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今日は風呂敷の日
登場モノ
風呂敷太郎:風呂敷の妖精
毛糸野パンツ子:毛糸のパンツの妖精
その他妖精
毛玉婆がとうとう擦り切れて道で行き倒れ、そのまま病院へ担ぎ込まれた。毛玉婆はこんな日もあろうかと下着を風呂敷に包んで目の付くところに置いてあったので、風呂敷太郎と毛糸パンツ子(けいとぱんつね)は婆の所へ行くことになった。
ところがパンツ子は自分の行く末を心配して泣き出した。太郎はその涙で濡れてきた。
太郎さん、私たちこれから、どうなってしまいますか?ああ、太郎さんは婆が死んでもまた、新しいご主人様に使ってもらえますね。心配いりませんね。
でも私は毛玉婆の毛糸のパンツです。もう、誰のところにも行けやしません。捨てられるだけです。まだまだ、ゴムだって、ピチピチなのに、あの、婆の履いていたモノだってだけで、臭いよねとか悪口言われて、きっと捨てられます。
太郎は困ってしまって、そして言った。
パンツ子さんよ。まだ起こってもいない事を心配しちゃあ、なんないね。どう転ぶかは分らんでしょ?私はね、長いこと生きているから色々見てきているんだが、一度捨てられたモノが返り咲いたなんて話はうんざりするほどあるよ。
あれは、7年位前だったか、婆が、豚柄のトレーナーをリサイクルショップへ持ち込んだのさ。豚さんは婆が20年も着てたもんだから、もう穴が開いてたんだよ。けどね、生地なんかはしっかりしてた。
だから、豚さんも、わたしゃあ、まだまだ働けたのにって、涙を流していたんだけれど、そりゃあ、穴が開いてたから、諦めてショップへ行ったさ。案の定、これはお引き取りできませんって、断られてね、婆は癇癪起こして路上にポイ捨て。
だけど、その豚さん、今はどうしていると思う?ちゃっかり生きているんだな。その後、豚さんは服の神様に拾われてね、服の目利きのところへ届けられたんだ。それで、ビンテージ感が格好いいって話になってさ、今じゃあ、お金持ちの家のお嬢さんに大事にされて、よい匂いの洗剤で洗ってもらっているそうだよ。
お嬢さんがその服を着ているところを婆は見てね、豚さんは婆に自分が拾われたと、嬉しそうに話しかけた。婆は恐ろしい形相になって、私の服~とヒステリーを起こしたけれど、お嬢さんは何にも気が付かずに車に乗って行ってしまったんだ。
あん時の婆の顔、今でもモノたちの笑い種になっているよ。婆は馬鹿だねってさ。
モノの一生は、最後の最後まで分からない。それがモノの定めじゃないか。本人がしゃきっとしてなけりゃあ、ゴミにも見えるが、あんた、まだまだ、イケてると思うよ。と、本心とも慰めともつかない話をした。
毛糸パンツ子は少し心が落ち着いたらしく、ケラケラと明るく笑った。
太郎は大風呂敷を広げすぎたかな?婆、まだ死んでないのに少しも心配されないんだなと、少し、婆を気の毒に感じた。
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