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コロコロコミックの『ウソツキ!ゴクオーくん』という作品に出会えて本当によかった(総評)

見出し画像は真最終回「微笑む閻魔大王」より。今回は総評なので案の定全て読んだ前提の上で書いております。週刊とかで追っててまだ見てない人には「ここからもずっと面白いので単行本を全巻購入しても損はしないぞ」とだけは伝えておきます。心から最高とウソなしで勧めることができる漫画でございます。だから買いなされ買いなされ完結してもなお重版出来されてる(てんとう虫コミックスだと異例と言われる事例だ!)今作を買いなされ電子書籍も勿論あるから買いなされ常に読めるようにしなされ…


・まえおき

2022年3月15日よりコロコロオンラインにて新設されたwebコミック「週刊コロコロコミック」。その中に連載されているオリジナル作品の『ぷにるはかわいいスライム』の話題もあって周囲に存在が知れ渡り、さらに同時に始まった人気あったレジェンド過去作もリバイバル連載されてる中に『ぷにる』と同じ木曜日に配信される作品……『ウソツキ!ゴクオーくん』があった。

この木曜日に現在コロコロ本誌にても最もアツいと噂される『ブラックチャンネル』配信も加えたの、たぶん一番の売れ筋を公開し本誌購読や単行本購入へと誘導する確信犯だろう。みんなじわじわとブラック&さとくんの人外人間コンビに攻略されつつある。ぷにる&コタローも合わせて毎週木曜日はコロコロ激アツ人外人間関係性デー!(でも誰かたまには同じく木曜日にやってる『紳士ヒーローうんこるめん』についても思い出してください…)

Twitterでのフォロワーさんがハマってたのもあって前から興味はあり、機会があれば見ようかなと思っていたが週刊配信にてその機会が巡ってきたのだ。そして読んでみたら……自身のコロコロコミックの概念を覆すほどに“ヤバい”作品だった。いや週刊配信のリンク先に「もう全国の小学生は気付き始めてます。『このまんが、ヤバい!面白い!』ウソじゃないですよ…!?」とあるけど……ここまでだとは思わなかったよ!!さらに既に完走した方々は「最終回までずっと面白いぞ」と言ってたが……全て見てきた今なら分かる、これもウソじゃなかった。ということで自分は週刊配信を待てずに電子書籍で単行本を買い、そして読む度にあまりのすごさに感動し、その気持ちをなんとしてでも形に残したいと感想記事をnoteに書いたのだ。

これ読んで単行本購入を決意した人を見かけて嬉しい。やっぱり作者さんに印税とか入る形で貢献したいもん。

ユーリィ編サタン編6年生突入(と装ったナナシノ編)ネクスト編魔男編&最終章手前、そして最終回と書き綴り、そして今回は今作全般の総評へとなります。まぁ当然というか既に見た人向けな部分が多々あると思いますので……それでは始めていきましょう!


・初志貫徹、10年ずっとブレずに描き続けた多種多様なウソとそれにより構築された生きたキャラクター達〜

まずはやはりこれに尽きる。10年と長期に渡って連載した今作だが徹底して「日常→ウソ発生→暴いて舌を抜く→強制自白での反省からのドラマ」の一話完結な構造を一貫して描き続けていた。そしてその話がどれもこれも面白い。個性豊かな人から発せられる色とりどりのウソ……それをどう攻略するか、そしてトリックを暴いた際に小さく描かれた要因を見返しちゃんと記していたことへ気付くアハ体験じみた楽しみもあった。

(犯人がコマから突き出た箱に頭をぶつけるのが漫画だからこそできる表現である)

97話「神の後継者、復活!?」より。泥箱にひっついた手形があきらかにネク助の手と違うことを証明する場面……だがよく見ると既に白くトーンを切り取られた部分が。それの正体が判明した後に「えっそうなん?(読み返す)あ、ホンマや!」となるのが実に気持ちいいこと…そしてナナシノ編の章を跨がれて挿入された2年越しの伏線回収はそれの真骨頂であったね……

