見出し画像

今日はレトルトカレーの日

登場モノ

一升釜子:一升炊きの妖精釜野釜雄様

釜雄さん、先日はお便りありがとう。とっても嬉しかったです。釜雄さんと毛玉婆さんの暮らしぶりが微笑ましく、少し羨ましかった。こちらは月に10日とは言え、野外作業ですし、明るい話はほとんどありません。

私たちは黙ってお仕事をするばっかりで、おしゃべり一つしません。私たちって、まぁ、無口で人見知りをするたちだけれど、特にここの空気はピンっと張り詰めた感じで、3台とも挨拶もそこそこにモクモクしています。

モノの私たちだって、仕事が終われば帰る家があるのに、この列に並ぶ者たちには帰る家もないとか。今日などは小雪が降ってきているのに者たちはどうするのでしょうね。それを考えると心が痛みます。

しかも外は悪い病気が流行っていて、私たちの出番も減っているのに者たちはどうしのいでいるのでしょう。顔なじみの者の顔を見るとほっとして、ああ、お元気そうで何よりだと思いますが、者は私たちなんか目に入りませんから気持ちを伝えることは出来ません。

だから私はお米をふっくら、ふっくら炊くようにしています。今日はおかずがカレーで、そんなに肉も入っていないのに者たちは大喜び。カレーならば、ご飯は少し柔らかすぎたかな?と心配でしたけど者たちには笑顔がありました。

私たちに気が付いてくれなくとも者が者同士で笑っている姿を見るだけで心が明るくなります。なんだかんだ言って私たちは者の喜ぶ姿を見なければ自分が死んだように感じるんだから、厄介ですね。

私たちが仕事できない分、今日はレトルトカレーも配られました。でも次のお仕事まで1週間以上もあるのに、とても足りる量とは思えません。それでも者たちは深々と頭を下げて彼らを大事そうにしまっていきました。私はその後姿を見て、どうぞ、どうぞ、お元気でと声をかけるしかできないので涙がこぼれます。

でも、私は一度捨てられて拾われた身。再びお役に立てるようになったのだから、いつまでも泣いていません。私は私の仕事を精一杯するだけです。ご飯を美味しく炊くだけです。ああ、釜雄さん、暗い話ばかりでごめんなさい。どうか私を忘れないで。

また毛玉婆さんとの可笑しい話を聞かせてください。それだけが心の慰めです。釜雄さん、またお手紙下さい。忘れず、忘れず、下さいね。まだ、寒い日が続くようだからお体に気をつけて。

一升釜子より



大変貧乏しております。よろしかったらいくらか下さい。新しい物語の主人公を購入します。最後まで美味しく頂きます!!