思い出は、そっとふれずに そのままに
アルバムに残っている、幼稚園のクラス写真。大きな目の彼女は クラスの中でもひときわ目立っています。10年後、15歳の時に見かけた時も 大きなキラキラした目は昔と変わらず、見てすぐにわわかりました。
5才から、15才までの10年間は、見た目には 大きく変化しますが、案外その人の特徴は変わらないものです。彼女はエクボもあって、なおさら可愛い印象がありました。当時、エクボはかわいい子の代名詞。
私は、見た瞬間に、彼女だと気づくのですが、声をかけるのは 気後れします。彼女が私のことを覚えているはずはありませんから。私の中の彼女も、うっすらと一緒に遊んだ記憶だけなのだし。
懐かしいね~と、昔を共有できるはずもなく、”あなた、だあれ?”と、大きな目で見つめられても、困ってしまいますし。
遠い昔、一時 一緒に遊んだ、かすかな記憶。彼女を駅で見かけた高校生の時でさえ、もう40年以上も前のことになってしまいました。彼女にとって、私との時間は、 記憶の奥の奥に埋もれて、多分一生思い出すこともないでしょう。
そんな 淡い無数の記憶。思い出されることもない出来事。
今は、私の記憶の中にだけ、そっとそのままに。