長編推理ものとして長き物語を構成するのも大変だが、毎回毎回別の話を思いつかねばならないのもすごく大変である。それを10年ずっと描き続けたのは本当にすごい。そしてそんな推理ものにおいてメインに扱うのは小学生が起こす刑事事件に満たないやらかし……だからこそ普通の人間だろうとついやってしまうような生々しい事件になるのだ。週刊配信で16話の雨地くんの卑屈な逃避や17話のリヨちゃん&みぃちゃんの水面下にて発生する親友マウント、22話の梶野くんの好きこそそうありきで後戻りできなくなった恐怖とか公開された際に多数の共感の声を観測できたように……自分が一番効いたのは82話「お調子者の軽いコトバ」での茶刈くんのやらかしだ。あれはかつての自分がありありと浮かんできて本当に泣きそうになった……

(6年生編開始時に尾呼日出くんにハメられ濡れ衣を着せられた彼が今度はやらかす側に……こういう罪の到達点へのステップの軽さもまた今作の魅力である)

自分も小学生の頃にクラス内でうまく馴染めなかったのだが、そこの中でもなんとかして調子よくのらりくらり対応する術を見つけて自分なりのクラス内でのポジションを掴んできた……割とうまくいってたのでそれこそ茶刈くんみたいに人間関係において妙な自信があったくらいだ、そして彼みたいに調子に乗りすぎて………それこそこの話を読んだ際に「こいつはオラだ!」と共感性羞恥で泣き叫びそうになったくらいだ。上っ面だけじゃなくて心からの誠意ってもんが必要なんだよな……

とまあ様々な人間誰もがあるあるなやらかしをするが基本的には小学生がやること、刑事事件じゃないので加害者側も逮捕で退場とならず、そこからも先の話が存在し大抵は被害者側と打ち解け合うものだ。これのおかげで読了後に心が晴れやかになる爽快感も無理なく付与される(だからこそ唯一の例外たる115話が、ね)…そしてその親睦深まった関係は一話だけに留まらず、それ以降も些細な描写でも一貫し続けるのだ。ここの徹底っぷりがマジですごい。定期的に言及してるが今作が掲載されていた月刊コロコロコミックはメイン読者が趣味の移り変わり早い&購入できる号も親に左右されがちで話が歯抜けななりやすい小学生男子を想定している(実際に「サタンが出てくるとこまで読んでた」など検索でヒットしたりした)そんな読者の入れ替わり激しい雑誌にて一話完結の面白さは当然必須として、連綿に紡がれる積み重ねた描写をウリにしてるのは自分の中のコロコロの概念を覆すほどに衝撃的だった……

37話「エリートとおちこぼれ、友情と勉強のズレ!?」より。成績低かったからって努力すればよくなれる例えとして江里戸くんの口から生家くんが出てくる……8話のウソテスト作戦で知り合った仲である彼だ。かつて30点ばかりだった生家くんも今じゃ70点くらい取れるように……

85話「真のライバルと競い合え!!」より。足並くんの徒競走の特訓をサポートする味本くん……彼といえば66話で食べ物の好き嫌いの有無で足並くんを見下してた過去があるも、自身にも隠してた苦手な食材をゴクオーくんに明かされ反省していた。そんな彼らも今じゃちゃんと打ち解けあってるよと文章で説明せずとも伝えられる今作の強みよ。

こういう小さな一コマなレベルでも感じ取れる物語の、キャラクターの繋がり……それを10年ずっと丁寧に描き続け維持してきたからこそメイン以外のサブキャラも強いキャラクター性が生まれ、彼ら含む5年2組や6年2組としての“絆”になり56話や63話に116話そしてウソ&真最終回などの各組の集大成が素晴らしい感動を呼び起こすのだ。作者が完結記念インタビューにて「『こいつ何のためにいるんだろ?』みたいな悲しい気持ちにさせるキャラを作らない」と言及してるのに自分は涙を流したほどだ。これを読んでる方々の中にも(天子ちゃん番崎くんという主要キャラは殿堂入りとして)お気に入りの生徒がいるのではないだろうか……ちなみに俺は三白彩菜

(総評なんだからおもいっきし語らせてちょーだい)

