理想の教育~現役高校生の対話~⑥:『外国語の授業について』
はじめに
学校って、なんだろう?
好きだろうが嫌いだろうが、行かなきゃいけないし。
学ぶのは僕らなのに、学校の方針に関する決定権は無い。
僕がキャンプで会った井上くんは、最近学校を辞めたらしい。
同じくキャンプで出会ったけいちんは、14年間アメリカで過ごして引っ越してきた日本の学校にカルチャーショックを受けたという。
僕は公立高校に進学することに疑問を抱き、現在はN高に通っている。
そんな、ちょっと変わり者の僕らが「理想の教育」とは何か?について話合ってみた。その“議事録”を4回に分けて公開しようと思う。
(第1回「校則についてどう思う?」はこちら)
(第2回「教職員と生徒の関係性」はこちら)
(第3回「校舎についてどう思う?」はこちら)
(第4回「数学って面白い?」はこちら)
(第5回「理工系少なくない?」はこちら)
・登場人物
りん:
りんたろう(16歳)音楽のプロを目指す高1。この企画の発案者。
公立高校に進学することに疑問を抱き今はN高に通っている。
安宅和人著「シン・ニホン」に感銘を受け、現役高校生の立場から
なにか発信できないかと思い立つ。
井上:
井上(16歳)高2。
県内の進学校に進学するも、教育方針に疑問、学習レベルに物足りなさを 覚え、高校を中退。今は自分で、大学受験の勉強をしている。中でも数学 分野を重点的に学習中。好きな食べ物はすき焼き。
けい:
けいちん(16歳)。高2。0歳から14歳まで14年間アメリカで育つ。
今頑張っていることはディベートやスピーチ。好きな食べ物はトマト。
現在はディベート部に所属している。
第6回:『外国語の授業について』
導入
言葉ができると世界は広がると思う。
YouTubeを見るときでも、違う言語ができれば見られるコンテンツもその分増える。好きなアーティストが何を歌ってるか聞き取れるようになったり、外国の人とSNSで繋がったりもできる。
小中高と英語を習っているのに、全然わからないとしたら、それは届くはずの世界を遠ざけられているようなもんじゃないかと思うんです。
りん:外国語の授業について。
井上:喋れるようになりたい(笑)。
けいちん:一番うちが今回のプロジェクトで言いたかったことなんだよね。「言語の授業で話さないとはどないこっちゃ!」と言いたい。言語の授業なのに一回もみんな口を開かないわけじゃない。ただただ文法、で結局話せない。読解もそんなにできないみたいな感じの微妙な能力がさ今の英語の授業では育っちゃうんだよね。それは決して言語力ではない。
りん:日本の今の英語能力ってすごい低いらしいしね。
けいちん:こんだけ長いことやってんのにね。謎だよね。
りん:どうすればいいんだろう。
けいちん:なんかさっきの数学の話と似てくるけど、英語嫌い風潮もあるじゃん。
りん:やっぱり義務教育ですら4年、で高校も合わせたら7年とかやってるのにみんな、こんだけ話せないってやばいよね。
けいちん:もったいない。なら英会話学校に3年行った方がいい。
りん:例えばスポーツとかさ、7年続けたら超うまくなるじゃん。なんでも7年続けたらそれなりにうまくなるはずなのに、あれ?みたいな。
井上:英語は小学校でもやったんやけど、でも僕らの頃は小5ではほとんど何にも教わらなかった。はい、歌いましょ〜ABCD〜みたいな。そんなレベル。
けいちん:もっと若い時にやるべきだと思う?思考が柔軟な時に。
りん:でもやっぱ母国語を土台として作らないといけないからさ。
井上:そこの議論はあるよね。
りん:僕はやっぱり小さい頃にちゃんと母国語をやった方がいいと思うね。
井上:でも今は小学校1年生からやんな。
りん:そうなんだ。
井上:でも早ければいいってもんじゃないと思うねんけどな。
りん:一つ思うのは、ALT(Assistant Language Teacher)の先生がほとんど自動音読機みたいになってるときあるじゃん。教えていると言うより、発音を聞かせるだけっていう。ALTの先生って、外国人だったら誰でもいいとかじゃなくて、英語圏でも英語を教えているような先生が必要で、その人を英語教科の主任に置いて、サポートで日本人がいるっていう体制にした方が絶対いいと思う。そこで、躓いたら日本人の先生がサポートしてくれる。逆の体制を取るべき。
けいちん:今の日本でそれをやるの、レベル高すぎるんじゃない?だったら幼稚園の頃から(英語圏の)幼稚園の先生を呼んで来た方がいいと思う。
りん:いや小5からでも間に合うよ。
井上:どうなんやろ。
りん:外国人の先生相手なら喋るハードルも下がるじゃん。生徒もさ、「相手日本人だし、日本語の方が流暢なのになんで英語で話しかけなきゃいけないの」って思うけど、相手が外国人だったらもう当たって砕けるしかないじゃん。そういうサバイバルだよね。
井上:一つ思ったのが、言語の習得の最終目的が“喋ること”なのかどうか。
けいちん:でも“喋ること”が一番実用性があるんじゃない?
