プロセカ文芸、コトハジメ。「プロセカのキャラに宛てて詩を書いてみた」

 あなたは「project SEKAI COLORFUL STAGE feat. 初音ミク」――通称をプロセカと言うゲームを知っているだろうか。2020年よりサービスが開始されたプロセカは、初音ミクを起点とする音楽表現の潮流を汲んだ、現代を代表するリズムゲームだ。数多のヒットソングや書き下ろし楽曲を手軽に演奏することができる。

 プロセカの特筆すべきは、”私たちと共に”現代を生きるキャラクターたちと、彼らが織りなす物語の、その親密さだ。
 プロセカのキャラクターたちがそれぞれの道を迷い苦しみながらも懸命に歩いてみせる姿は、「アタシも、クラスでこんなふうに勇気を出して発言できたら」「諦めた気でいたけど、俺にもちゃんと夢があったのかも」などと思わせる”近さ”がある。ファンタジーを纏いながらも、現実を生きるプレイヤーを置き去りにしない、優しさがある。

 そんな彼らの物語を見守り、作品に触れているうちに、わたしはこの気持ちを形にしたいと願うようになった。できることなら、自分にとって挑戦と言えるような方法で。書き慣れた小説でも、読み慣れた評論でもない、まったく別の新しい方法が良い。けれども、いったいどんな・・・。
 そのように考えていたわたしに、プロセカは一つのアイデアをくれた。それは「カスタムプロフィール」だ。カスタムプロフィールは、プレイヤーが他プレイヤーに開示する「名刺」をつくることのできる機能だ。キャラクターのイラスト、図形、背景画像などを利用して、キャラクターへの思い入れやプレイスタイルなどを自在に表現がすることができる。このカスタムプロフィールにはテキストメッセージを入力する機能があり(wordソフトのテキストボックスをイメージしてもらいたい)、わたしはこの機能を使って、キャラクターたちへの感謝や祈りを言葉にしてみた。すると、文字数に制限があるために、それは自然と詩や短歌のような、限られた言葉で精一杯の表現を目指すものを志向し始めたのだ。
 目から鱗だった。詩には、憧れはあっても、気安さを感じたことはなかった。小説やエッセーよりずっと、才能を必要とする代物に思えていた。無論、わたしの詩は巧くない。当たり前だ。けれど。
 わたしは、彼らに向けた自分の詩が大好きだ。超愛している。何故って、これは祈りだから。言伝で、灯火で、返歌であるのだから。どれだけ下手クソな代物でも、大好きな人へのラブレターは、贈る相手とおんなじくらい、大事に想えてしまうんだろう、きっと。

 というわけで、ここではプロセカのキャラクターたちに宛てた詩を紹介したい。カスタムプロフィールの制作を通して学んだ「詩作で楽しむプロセカ」という在り方を、セカイのどこかでの誰かが気に入ってくれたなら、それってとってもわんだほいだ。

望月穂波

  星より遠く 遙かのきみへ

  どうか貴方の優しさが
  静かな月の面に跳ね返り
  そうして貴方の長き夜を
  照らす灯となりますように

  貴方自身の眼差しが
  貴方の背を温めますように


神代類

  過ぎた季節を生きている彼と、手を繋がずとも歩いて行ける、
  そんな仮定を笑えば諦めたことになるのだと、
  知っていたからきみは笑わなかった。
  これは旅程。
  きみが笑わないでいられる王国へと続くきみたちの旅。


暁山瑞希

  「咲う」と書いて
  「笑う」と読ませぬ為の
  きみは一葉の青写真
  誰の背も焦がさぬ茜


東雲絵名

  描かれなかったすべての光が
   描くきみを描くぼくを
    描いた光を照らしたきみを
     照らせなかったぼくの光を
      描くきみを描かなかった
       すべてのぼくを照らす光を
        照らさなかったぼくを描く
         きみを描いたぼくのすべては
        照らさなかったぼくを描く
       すべてのぼくを照らす光を
      描くきみを描かなかった
     照らせなかったぼくの光を
    描いた光を照らしたきみを
   描くきみを描くぼくを
  描かれなかったすべての光が


東雲彰人

  巡礼のために生まれてきた人の
  行く道をお前は選ばなかった
  一切の望みを許さない あの門をくぐった
  お前の傷を癒やしてくれる宿は無く
  嗚咽を隠してやろうと歌う鳥もいなかった
  (修羅すらも お前の先を歩いてはいなかった)
  止まり損ねたお前の轍を 風は洗いもしないだろう
  斃れる場所すら失くしたお前を 迎えて墓標が哭くだろう
  (地は剣に 天は秤に 成り果てる)
  だからお前は黙するな エンドロォルを見送るための
  席などお前にあるものか
  あの呼び声を 聴いたお前は
  壊れた橋を 渡るのだから
  どうかお前は黙するな 果てまで歩け 枯れても笑え
  お前の連れた夢々が お前と共に眠る朝まで
  
  

天馬司&望月穂波


  司れ 天馬駆けゆく春嵐 波を望めよ 月も穂れよ


 どうだったろうか。詩の感想があれば、ぜひ聞かせてほしい。なるべくなら、心ある言葉で。感想を書くのが難しければ、あなたのキャラクターへの想いを教えてほしい。詩にしろ、なんて言いやしない。でも、ほら、ね。見ての通り、楽しいんだな、これが。

 ここから、わたしのプロセカ文芸を始めていこうと思う。当面は詩と短歌を。全キャラクターぶんの詩を書きたい。書いたものは、この記事に追記していく予定だ。そのうち小説も書くだろう。ちなみに筆者は、一度だけpixivにプロセカの小説を投稿している。草薙寧々が寂れたゲームセンターで飲んだくれのオッサンと交流する話だ。寧々を相手に酒の話をしたくて、一晩で書いたものだ。どうかしている。

(プロセカをご存じない方へ、念のために言っておくが、ここに名前の無いキャラクターはたくさんいる。きっとあなたと共に歩いてくれる誰かがいる)


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