今日は憲法記念日
登場モノ
徳利:徳利の妖精
おちょこ:おちょこの妖精
御神酒様:お神酒の妖精
その他妖精
とっくりとおちょこ夫妻は食器棚の片隅で肩寄せ合って生きてきた。信心深いモノたちで、
御神酒様、今日も一日ありがとうございました。明日もよろしく、
御神酒様もあんまり無理しないでねと、朝晩、御神酒様に祈りを忘れなかった。
けれども二人には最近悩みがあった。それはモノとしての出番がすっかり遠のいたからだった。
私たちはまだ、水漏れなんかしないし贅沢も言わないからどんなモノが入ってきても仕事をするのにねぇと
夫婦は話していた。それでもとっくりには花を入れる仕事も時折あった。
ある日、台所で花を飾る仕事中にとっくりは、主が、
おちょこは使い道がないから、もう、捨ててしまおうと話す声を聞いた。
その声を聞いてとっくりは長年連れ添ったおちょこと別れるのが悲しくって泣いた。
それを見ていた花もとっくりに同情して涙を流した。
主はその花の様子を見て、
アラ、何だか花の元気がないわね。水でも取り換えようと思った。
花はこの事態を何とかしてあげようと、その香りの言葉で、御神酒様におちょこの話をした。
御神酒様は信心深いとっくり夫婦を助けようととっくりに知恵を授けた。
それは自分たちは計量カップ代わりにもなりますと主に伝えなさいとのお告げだった。
とっくりはさっそく、主に語り掛けたけれど、その言葉は通じるハズも無かった。
御神酒様は最初から自分ですればよかったと思いつつ、
主に花を長持ちさせたければ、おちょこ1杯の酒を入れる手もありますよと念力をを送った。
花の水を変えていた主はそのふとした思い付きに飛びついておちょこを取り出した。
そしてとっくりに水とおちょこ一杯のお神酒を入れて花を挿した。
けれども花はすでに寿命だったらしく、御神酒の力を得ることなく枯れてしまった。
主はな~んだ、とは思ったけれど、そう言えば、おちょこってどのくらいの分量なのかしら?最近は見ないけれど、
少し前までは料理のレシピにおちょこ一杯って表現があったわね。
と思い出し、おちょこをに水を入れてみてそれが18ccだと知った。
知ってみると、料理に使いたくなり、
とっくり1本の出汁におちょこ1杯の醤油を入れさらにステック砂糖を一本入れて見ると
ザル蕎麦のツユにピッタリの味付けに仕上がった。
そうなるとおちょこも捨てがたく、主はとっくりとおちょこを台所に置いて料理に使うようになった。
とっくりとおちょこは別れ別れにならなくって済んだことをお神酒様に感謝した。
お神酒様はとっくりとおちょこがまた自由と平和を手に入れ台所には文化を残せたことをたいそう喜び、
簡単に捨てて良いモノなどこの世にはないと厳しい表情をされた。