そんな彼女がウソついて舌を抜かれる24話「乙女のウソは苦い味」より。調理実習でカレー作るのだが、地元で愛される老舗の定食屋の娘である三白さんはやけに張り切って……
まず名前が料理屋絡みでミシュランからもじったのだろう三白にしてそれなら三白眼キャラにするかという発想がすごいし、エプロンにフリルついてるとか可愛く見せる努力を感じるし、家の定食屋に対して古臭いみたいなコンプレックス抱いてるのとか、それ気にせずうまいと褒めてくれたクラスメイトの北星和竹くんに惚れちゃうのとか、その北星くんへの妄想が小学生らしい微笑ましい類のだし(北星くんがそういう好意に鈍感なのも加速要素)彼と普通に会話してるだけの盛杉さんへの嫉妬も拗らせすぎるし、トドメに舌抜かれる際に「男子のクセに女子にこんなマネしていいの!?」とか言っちゃう(地獄の裁判官にそんな老若男女の差が通用するワケない)あたり等身大の女子小学生の投影度すさまじくて最高なんすよね。6年になって17巻にて互いに別のクラスになってしまったと判明した際は少し泣きそうになったし25巻にて加筆した卒業式のやりとりで見たいもん見れたと感動したしエイプリルフール企画読者質問コーナーでの作者の返答で「中学になって北星は店に一人で食べに来たりする」とあって俺はあまりの衝撃に吹っ飛んだよ。

とまぁこうは言ったが、どうしても5年2組&6年2組内にてメイン回を描かれなかったキャラクターがいたのも事実っちゃあ事実である。贅沢な要望だがその子たちが活躍する話も見たかったなぁ〜とも思ったりしてしまう。例えば5年2組で唯一メイン回がなかった流清美ちゃん(56話の地獄学級会の目撃者だったなと改めて見たら貴重な天ちゃん呼びする子だった)とか……同じくメイン回が無かった6年2組の和花椿(のどやか つばき)ちゃんはエイプリルフール企画の返答にて「実家のパン屋が迷惑系ユーチューバーに襲撃される話とか考えてた」と言及されてたし。

(112話「ウソは夢の始まり!」より。背の高いニ子利くんと同じコマに写るのもあっておまえら小学生っぽくないな…)

個人的には6年2組のワッコこと湧井桜子(クラス替えした65話時点で既に出ていたが本名は20巻表紙あだ名は100回記念にてようやく判明)なる運動神経優秀そうでタメイキさんじみた大人びた雰囲気を持つ子はメイン回あったら男女問わず人気出ただろうなぁと推測している。

(78話「ケンカ勃発!友情の危機!?」より。自分はちょうど17話が配信された頃に読んだのでタイムリーすぎたし、あの時いなかったゆめちゃんがこれ言うのはさ……エイプリルフール企画のイラストリクエストのと合わせるとさ………)

描けなかった話といえばメイン回は無いものの天子ちゃんの親友として印象強い尼里ゆめちゃん。実はエイプリルフール企画の返答で判明したことだが「5年2組で男子と女子がケンカし分断されるが、仲を戻したいと恵比寿とゆめがゴクオーくん天子ちゃんと協力して皆を仲裁し二人の仲が深まる」という話を考えてたそうだ。しかしそれはボツになり……(代わりに入ったのが41話の恵比寿くん回だろうか)そして完結後にこれまたエイプリルフール企画にて衝撃の返答があった。高校生になってからなにやら違う文章を書いたのを修正液で消した上からふたりはもっと仲良くなるとあって……大人っぽいと見せかけて家では大学生のお兄ちゃん相手に妹してたりとゆめちゃん本編外でなんかすごいことなってません!?

