今日図書館記念日
登場モノ
紙魚しおり:しおりの妖精
帳面ノート君:ノートの妖精
小引き出しの中には皆さんおなじみの愚痴の多い三人組が暮らしていますが、
他にも紙魚しおり(しみしおり)さんが、ひっそりと横たわっています。
帳面ノート(ちょうめんのーと)君としおりさんは親戚筋とあって時々おしゃべりしています。
とは言ってもしおりさんは毎回おんなじ話をしているのですが…
ノート君:しおりさん、久しぶり、元気?ごめんよ、このところ、旅に出たりして、忙しかったんでさ。
しおりさん:ああ、ノート君、旅に出ていたんだ。わたしの事は気にしてくれなくって大丈夫。
だって、もう、何処に行ったってなんにも希望なんかないんだから。
ノート君:ごめんよ、ごめんよ、僕がしおりさんを誘えばよかったんだね。
浮かれていて自分の事しか考えていなかった。
しおりさん:ノートはまだ若いし、その余白だってたっぷりあるんだもの。
楽しい出来事をたっくさん書けるだろ?年寄りを気にしなくていいんだよ。
わたしはさ、幼いころに父母が離婚しちゃったでしょ。
ノート君:うんうん、上下一組の絆は固いと思っていたけど、どうした事か、
お父さんとお母さんはばらばらになってしまったんだったね。
苦労したね。
しおりさん:そう、それでも上のお姉さんとは出会えて、お姉さんがいなかったらわたしはとっくの昔に
死んでいたかも。
ノート君:お姉さんはしおりさんの分まで働いてくれたんだったよね。
しおりさん:うんうん、姉さんは毎日、毎日、あっちこっちのページに挟まれて、
こき使われたんだ。そうして体を壊して死んでしまったんだ。
ノート君:それ以来、しおりさんは一人なんだ…
しおりさん:そう、だから一人にも慣れているから。
それにこの不況で仕事もなくなってしまって。
もう何の楽しみもないね。
ノート君:しおりさん、そんな事ないよ。確かに電子の時代なんて言われているけどさ、
ここの主は機械音痴で貧乏じゃないか。
今は忘れているだけでもしおりさんはまた陽の目を見るさ。
だって読書は無料の娯楽だもの。