
おとなもつらいよ。
・赤ちゃんの好き嫌いがはっきりしてきた。食べ物でいうと、バナナ。おもちゃでいうと、洗濯ばさみ。ちょっと困ってしまうのは、お米の袋をはさんでいる錆びた金属のクリップも気に入っていること。一度ハマると他のもので気を惹こうとしても口に入れてしまう。取り上げるとうわーんと声をあげて泣く。だんだん自分が悪いことをしているような気分になる。でもなあ、錆びてるからなあ。口に入れてほしくないのだよ……。
・風邪をひいて以来、痰がのどに絡んでいるのか、しゃべるときにゴロゴロと音がするので、意を決して病院でもらった粉薬を飲ませることにした。「ミルクに混ぜるといい」というので袋のはじを切って開け、粉をさらさらとミルクに注ぐ。まるでサスペンスドラマの毒を盛るシーンのよう。なにかとても悪いことをしているような後ろめたさを感じながら、ミルクを飲む赤ちゃんをどきどきして見つめる。早くよくなりますように。
・寝かしつけのために授乳クッションに赤ちゃんを乗せ、揺らしているときにも後ろめたさを感じることがある。赤ちゃんはまだ遊びたそう。だけど時刻は23時。もう遅い。「寝るのだよ」という刺激を入れるため、揺れを大きくするが、こんなことをしていいのだろうかとも思う。結果、寝てくれるとホッとするし、妻にも感謝されるのだけれど、本当はひとりでふとんに入って寝るとか、妻のおっぱいを飲みながら寝るとかしてくれるとありがたい。
・僕たちは赤ちゃんを地球に呼んだ立場だから、できる限り快適に、ホテルのように過ごしてほしいと思う。なんでも思うとおりにさせてあげられたらいいのにね。でも、毎日いっしょにいると、そうもいかない。申し訳ないなあと思いながら、こちらの都合に合わせてもらうことも多々ある。衛生面や安全面を考慮してのことが多いのだけれど、それでもなんとなく罪悪感を感じる。ぐずって泣く赤ちゃんに「おとなもつらいのよ」と心の中で語りかける。わかるはずはないのだけれど。
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