とまあこういう形で毎年エイプリルフールにて読者質問返答&イラストリクエストコーナーをTwitterアカウントで開催しており、本編にて描ききれなかった部分にまさかの補填される場合もあったりする。改めて作者がキャラクターを大切にしてるんだなと再確認する。自分も来年あたりなんらかの質問をしようかなと思ってる次第だ……(追記)流石にカシバトルが週刊に移行して忙しくなったから無かったね……でも見たいものいっぱい見れたし…


・人ならざる存在が人間に出会い、そして変わってゆくドラマの完成度の高さ〜

続いてはこれ。人間同士の諍いがあれば、それを第三者として覗き込むポジション…いわば人外枠が織り成す縦軸の物語も今作の魅力だ。ユーリィにサタンにナナシノにネクスト、その流れをあえてズラした人間の魔男そして最後に待ち受ける元人間の邪仏……各々が現世の人間に抱えるポリシーを持ち、そのことごとくが人間でない立ち位置故に培われた特異的な信条……それらもまた章の終盤にて判明する、彼ら人ならざる者だからこそ経験してしまった悲哀などが含まれていたのだった。

19話「校内新聞の真実はどれだ!」にて矢木増スギルの低俗なゴシップ記事を喜んでた輩どもが義憤へと返そうとする掌に己の器を知れと釘をぶっ刺してくるユーリィ。児童会仲間にて真に善なる心を持つ藤堂さんを助けようとしたのは事実だし、こういう所でも後に明かされる彼の抱えてた哀しみと絶望の果てに存在する信念が見え隠れする……

54話「『本』気のウソを暴け!!」より。わざわざ番崎くんの趣向に合わせて本を貸してた読書家の野秋くんだったがそんな気持ちも雑に扱われ全く読まぬ内に返されてしまい…それでも本が無事ならいいかと済ますもルシオに復讐心を煽られ、奴に冤罪ふっかけるために本を愛する彼がしてはいけない行為をするまでに追い込まれてしまった……想いを踏み躙られる非道を受けたならば憎み恨むのが道理、自分自身がそうなってしまったように

それぞれの名を冠した長編として感想に書いてきたように、彼らが人間に対し抱く気持ちが現世の人間たちに触れ、描かれる人間の可能性と共に抱え込んでいた拗らせが溶けていき辿り着くラストはまさに感動そのものであり………そしてそれらは日常回で善悪共に併せ持つ人間というのを常に描かれたからこその説得力を持つものだった。

97話「神の後継者、復活!?」より。あれだけ人間のことを感情を採取する素材くらいにしか捉えてなかったネクストが記憶喪失になりネク助として6年2組で過ごした日々…ゴクオーが考えた一か八かの賭けだし記憶を完全に取り戻した際に捨て去ろうとした想い出、しかしそれは叶わぬ野望に囚われてしまった哀れな存在が既に与えられていた、自分自身を形作る本当に大切なものだった……(作者曰く後に彼は同じ奇跡の塊であるコトワリと共に言霊地獄で働いてるそうな。よかったな…)

真最終回「微笑む閻魔大王」より。現世に自分の居場所が無いことを憎み自分だけがオモシロイ世界を欲した魔男、そんな彼も現世で生きる人間ダンとしてこれから様々な人間と交流し、みんなとシェアし合うオモシロイ世界がさらに広がっていくだろう……(あと元の飼い主とはぐれたゾウクジャクも預かったりしてる。同じハザマで過ごしたどうし仲良くしいや…)

そしてそんな人の枠を超えた存在達の中で最も変わったのと言えば我らが主人公ゴクオーくんであろう。全話見た今となってはもはや人類史の分岐点として未来永劫に語り継がれてもおかしくないまでになってしまった“アレ”こと“おもしれーウソ”と出会い、彼もそこから劇的に変わっていった……

(まだ天子ちゃんにすら正体がバレてない貴重な時代)

2話「スポーツマンの秘密!?」より。ウソ暴きをした後に戸屋くんも結果的に救われ和気あいあいになる中でオレっちウソ以外は興味ないんでねとクールに去る地獄王。今になると考えられねェな初代…