井上:むしろ、“読むこと”じゃない?
りん:どれも大事でしょ。
けいちん:そうなんだけど、あまりにも話すことをおろそかにしすぎてる。
りん:どれも総合的に海外の人とちゃんと仕事ができるレベルを目標にするべきだと思う。日本以外の多くの非英語圏の国はそれができてるわけじゃん。少なくとも高等教育を受けた人間がそれをできないっていうのは結構やばいんじゃないかな。
けいちん:でも最終目的をビジネスができる英語にするのであれば、相当ビジネス用語寄りの英語になると思う。TOEICみたいな。それはまた別種の英語じゃん。
りん:でも、まずちゃんと自分の考えを明確にして意思疎通ができるようになるべきだと思う。逆にいうと、いきなり英文学を読んだりする必要はない。そうじゃなくて、先方の英語のメールをちゃんと理解して、ちゃんと返せる。スピーキングもそう。ちゃんと商談ができる。
井上:学校でやる必要あるんかな、そもそも。
りん:あるでしょ。それが日本の国力に直結するじゃん。
井上:例えばほんまにビジネスで必要なんやったら、それこそ自費で払って英会話を習うやろ。例えば会社が、じゃあ君アメリカ留学行ってきなさい、みたいな感じにするやろ。
りん:でも、例えば海外の大企業が、海外に展開するときに、どこの国から人材を雇おうか考える場合に、日本人の新卒は英語下手だしな〜、って思ったら採用したい国ランキングで下がるじゃん。
井上:でも、それやったら、英語で勝負しようとしてもさ、どう考えても文法とか違ううから、他のヨーロッパ言語の人たちと競争したら日本人は完全に負けるから。それなら日本人が得意な計算とか数学とかの方に時間をかけて、ほんまに必要やってなった時に英会話は習得する、でいいと思う。
りん:いやー、それだと世界レベルでの競争力はすごい落ちちゃうわけじゃん。ヨーロッパ語圏じゃない国でも、日本より全然英語レベルが高い国だっていっぱいあるし。
井上:でもそんなに英語人材が欲しいんだったらシンガポールにでもどこにでも行ってくださいよ、僕たちは僕たちの良さがありますから、っていう方がさ。
りん:英語大事だと思うけどな。まあ、これからは英語プラス中国語だと思うけど。でもそれでいったら中国語は、漢字わかるだけで日本人が圧倒的に有利なわけで。
井上:ただ英語では勝負できん。
りん:勝負するにせよしないにせよ、そもそも土俵に上がるのに最低レベルの英語力ってあるじゃん。
井上:日本人そこまでレベル低い?
けいちん:……ごめん、相当低いと思うよ。
井上:多分英文の処理力はええで。
りん:そうね〜。でもそこはリーディングの割合が多すぎるんじゃない?リーディング、リスニング、ライティング、スピーキング、この四つはそれなりに満遍なくできたいじゃん。
けいちん:うちはリスニング、スピーキングを30%ずつぐらいにして、他は20%づつとかでいいと思う。
りん:聞けたら読めたりするしね。極論。
井上:でも逆に読めないと聞けなくない?
りん:でも母国語ってさ、聞き取れるようになってから読むじゃん。
井上:母国語はね。外国語では、できないもんだって。
りん:できなくないよ。なんでできないの?
井上:日本語と英語は乖離しすぎやって流石に。だって述語が最後にくるんやで、日本語。
りん:それは、しょうがないじゃない(笑)
井上:しょうがないけど、めちゃくちゃ大変やねんで、英文頭ん中で考えるときに。「あ〜、次は僕遊びに行くやから、遊びに行くを前に持ってきて、playを言わなあかんのか」って。
けいちん:だから同時でやったほうがいいんじゃないの?固定概念ができる前に
りん:多少文法が間違ってても、英語を聞きまくって大体響きであってるだろうっていうのが感覚的にわかるようになるところと、リーディングとか文法みたいなところを固めて行くことの両方からアプローチしたほうが効率がいいんじゃない?
