企画仕事の進め方・業務フローをかなり細かく紹介【企画のプロの話(3)】
初めまして。制作・マーケティング業界の片隅に生息する佐藤と申します。
企画職の仕事にはアイデア出し、分析・評価、プレゼンテーション、実行支援とさまざまな内容があります。
ではどのように進めていくか、ご存じでしょうか?
今回は、特に「新規プロジェクト」のときの企画立案~実行に至るまでの一連の業務フローと、各ステップで求められる作業内容を細かく解説します。
なおAIが代替えできるプロセスについても、文中で簡単に触れています。
以下では制作・マーケの受託における営業・制作フローシートをスプレッドシートで公開していますが、ここでも企画仕事のフローをご紹介しています。よろしければお使いください。
企画職の仕事内容・業務フロー
企画者は、プロジェクトや企業の規模により企画立案から実行までを一人または複数名で担当します。
1.市場調査・顧客分析
企画立案前の重要なマイルストーンとして、市場調査や顧客分析があります。これらは企画の基礎となるデータで、量や質、または両方のデータを確保します。
そのうえでニーズやターゲットを確定、市場や顧客の状況に基づいた分析を行い、企画立案の前提条件に用います。
個人的な感覚では、ここのリサーチや分析はコストや時間的観点から省略することも多いです。つまり最適な基礎データなしで提案や企画を求められることもあります…。
なお元データ収集後の分析・解析はAIで代替することができます。AIは大量のデータから関連性や傾向を発見できるので、市場動向や顧客ニーズを短時間で把握できます。
さらにAIはプロンプト(指示)により「2.課題の特定」「3.コンセプト設計」「4.アイデア出し・構想」「5.企画・戦略立案」などを行えます。
ただしAIは作業は横断的かつ一気通貫で行えるわけではないため、最終的に、人間によるデータ解釈と示唆抽出がマストです。
2.課題の特定
「1.市場調査や顧客分析」で得られた分析結果をもとに課題を的確に捉え、焦点を絞るプロセスです。
課題を明確に特定しなければ顧客ニーズと乖離した企画になり、失敗する可能性が高くなります。
なお課題ごとに緊急度や目的観点から優先順位をつけ、最優先すべき課題を明確化することも大事です。
このプロセスではAIではなく、人間による課題特定が大切です。AIは課題特定における背景にある文脈や状況理解が苦手なため、人間の補助的な役割に留まります。
3.コンセプト設計
「2.課題の特定」で明らかになった課題を解決することを根拠に、コンセプトを設計します。コンセプトは企画立案の核となり、シンプルさが大事です。わかりやすく明確であればあるほど、企画がブレません。
ここでは、企画の価値と目的、成果目標項目、ターゲット、差別化ポイント、コンテンツ内容などを明確に定義します。誰でも理解できるほどシンプルにすることが大切です。
競合との差別化を図るための独自性と、実現度の高さも重要です。
このプロセスでは、仮設立てや検証の一部でAIを活用することができます。ただしAIはリアルな創造性や独創性を備えているわけではないため、全てを代替えすることは難しそうです。
4.アイデア出し・構想
まず、固定観念・質・実現可能性にこだわらずたくさんのアイデア(ネタ)を発想します。
そのほか、アイデア出しの方法には以下のようなものがあります。
なおアイデアの量を担保するために、佐藤は100本ノックをよくやっていましたが、現在はこのプロセスをAIで自動化できます。AIは過去データからアイデアのヒントを導き出すので、人間の発想をAIが補完する形でネタ出しを促進できます。
出されたアイデアはGoogleスプレッドシートやドキュメント、Notion等、普段お使いのツールにまとめます。
佐藤は、自分用の記録としてメモ帳、チーム内で共有するものはやGoogleスプレッドシート、Googleドキュメントでまとめています。
このあとは一人またはチームメンバーと議論や推考を重ね、実現可能性、革新性、市場への影響などを考慮して、分類・関連付けを行いながらアイデアを絞り込みます。
次に、選定されたアイデアを多角的な視点で検討し、アイデア同士を組み合わせて構想化させます。この段階で、アイデアにある程度くっきりした輪郭や質感が生まれているはずです。