14話「天校生ユーリィのたくらみ」より。舌を抜かれたものの己が過ちを悔いて本当に大切なものに気付けた大荒輪くん、皆を騙した罪悪感を味わい二度と過ちを犯したくないと叫ぶ江里戸くんと生家くん、ヒッチーを傷つけたくないと我慢してたノンコ……ウソをつく理由が悪ばかりでなく、ウソをついた後もやり直せると知った閻魔大王。そして現世の人間がつくウソがどういうものかを教えてくれた彼女が自身の悲しみを圧し殺すウソをつく……自分がウソ暴きに苦戦してしまったからこんなことさせてしまった。もう彼は……現世の人間がウソをつく際に抱く感情を理解するほどに、ウソの先にも気が向いているのだ。

作者も物語が進む内に少しずつ彼も変わっていくことを言及していたが、まさしくこのゴクオーくんの変化こそがそれである。そして現世で気付いたことがあるからこそ、かつてサタンやナナシノの気持ちを推し量らずに強いてしまった過ちを謝ることができたのだ……

76話「500年ぶりの再会!ゴクオーvsナナシノ」より。ナナシノという名前を授けたのに、その行為が及ぼす事象…絆を役職という形で無視してしまったばかりに、その魂がどう思うのだろうかを現世の人間を通じて汲み取れるようになった地獄王は謝罪する。あのまま彼が偶然石豆くんが通う学校に来ていなければどうなっていたのだろうか………

そして88話「ムテキのキセキをうち破れ!!」にて、かつて初代から理不尽な責め立てを受けたと思い込み恨みを抱え続けてたサタンが互いに本当の気持ちを知り合い、自分にも他者を助ける善なる心があると気付き、自身を犠牲にしてでもネクストを封印せんとするくだらん理由で消えゆくのが(こんなんされたら嫌いな小野天子がシケたツラするの含めて)気に食わないとキセキという形で助けたのだ。

人ならざるもの同士でも現世に住まう人間のように時に傷つけ合い、そして現世の人間のように和解し“絆”を紡ぎ合えるのだ。しかし最後に唯一それが成されなかった存在もいる……最後の敵として対峙した元人間である人ならざる者と化した存在・邪仏だ。彼は絆が生まれる可能性も含む人々の衝突なき平坦なる平和な世界を欲するために、自分自身にも存在しただろう“絆”をちぎり捨てた……ゴクオーとジュウオウとのもだ。彼はその積み重ねた絆を信用支配の術への下準備のためのウソと言った………しかし自分は考えてしまう、たとえウソから始まった絆でも、共に過ごし築いた楽しき時間は真実なのではないかと。それがウソならば、なぜ同じように彼のことをウソ臭いと心からは信用してなかったゴクオーは裏切られた後に、罪の有無関わらず舌を抜き本音を吐かせるまで疑り深くなってしまったのか?ジュウオウを失ったからだけなのだろうか?100ページに渡って描かれた真最終回においても、サトリ含めた彼らの抱えてた気持ちの深層にまでは追及されなかった……

(このはしゃぎぶりは本当にウソだったのだろうか…)

……と、こうも不満ありげに言ったが実のところ自分も無理して描かない形のこれでよかったと思ってる。作者曰くここまで描くプランもあったがさらに50Pほど追加になると言ってたくらいだし……彼ら3人の過ごした時代はあまりにも昔すぎて、そしてもう戻らないもの……彼らだけの物語なのだ。けれども自分は少しばかり願う……サトリにも何かしらの形で救いがあってほしいと。地獄に堕ちた罪人の魂が刑罰という形で罪を償うように、我々人間が想像つかぬほどの永き時をかけてでも……

このように振り返ってみた一話完結メインの人間サイドと長編にて綴られる人外サイドそれぞれの物語、双方共に今作を支える要点であったと再認識する。そしてなにより忘れちゃならたい今作の要、ゴクオーくんと……


・「ゴク天はとんでもないぞ」はとんでもないにも程があった


(1話「ウソツキ転校生現る!」の伝説の始まりのやつ。あのとき理不尽に耐えていたからこそ何度も世界は救われた)

もはやとんでもない程にまでなってしまったこの運命の出会いなる「おもしれーウソ」99話の時にも書いたが別冊コロコロの読み切りはアンケート結果が悪いと連載に漕ぎ着けない厳しき世界なのだ(3年前に別冊コロコロにて掲載された某かわいいスライムの読み切りもアンケート結果最下位で編集部にすら忘れ去られていたし…)ここまで見てきた皆さんに問いたい、ここで謎の転校生がこれを見てどう感じたのか判明せずに打ち切り御免になり「そういえばこんな漫画あったな」程度で過ぎ去ってしまうの想像できる?自分はできない

