今日は地下鉄記念日

素子は相変わらず耳を押さえてうずくまっている。介抱している米子。

鍵男∶なるほど、米子さんと素子さんはメイラード反応を起こしたくなかったんですね。

あなたたちは本当は主のためになることをしたいんじゃないんですか？でも今はまだその覚悟ができていないだけ。わかった僕についてきて。

鍵男はそう言うと素早く素子を小脇に抱えた。三人は門脈から肝臓にいたり、再度血流に乗った。

米子∶カリカリベーコン、トロトログラタン、ジューシーハンバーグ、香ばしパンやクッキー、喜ばれるモノになるんだってみんな張り切って炒められたり、揚げられたりしたわねぇ…

素子∶グフフッ…米子さんはアタシだって洋食路線で行きたいわよ！！って、へそ曲げて、中華料理店から逃げ出しましたっけ。

米子∶チゲーます。アタシはねぇ、マヨネーズだかメイラードだか知らないけどそんな余計なことされなくっても美味しいのよ！！

素子∶米子さんはひねくれて行き場を失っちゃいましたけど、案外、正解かも。

だって、1925年、日本初の地下鉄である銀座線の工事が始まった頃から洋食屋は爆発的に増加し、

アゲアゲきつね色になったモノたちは愛され続けてきたけれど、老化物質を撒き散らして主に悪さしたって、今や犯罪者扱い…

米子∶それも違うわよ。彼らはより一層、美味しく食べてもらいたかっただけ。節操なく食べてさ、シミ、シワ、骨粗鬆症って騒いでいる奴らが悪いの！！

素子∶それが事実としたって汚名は晴らせやしません。それにしても凄まじい流れ…ああ、米子さんのお仲間も鍵男さんのお仲間も流れています。みんな、どこへ行くのやら。

米子∶ちょっとぉ、どこまで行くのよ。

と、米子が文句を言い始めたところで鍵男はずらりと並んでいる細胞の家の一軒の前で止まった。

つづく

糖化は「体のコゲ」とも呼ばれています。糖化は、食事などから摂った余分な糖質が体内のたんぱく質などと結びついて、細胞などを劣化させる現象。

糖化は、発見した人の名前を取ってメイラード反応とも呼ばれます。

実はホットケーキを作るときに、こんがりと焼けて褐色になっていくのも糖化の一例。ホットケーキに含まれる「砂糖」が、卵や牛乳などの「たんぱく質」と結びついて変性しているのです。

これが進むと肌のシワやくすみ、シミなどとなって現れます。それだけでなく、糖化によってつくられるAGE（糖化最終生成物）は内臓をはじめとする体内組織に作用して、多くの病気の原因となることが知られています。

さらには動脈硬化や白内障、アルツハイマーとの関連も指摘されています。