5.シミュレーション・評価
アイデアや構想を具体化する前に、実現可能性や採算性、妥当性な度を判断するプロセスです。思い付きや感覚ではなく、根拠に基づく企画を策定するために必要です。
事業性が見込めない案の場合、このタイミングで手を引く判断ができます。
また数字に基づく綿密な事業性評価を経ると、経営層に対して企画の合理性を説明しやすくなります。リスクへの備えも示せるため、承認を得やすくなります。
なおこのプロセスはAIが代替えできます。AIはシミュレーションモデルの構築と分析が得意なため、妥当性判断に役立てられます。シミュレーションや評価のもととなる各種元データとプロンプトにより、各種項目の妥当性を出力できます。
なおこのプロセスの前には、案件状況の把握と「1.市場調査・顧客分析」でのデータ取得を行います。
ただ、「1.市場調査・顧客分析」は予算や状況により工程を省かれることがあったり、シミュレーションに必要なデータを事前に集めきれないことも多々あります。
その場合、アイデアや構想をある程度形にし、フェルミ推定を用いてデータの項目や数値を仮定したうえで「5.シミュレーション・評価」と「6.企画・戦略立案」を並行して詰めていくこともあります。
ただし仮定して進める際は、項目や数値の妥当性から検証する必要があるので、脳みそリソース的には高カロリーです…。
6.企画・戦略立案
「5.シミュレーション・評価」の結果に基づきビジョンや目標を設定し、具体的な企画・戦略を立案するプロセスです。
実現可能かつ具体的な戦略を立案し、実行計画を策定し、定期的にモニタリングと評価を行います。
このプロセスで定められたことが事業の成否を左右するため、綿密な事前準備と緻密な検討が重要視されます。
なおこのプロセスは創造性や独創性、人間の感性やこだわりをもとに策定する要素を多分に含みます。そのためAIの代替えは難しいと考えています。
7.企画書(提案書)の作成
企画書は、関係者への説明や経営層の承認を得ることを目的に使用される資料です。
このプロセスは、これまでに策定した事業計画や戦略をまとめ資料化する工程で、企画職にとって最も重要なアウトプットの一つです…!
体系立ててわかりやすく、かつ根拠を示しながら企画の全容を説明することが求められます。作り手のこだわりではなく、読み手にとってわかりやすいことが最も重要です。
なお費用、収益、市場規模などの数字を具体的に示し、企画の経済性を示すことは承認を得るために必須です。
そしてこのプロセスはAIと業務分担ができます。AIが企画書の骨子を自動生成し、細部の作りこみや本質的な企画立案・戦略策定は人間が手を加えていく形です。
資料内のテキストや図表・画像・動画・音楽の生成、ビジュアル資料のデザインアシストなどもAIで生成することができます。
8.プレゼンテーションの事前準備
プレゼンテーションは、関係者に向け、企画内容を説明したり発表したりすることを指します。
プレゼンでは企画内容の理解および支援獲得と合意形成、承認獲得を行います。承認を得られた企画書は、プロジェクトや事業の基本指針となります。
そのためプレゼンテーション前日までに事前準備を行い、万全の体制で本番に挑むことをおすすめします。
また企画により、デモ映像や製品サンプルなど具体的なアウトプットをイメージできる資料も準備しておくと有効です。
なお本番では思いがけず、機器トラブルや会場設備によるハプニングが発生することがあります…。なぜか準備が足りない時に限ってトラブルが発生する気が…。
トラブルや事故は、発生してからでは本当に遅い! ので、代替案をいくつか用意しておき、すぐに対応できるようにしておくことを強くオススメします。
この段階では、プレゼン資料の下書きやデモ等の作成、質疑応答の予測と回答案の提示などの一部業務をAIに担当させることができます。
ただし細部の作りこみは人間が行い、全体の質を上げる必要があります。
9.プレゼンテーション本番
関係者や経営層に向け、企画の説明と承認を得るための機会です。思考共有や目線合わせなども行われます。
プレゼンは参加者に合わせた分かりやすい説明と、自信と情熱に満ちた口調、参加者の目を見て話すことが重要です。
