%程度の収入増」では不十分であり、さらなる増加措置を行うべきだ。
■1.今後のさらなる具体的な処遇改善の方向性については「公的価格評価検討委員会」の中間整理を踏まえ、職種ごとに仕事の内容に比して、適正な水準まで賃金が引き上がり、必要な人材が確保されるかといった観点から検討してまいります。
【「加算の対象となっていない種類・職種を含む、全ての従事者の処遇改善を図るべき】
□2.これまで処遇改善加算等の対象となっていないサービス種類・職種についても対象とし、すべての介護サービス従事者の処遇改善を図るべきだ。
■2.介護職員の給与が他の職種に比べて低い状況にあり、その人材確保に向けて処遇改善に取り組む必要があることから、介護職員について、これまで(厚労省は)累次の処遇改善に取り組んできました。
▼このため、現行の処遇改善加算等や、本年2月以降の措置については、介護報酬の対象となるサービスのうち、介護職員が基準上配置されているサービスを加算の対象としています。
▼その上で、今回の措置は、現場からの要望も踏まえ、他の職種にも一定の処遇改善を行うことができるよう、柔軟な運用を認めることとしています。
【「『3分の2ルール』は、より実効性を高めるために『4分の3』とすべき】
□3.総論的には賛成であるが、介護職員の処遇改善の実効性をより高めるため「加算額の3分の2は、介護職員等のベースアップ等に使用すること」としている要件は「加算額の4分の3は……」等とすべきだ。
■3.「加算額の3分の2は、介護職員等のベースアップ等に使用すること」という要件は、一定の柔軟性を確保しつつ、今回の加算が賃上げ効果の継続に資するよう、設定したものです。
【「配分対象および方法は、各法人の実情に応じて、弾力的な取扱いをさらに拡充すべき】
□4.処遇改善加算・特定処遇改善加算を含め、配分対象および方法については、各法人の実情に応じた裁量に委ねる、弾力的な取扱いをさらに拡充すべきだ。
■4.介護職員等ベースアップ等支援加算については、各事業所において、介護職員以外の職種にも一定の処遇改善を行うことができるよう、柔軟な運用を認めることとしています。
▼また、介護職員等特定処遇改善加算については、経験・技能のある介護職員に重点化を図りつつ、一定の配分ルールのもと、その他の職員にも配分することが可能としています。
▼令和3年度介護報酬改定においては、介護職員間の配分ルールの柔軟化を行ったところであり、引き続き取得促進等を図ってまいります。
□5.職員の賃金改善が確実に行われることを担保することを前提として、加算の一元化と簡素化を図り、法人裁量をさらに拡大することで、処遇改善効果を高めるとともに、事務負担軽減を図るべきだ。
■5.介護職員等ベースアップ等支援加算については、現行の処遇改善加算等と同様に、現場の方々に確実に行き渡るよう、補助額の全額を給与引き上げに充てたこと等について、自治体において確認する仕組みとしています。
▼今後も、事務負担が少ない形で手続きが行えるよう、現行の処遇改善加算等との様式の一本化も含めて、可能な限り事務の簡素化を図れるよう、検討してまいります。
【「今年10月以降も、保険料・利用料に跳ね返る加算ではなく全額公費で行うべき」】
□6.今年10月以降も、保険料・利用料に跳ね返る加算ではなく、全額公費で行うべきだ。
■6.介護職員の処遇改善については、従前より、事業者にとって安定的・継続的な事業収入が見込まれる、介護報酬において対応してきたところです。介護保険制度は、保険料負担・公費負担・利用者負担の適切な組み合わせにより、国民皆で支え合う仕組みです。
▼このことで持続可能なものとしており、こうした枠組みの下で対応していくことが適切と考えています。
【「現場で働く職員の実情に応じた、算定方法・制度設計とすべき」】
□7.利用者数によって変動する算定方式を改め、実際に配置する職員数に基づいて算定する方式とすべきだ。
■7.今般の処遇改善については、各サービス種類の中で平均的な職員配置の事業所であれば、常勤換算の介護職員1人当たり月額9千円の賃金改善が可能となるよう、補助金の配分を行うこととしております。
▼各事業所においては、介護職員ごとに勤務時間等が異なることなど、職員の勤務実態に合わせた処遇改善を行っていただくことを想定しています。
□8.扶養の範囲内で勤務する者は、給与の引き上げ(時間給の増額)に伴い、年間の実働時間を削減しなければないない状況が生じるため、結果的に「人手不足に拍車が掛かる」という極めて深刻な状況が想定される。
▽とはいえ、正職員への支給割合を大幅に高めれば、職種間の賃金バランスが大きく崩れることにもなる。このようなことから、先般支給のあった「慰労金」のような形での支給が望ましいのではないか?
■8.本来、賃金は一般的に労使間において自律的に決定するものであり、現行の処遇改善加算についても、その算定額を原資として、事業者が介護職員の賃金引上げを行うものであることから、加算額の分配は事業所に委ねています。
▼介護職員の収入を引き上げることを目的としている介護職員等ベースアップ等支援加算についても、これと同様の考えに立ち、個々の事業所における賃金引上げの柔軟性を一定程度確保する観点から、現在の仕組みが適当と考えています。
□9.短期的に介護職員の処遇を改善するための措置として、一定の要件が求められていることはやむを得ないと考えるが、長期的には全てを介護報酬に包含し、本来の競争原理の中で介護事業が営まれる姿が健全であろうと考える。
■9.介護職員の処遇改善が確実に行われるという観点から、これまで、一定の要件のもと、処遇改善加算等として評価する仕組みとしてきたところです。
□10.この加算は介護保険制度が続く限り永久に継続するものか。加算が無くなった途端に給与に影響していく可能性が大きいのではないか?
■10.今般の対応は、処遇改善に係る措置が事業者にとって安定的・継続的なものと見込まれるよう、介護報酬改定により行うこととしたものです。
◇─[後記]───────────
結果的に、今回のパブリックコメントを経て、厚労省の告示案が「修正」されることはなりませんでしたが、それでも15件の貴重な意見が寄せられました。弊紙の正直な感想を述べれば、もっと多くの意見が集まると予想していました。
「どうせ、意見を述べたところで結果は変わらないだろう」との考えがあったかも知れませんが、それでも「今後の処遇改善のあり方」を議論していく上でも、やはり現場からもっと「声」を挙げるべきではないか……と、弊紙では考えています。
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