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戒厳宣布
韓国の尹大統領が戒厳布告を発したとのニュースには驚いた。最初は何かの誤報ではないかと思ったが、本当だった。
韓国はご存知の通り大統領制であり、国家が緊急事態の際は、大統領に非常権限が与えられている。非常権限の中には、戒厳宣布権、違憲政党解散権なども含まれる。北朝鮮が軍事侵攻してきた場合などを想定しているのだろう。何といっても公式には北朝鮮と交戦中の国なのだ。
今回は尹大統領が今は緊急事態だと認識して戒厳布告したもので、それ自体は憲法にのっとっている。これに対し、国会が非常戒厳解除の要求を決議したので、大統領はこれに従い、戒厳布告を解除した。これも憲法通りで、法的な問題はない(と思う)。この後、野党が国会に弾劾訴追案を出しており、3分の2の賛成で成立するから成否は与党次第、微妙な情勢なようだ。
韓国の国会は今、与党「国民の力」が108人、最大野党「ともに民主党」が170人と、野党が多数を占めている。尹大統領の政策は国会で否決され、国会の決議は尹大統領が拒否すると、どうにもならない状態らしい。
改めて、世界の民主主義国家を見渡すと、米国を筆頭として大統領制の国が多い。大統領は任期の決まった国家元首であり、天皇のいる日本には似合わないし、同じ意味でイギリスにもなじまないだろう。各国で大統領の権限は様々、米国では完全に立法府から独立しているし、ドイツでは大統領の権限は殆どない。韓国では、立法府から完全に独立しているわけではないが、権限は大きく、任期は5年で再任はない。
今回の韓国の混乱や、米国大統領選の(主としてトランプの)非難合戦を見ると、民主国家の政体として、大統領制は如何なものであろうかとも思う。国の政策が個人に依存し、右か左かに振れ過ぎる。選挙での獲得票数が、どちらも40%台でさして変らず、たとえ差が1%でもそれ以下でも、結果は勝か負けだけだ。
日本は政党政治であり、現在、自民党は半数以下だが、比較第一党で政権を担っている。米国や韓国よりは民主主義が機能しているのではないか。国会内各委員会の議長を与野党で分け合うのは合理的で、選挙で示した有権者の意向を反映しているように思える。
最大の問題は旧メディア、特にテレビの報道がどれも興味本位で、同じ方向に偏向していることではなかろうか。SNS情報は嘘も多く玉石混合だが、私にはテレビよりはるかに参考になる。