所定時間は15~60分であることが多い印象ですが、時間超過は避け、所定の時間内にプレゼンを収めるようにします。
進行が遅れている場合は素早く調整し、重要事項を中心に説明を絞り込んでください。終了時にはしっかりとまとめと総括を行いましょう。
また予期せぬ事態が発生した場合は落ち着いて対応し、事前に準備しておいた代替案を素早く選択、仕切り直して進めましょう。
そして参加者から質問があれば丁寧に答えます。その場で最適な回答が分からない場合は、追って詳細を報告すると伝えるなどの対応が賢明です。
プレゼン段階で経営層や関係者をしっかりと巻き込むことで承認が得られやすくなります。
そのほか実行段階をスムーズに進行できたり、目標達成度にも変わりが出ることがあるため、関係者の巻き込み可否は重要です。
なお経営陣の承認を得るためにもいくつかのコツがあります。
そしてプレゼンテーション本番は、現代ではまだAIが代替えできない部分です。
10.関係者間調整
企画書のプレゼンテーションで経営層や関係者から承認を得た後、実際に企画を実行に移すまでには、関係する様々な部門や関係者間での綿密な調整が必要です。
関係各所に企画を周知しながらそれぞれの役割を明確にし、企画内容と進捗や課題を共有しながら進行します。
調整時のポイントとしては、丁寧なコミュニケーションが大切です。積極的な情報共有&柔軟な対応を心がけながら、各関係者の意を汲んだ意思決定を行うのがベストです。
この時、全方位に角が立たないような立ち回りや意思決定を行うことが難しいケースもあります。クライアントや経営層の意思を優先しながらも、他関係者にも配慮した落としどころを探る微調整が必要です。
また調整面でよくある課題としては、「関係者間の意見の対立」「情報共有不足」「意思決定の遅延」「担当者のマンパワー不足」などが考えられます。
過去を振り返ると多くの問題はミスコミュニケーションや準備不足が原因なことが多いので、ここはくれぐれも気を付けていきたいところです。
なおこの部分は、忖度や調整など人間的な判断が求められる場面が多くあるため、AIの代替えはまだ向いていない印象です。
11.実行体制(プロジェクトチーム)の構築
クライアントの承認を得て、関係者間調整も完了したら、実行体制の構築に移ります。権限と責任の明確化、リソースの確保、進捗管理体制の整備など、あらゆる側面から実行に向けた準備を行います。
この時点で決定しているケースも多くありますが、企画全体を統括する責任者としてチームリーダー(プロジェクトマネージャーまたはプロダクトマネージャー、プロデューサー等)を任命します。
関係各所から適切な人員を選出し、プロジェクトチームを結成します。ポジション毎に担当者を割り当てることで、各業務やタスクに対する責任の所在が明確になります。
なおこの段階で、プロジェクトの作業を細かなタスクに分解し実行計画を管理する構成図WBS(Work Breakdown Structure)を作成します。
WBS上でスケジュールに沿いタスクを見える化&簡素化すると、全容とスピード感を把握しやすくなります。
更に作成したWBS(Work Breakdown Structure)の各タスクに各担当を割り当て、進行にあたってタスクと人員に漏れがないよう確認します。なおWBS作成のサポートはAIでも行えます。
キックオフミーティングでは関係者が一堂に会し、プロジェクトの正式なスタートを宣言します。
ただしチーム構築後でも、企画の規模や複雑性のほか、過不足ポジション/リソースの発生などで体制を調整することは多々あります。定期的に見直して、必要に応じて改善を行いましょう。
12.ガバナンスルール策定
意思決定フロー、報告ルート等のガバナンスルールを策定します。体制図に基づき各種ルールとリスク管理体制を決め、チーム全体に共有します。
ガバナンスルールを事前に明確化し、遵守することが大事です。プロジェクトやチームの健全な進行や透明性のアップにつながります。
なお状況や市況の変化に応じてルール見直しが必要なこともあります。
例えばコロナ禍発生下では、プロジェクトや案件の途中でほぼすべての規約・規定・ルールが変更されたり新たに策定され、各種ガバナンスへの状況反映や、策定したものの現場への落とし込みに混乱を極めたことがありました。
