高校卒業以上就職未満の人たちへ
【考えるための不思議な時間】
新型コロナ感染拡大の影響で多くの学生は4月からの学生生活をスタートできない状況となっている。様々な心配事がそれぞれの胸の中を去来していることと思う。したいことができない。しなければならないこともできない。
しかし、働いている人とは立場が違う学生達にとっては、今ここで不思議な時間が与えられたと捉えることもできる。普段あまり考えなかったことをちょっとだけ深堀して考えてみる時間を持つことをお勧めしたい。
例えばアルバイトについて。
【アルバイトという活動】
高等学校まではアルバイトを禁止している学校が多かったが、大学や専門学校等でアルバイトを禁止しているところはほとんどない。
新入生は、生活が落ち着いたらアルバイトを始めようと思っている人もいるだろうし、家計を助けるためにすぐにでも始めたいと思っている人も多いかもしれない。
また、新2年生以上の人は、今まで続けていたアルバイトを今後も続けようと思っている人や、もう少し収入を増やすために新しいアルバイト先を探している人もいるだろう。
多くの学生にとってアルバイトは、様々な意味で重要な活動となっている。
そのアルバイト先であるが、学生アルバイトの業種で多いのは飲食系、小売系、そして、教育系等だろう。バイト探しをしていて最初に目に付くのがこれらの職種ではないだろうか。
特に多いのが飲食系や小売り系で、面接試験を受けて合格したら少しの研修を経て先輩に教わりながら実務に就くことも多いのではないだろうか。簡単な気持ちでアルバイトを始め働き続けていくうちに少しずつ難しい仕事を任されるようになり、気が付いたらバイトリーダーになっていたと言う話も聞く。
【アルバイトと学生生活と】
このアルバイトが学生生活に与える影響は決して少なくない。例えば授業で居眠りする学生は多い。その原因はいろいろあり学生のみにその要因を押し付けるのは正しくない。
学生自身が何を学びたいと考えて入学したのかと言うことも重要なことであるし、授業自体が学生の欲求や実態に即したものを提供できているのかと言うことも考慮しなければならない。年齢的に、睡眠時間が必要な成長段階であることも確かである。様々な事情でアルバイトに時間を費やさざるを得ない学生も多い。
そして、疲れた体を癒そうとするのが授業時間なのである。自分の意思とは正反対に気付いたら寝てしまっていたということもあるだろう。
ところで、例えば大学の学費はどれぐらいなのだろう。一年間の授業料は、国立大535,800円、公立大学538,633円、私立大文系781,003円、私立大理系1,101,854円(文部科学省「平成30年度学生納付金調査」参照)で、4年制は×4年、短大は×2年である。授業料以外にも入学金や施設設備費等が必要であり、合計するとかなりの金額である。
専門学校の授業料も大学と同等かそれ以上の場合もある。
だからこそ親の負担を少しでも減らそうとアルバイトをして家計を支えている学生や、自分に必要な物だけは自分で稼いで買いたいと考えている学生が多い。事情を抱えながら必死でやりくりしている学生の姿を目にして胸が痛くなることもある。
【考えて気付くこと】
アルバイトの現場は世の中の動きに敏感に反応しているので、急にシフトが減ったり仕事自体がなくなったりして厳しくなって来ていることだろう。バイトがなかったりバイトの時間が減ったり、学校に登校したくてもできない現状の中、一度立ち止まってアルバイトについて考えてみよう。
今まで何気なくしていたアルバイトについてじっくり考えることが、自分を見つめたり、社会の仕組みについて考えたりする機会になるかもしれない。すぐに明快な答えを見つけることは難しいかもしれないが。
普通にバイトしながら授業を受けていた時、どちらに重点を置いていたか。
学生が成長したり様々なスキルを獲得したりするチャンスは、授業だけでなく多くの体験や経験を通して与えられるが、まずは学校は学ぶ場所である。学生自らの主体的な学びによって能力を高めていくことができる。授業がその背中を押してくれることもある。
その授業に集中していなかったとしたら、そういう自分をもう一人の自分はどう思うか。自分達が支払った授業料で成り立っている学校の授業に集中していなかったら、それは非常に残念なことではないか。受け身で過ごしていたのならなぜそうするのか。受け身で学んでいては得ることは少ない。必死でアルバイトしていた時の自分の生活、心や体の状態を一度振り返ってみよう。
また、そのバイトが自分にとって収入以外でどういう意味を持つのか考えてみよう。収入は必要であるが、それだけなのかそれ以外の得ることがあるのか。学びとバイトを天秤にかけたときにバランスはどうなっていたか。その仕事は時間的にも質的にも大きなものを背負わされていなかったか。示されている労働の条件は誰にとって有利なのか等、疑問を持ちそのことについて考えてみると少しずつ自分と世の中が見えてくる。
もし時間があるのなら考えてみよう。
考える習慣を身に付けてみよう。
きっと気付きが増えていく。
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