井上:それは、あるかもしれない。ただ、早期学習とほぼネイティブ環境でっていうのは、僕は反対かな。
りん:早期学習に関しては、僕も小学校5、6年生からでいいかなと思うけど、やっぱり英語の授業の主任は英語圏の人の英語の教師がやって、そのアシスタントを日本人がやるってほうがいいと思う。
井上:ん〜。じゃあ、例えばさ、ALTでさ、英語を第二言語として学ぶ日本人の感覚がわかる人はいるん?
けいちん:その人自身が日本に来たっていうことは日本語を第二言語として少しは勉強しているから。
井上:でもそれは日本語の難しいポイントを知ってるってことやん。日本人が英語を学ぼうとするときに、このポイントがちょっとわかりにくいよなっていう。例えば、仮定法でここの時制がややこしいよねとかは、わからんくない?
けいちん:でも結局さ、英語と日本語の違いって、日本語と英語の違いと一緒じゃん?一番躓くポイントは(言語間の)違いのところだから変わらない。
りん:でも、その学習の仕方ばかりで考えることが、そもそも僕は違うと思うんだよなー。
井上:文法的なアプローチでいくこと?
りん:そう、聞いた感じの響きであってるかどうかっていうのがわかるようにならないと。
井上:最終的にはそこでわかるのがいいけど、やっぱ最初は知識から入らないときつくない?
りん:むしろ最初は響きから入った方がいいでしょ。
けいちん:それは知識派と感覚派で人間的に分かれるとこだと思う(笑)。
りん:なんでー?感覚があったら知識入って来やすいじゃん。あー、これ合ってるような気がする、これなんとなくわかる、ってなったら知識がバーって入って来るじゃん。。何もわからない知識をただただ入れようとしても、元になる受け取る感覚がないから時間がかかると思う。
井上:ほんまに?
けいちん:でも感覚は冴えてる人冴えてない人いるからね。
井上:僕は知識が最初で、ちょっと掘って最後は慣らす方が身につきやすい。
けいちん:経験を元に感覚を培うわけであって、最初から未経験でそれをやるのはちょっと無理かなと思う。
りん:だから小学校からやればいいじゃん、小学校5年生とかから。徐々に増やしていけばいいんだよ、英語のコマ数を。5年生はまず英語と触れ合いましょう、英語で楽しく。で、六年生でもうちょっと高度になって、中一からちゃんと教科として勉強しだすようになってって、ていう風に。
井上:でもやっぱ日本語を土台で考えるやん。
りん:そうだよ。でもやっぱり言語ってさ、日常的なものじゃん。先生を呼ぶときに、英語の先生だったらさ、Mr.とかMS.で呼ばざるをえないじゃん。それでちょっとずつわかるようになってくと思うんだけど。
井上:僕その経験がないからわからん。
りん:「Please open page 83」 とかってさ、毎日やってればそれが当たり前になるじゃん。最初は「ん?」ってなるけど、だんだんわかって来るじゃん。
けいちん:当たり前にはなるけど、それが直結して理解になるかっていうのはわからん。
りん:そこで知識を入れればいいんだよ、感覚に。
けいちん:その感覚を得るまでの経験をこの国でできるかどうかわからん。
りん:えー、そうかなー?でも言語ってさ、適当でもいいからもう言ったもん勝ちじゃん。
けいちん:そうか?(笑)
りん:僕も高校で中国語習ってるけど、授業で習った単語はその授業中に使いまくる。そうすると覚える。5つしか中国語の単語しらなくても、わからないところは英語で代用してでもしゃべる。
けいちん:それは全員ではないよ。それはりん風の勉強法だよ。
りん:あと日本人はもっと自信を持った方がいい。多分ちょっとぐらい間違っててもいいし、英語が完全に第二言語の人たちって結構間違っててもしゃべってる。伝わればいいんだっていう図太さを持って。
井上:韓国旅行で、お土産にサンダルを買おうってなってサンダルを買ったんですよ。で、その靴屋さんに何回も試着したのと同じサイズですかって英語で聞いたのに、「ウンウン」って試着した靴と別のサイズ持ってきよったんですよ。伝わらなかったんですよ。その店員さんと大阪のアイドルが好きやみたいな話をして、でも靴のサイズ違ってたみたいな……。なんやねん!(笑)
りん:それは純粋にその人が英語が下手な説あるよね(笑)。
井上:でも、普通の靴屋で英語喋るっていう経験に僕は感動やった。ただ、靴のサイズは違うもん買った。
りん:それは靴のサイズを間違えただけなんじゃない?だって大阪のアイドルが好きだって話が英語でできたのに、靴のサイズが聞き取れないってことはないでしょ。
井上:僕、なんかようわからんかったからずっとSame size?って聞き続けてん。なんか違うのが来よって。Yes,Yesとか言って。
りん:それは適当だな(笑)。