今日はサイクリングの日
登場モノ
前輪太:チャリの妖精、前輪
後リンダ:チャリの妖精、後輪
その他妖精
その日毛玉婆は一人カラオケで大いに盛り上がり、興奮冷めやらぬ勢いで帰りのバスに乗った。
それを見ていた前輪太(ぜんりんふとし)はゴムが弾けるほど大笑いし、
後リンダ(こうりんだ)はチャリなしの毛玉婆を心配した。
後リンダ:ああ、毛玉婆様、私たちをお忘れになってお帰りになっちゃうなんて、お困りになるでしょうに。
前輪太:僕たち、相棒を忘れるなんて、ボケちゃったかね。ヤバいね。
後リンダ:まぁ、ボケてしまわれたら、自転車にも乗れなくなるのかしら?
前輪太:それがねぇ、そうでもないらしいよ。体を動かす記憶は小脳で覚えるから忘れにくいんだって。
前リンダ:でも、私たちの存在を忘れてしまったら、体は乗ることを覚えていても乗れないわね。
前輪太:君、君って意地悪だね。
前リンダ:まぁ、私ったらそんなつもりはなかったの…どうして…
前輪太:僕たち、毛玉婆からは過激な労働を強いられているし、生活は自転車操業だろ?
君は知らずにストレスを溜めてしまっているのかも。
ああ、それもこれも不甲斐ない僕のせいさ。ごめんよ、そうだ!!鬼の居ぬ間に洗濯しようじゃないか。
僕ら二人でサイクリングに出かけよう。
輪リンダ:でも、婆様は私たちの事に気が付いて、戻って来られるかもしれないわ。
出かけるなんて出来ない。
前輪太:大丈夫、気が付いたからって、その日に戻ってくるようなマメな人じゃないし、
戻って来るとしたら1時間はかかるじゃないか。明日をよく走るためにも僕らには息抜きが必要だよ。
こうして前輪太と後リンダは「サイクリング、サイクリング、ヤフー、ヤフー♬」と歌を歌いながら
つかの間のサイクリングを楽しんだ。
翌日、自転車を忘れた事に気が付いた毛玉婆は大急ぎでカラオケ屋に行き、
チャリが盗まれていないことに安堵した。
そしていつもはキツイ帰りの上り坂がちょっぴり楽に感じたのを喜びながら家路についた。