クーデター
文芸春秋11月号に前兵庫県知事、斎藤元彦氏が70分にわたり語った記事が記載されている。「感謝の言葉が足りませんでした」として反省しているものの、事件の発端となった公益通報なるものの対処については正しかったと主張している。
事の発端は元幹部職員が3月12日に報道機関に「斎藤元彦兵庫県知事の違法行為等について」と題された文書を送付したことから始まる。斎藤氏はこの文章は、事実ではないことがたくさん書かれていて、誹謗中傷でしかないと認識して県内で調査を始めている。公務員失格だとして、3月27日に元幹部の役職を解任している。元幹部職員は4月4日に県の公益通報窓口に通報して、担当部署が手続きを開始した。
公益通報のつもりなら、最初からその為の窓口に通報すれば問題なかったと思われるが、何故いきなり報道機関だったのか、よくわからない。県の窓口が不安なら厚労省にも公益通報の窓口がある。
以下、最初に報道機関に送付された文章について、斎藤氏は以下の如く語っている・・・
業務時間中に「嘘八百」を含めて、事実無根の文書を作って流す行為は公務員として失格です。
文書には「とにかく斎藤氏は井戸(前市長)嫌い、年長者嫌い、文化学術系嫌い」とも書いてありました。その一例として、私が「ひょうご震災記念21世紀研究機構」で副理事長を務めていた御厨貴先生と河田恵昭先生を何の相談もなく解任した、と断定されています。これも事実ではありません。
もともと阪神・神戸・淡路大震災から来年で30年経つので、これを機に組織をスリム化していく話がありました。そのなかで副理事長のポストを減らすことになったのです。とはいえ、両先生には引き続き同機構内でセンター長として残っていただきますし・・・・
私が県内各地で贈答品を受領していたとする、いわゆる「おねだり」についても書かれています。市町村が特産品にしようと頑張っているゴルフのアイアンセットが私に贈呈されていることになっていますが、一切いただいていません。さらに、加西市にある家電メーカー「千石」の高級コーヒーメーカーももらっていません。パワハラにしても、例えば公用車から20メートル歩かされ、職員を叱責したと言われていますが、動線をきちんと確保して欲しいと言っただけのことでした。
これが、その通りとすれば、報道機関に出した文書は公益通報とは思えず、斎藤氏がとった対応は責められるべきものではない。通報者が公益通報のつもりなら、それ用の窓口に通報すべきであろう。
報道機関に出した文書が公益通報にあたるかどうか、その後の経緯で通報者が休職処分を受けたことが違法かどうかは、処分を受けた側が裁判を起こして処分の無効を主張することで決着すべきだ。今のようにテレビ、新聞等で斎藤氏を一方的にコテンパンにやっつけるのは、いかがなものであろうか。
斎藤氏は知事として、前井戸知事20年間の県政から脱却すべく、諸々を推進している。1000億以上かかると試算されている県庁舎新設を凍結し・・・(以下斎藤氏言による)巨額の費用がかかる箱物の建設ばかりが予定され・・・コストに見合う効果が想定されていない建物に30億円、40億円とお金がかかるだけでなく、中にはランニングコストで年間1億円の赤字が出るところもあったのです。・・・県として建設予定物件は全て白紙にしました。確かに斎藤氏が知事になって県の財政は著しく改善している。
こういった、いわゆる改革を進めると反対勢力が出現するのは世の常だ。厄介なことだが、反対勢力は自分たちがまともで正しいと信じて疑わない。改革を急げば、反対勢力も勢いを増すから、大きな不満が生じないようには考えるが、結局最後は強引に進めることになる。
元幹部職員のパソコンに「クーデター」との文言があったとのことだが、今回の騒動は反対勢力がクーデターを起こしたというのが本筋のような気がする。出直し選挙で斎藤氏以外の誰かが選出され、諸々の箱物の建設が実行される・・・・ということになれば、クーデターは成功したことになる。