どのルールも重要ですが、特に重要なものは「意思決定フロー、ルール」「情報共有/報告ルール」だと考えています。
「意思決定フロー、ルール」では広告主、経営陣、プロジェクトマネージャーの権限範囲を定めること、「情報共有/報告ルール」ではフローにのっとったエスカレーションを行うことで、事故が少なく健全に進行させやすくなります。
なおルール化においては、過去のガバナンスルールなどの書面データをもとにして、AIにルール書面を作成させることができます。ただし内容の確認は人間の目で行いましょう。
13.実行(実務・プロジェクト推進)
このフェーズでは、これまで策定してきた計画やルールに従い各タスクを消化しながら、進捗管理を徹底します。
プロジェクトの遂行と納品を目指すには、綿密な計画と実行、そして関係者との連携が肝になります。
トラブルや課題が生じればプロジェクトマネージャーが関係各所と連携しながら適宜対応し、プロジェクトを遂行します。
各部門や担当者は割り振られたタスクに着手し、実働作業を進めます。ローンチ対象(製品・サービス等)は設計、開発、テスト、評価を経て具現化を行います。
並行して製造、物流、販売チャネルの構築など、販売に向けた準備を行います。マーケティング施策に基づき、販促物制作を経て、広告宣伝やプロモーション活動なども実施します。
ローンチ対象は最終検査を経て、正式に市場へ投入(リリース)します。販売や周知活動を本格化させ、顧客またはユーザーへの提供を開始します。
もちろん必要に応じて戦略を修正し、プロジェクトの成果や目標達成に向け努力することが求められます。
14.プロジェクト総括(評価・改善)
実行されたプロジェクトの結果を評価し、改善点などを総括します。得られた成果を次のプロジェクトや事業計画に生かすためのプロセスです。
評価・改善サイクルを確実に回すことで、プロジェクト運営能力の継続的な向上を図ることができます。
15.報告
プロジェクト全体の振り返りとして、目標達成、成果、費用対効果、スケジュール、品質、関係者のパフォーマンス等を振り返ります。
目標未達やトラブル・課題が発生した場合、プロセス、体制、リソース配分など多角的な視点から原因分析と改善点の特定を行います。ヒアリングやレビューなどでメンバーからの意見も収集してください。
改善策についてもアクションプランを策定し、実施および実施後の再評価を行います。また、改善策を含めた施策の実行結果を次のプロジェクトに確実に反映させていきましょう。
最終的に、プロジェクトの総まとめである報告書を作成します。
報告書作成後は関係各社に向けて報告会を行います。プロジェクトの目標達成、成果等を共有し、プロジェクトの終了を宣言します。
なお報告書作成はAIで一部を代替え可能です。下書き作成や論理性のチェックなどを任せ、協働しながら進めることができます。
【まとめ】企画はプロジェクトの中心だということ
企画職の役割はアイデアを具現化し、新しい価値を創出することです。
市場調査から顧客分析、課題特定、戦略立案、シミュレーションと事業性評価など全過程に関与し、一連の業務を行います。
プロジェクトマネジメント力も求められ、各所業務の知見はもちろんのこと、多方面とのコミュニケーションのほか、やりきる力や推進力なども必要です。
案件規模に上下はありませんが、複雑で大型なプロジェクトのときは特に、24時間365日、常に全方位かつ細部に気を配る必要があり、心が休まらない時も多々あります。
けれど脳内にあるアイデアを可視化し、進め、完了するまでの道のりの険しさ=面白さと、タスクが積層した果ての達成感には、何物にも代えられない喜びがある、かけがえのない仕事だと思っています。
企画リソースがないときは
とは言え日々多忙である以上、時間や人で、自信の有無などの関係で企画が行えないこともあるかと思います。
その場合、佐藤が企画を担当させていただき、企画書作成を行うことも可能です。プロジェクトや施策の管理マネジメントも対応可能ですので、ぜひお気軽にこちらよりお問い合わせください。
最後までお読みくださりありがとうございました。企画書や報告書を詳しく説明する記事は、また追って公開予定です。
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