やっぱりこれだよな?な!閻魔大王の側近だったという逸話もある小野篁から名を捩られた、男子児童がメイン読者である月刊コロコロコミックにおいて主人公の隣に並びメインを張るのはまさかのごく普通の女の子という特異的存在・小野天子!当初はイレギュラー的な部分もありやっぱり不安もあったが「今作は人間ドラマを描こうと決めていたので老若男女は必ず出したい」という意気込みで出されたのだ!実際にクラスの女の子が事件起こすとなると解決側が男子2人コンビ(名前からして5話の高村国助くんも候補だったのかな)だとトゲが立っちゃうかもしれないし英断だったと自分は思う…そんな読者に受け入れられるかどうかも賭けめいた部分もあった彼女だが……人間が心の弱さから事件を起こしてしまう今作おいて普通の女の子ながらも決して逆境に負けない真なる心の強さを持ち合わせてるので読者に尊敬の念を与える、今作を語る上で欠かせない魅力的なキャラクターであった。

7話「児童会選挙は信用第一!」より。大荒輪くんが割ってしまった窓ガラスの前でたまたま転んでしまった天子ちゃんが冤罪をふっかけられてしまい、ウソのにおいを嗅ぎ付け犯人探しするゴクオーくんはなんと……天子ちゃんを犯人扱いした!しかしその天子ちゃんはこの表情……なぜなら彼を信じてるから。真犯人をあぶり出す為のウソと信じているから。こんな信頼ありきの激アツな展開を7話からやる。7話やぞ全119話中の7話!?こんな序盤から飛ばして途中で息切れせえへん?→全然しなかった常時フルスロットルで完走しおった…

見た目はどちらかというと素朴でクラス内でもおとなしい性格の子に分類される(面倒見のいい尾局さんが比較的そばにいがちだったのリアルだった)この小野天子、まさしく読者のほぼ100%が幸せになってほしいと願うレベルだろのいい子だった(普通こういう戦闘面においては無力なヒロインって一部の読者から役立たずうんたらで嫌われる場合もあるけどそういう意見は全く見なかった。まぁ仮にいてもサタ公も同じ気持ちだもんな…で片付くが)こんなん言うとアレやがユリ太郎が天使化という歪んだ形で護ろうとした気持ちも分かるもん。でも天子ちゃんは『人間』だからなの。時に現世に蔓延る悪意に負けそうになるのをウソついてでも耐える強さがあるからいいし、それこそ自分に対して悪意を向けた者だろうと以前に受けた恩を忘れてないと助ける優しさもある、まさしく現世で生きる人間だからこそなんだよ。

15話「ありえない!?波乱の課外授業!!」にて険市先生が厳しさ故に自身の掲げたポリシーのせいで生徒の自主性を奪ってしまっていた事実に落胆していたのを天子ちゃんが即興で書き足し……これぞまさしく優しいウソだ。

38話「ウソまみれの大そうじ!」より。6年の鮫照くんが図工室の窓ガラスと花瓶を割ってしまう事件を起こすも「自分が一生懸命作った花瓶を割る訳がない」と本音を混ぜたウソで誤魔化す……天子ちゃんも花瓶作りを頑張ったので自身の作品が壊れる辛さはよく分かっている。だから彼が自分の作品を落としそうになったのを助け、服にペンキついてしまったのもウソで誤魔化して……

そして30話「天使化を阻止せよ!!」において自身の現世で築いた絆を断ち切ってでも救おうとしたユーリィくん…キセキで護りたくても護りきれない天使としての無力さに絶望していたウリエルに「ユーリィくん含むみんなに会えたこの現世での生活こそがキセキで護ってくれた証だよ」と感謝し、大天使の心すら救っていたのだ……後の真最終回にて「これから先、どんなにつらい現実がキミたちをおそっても…必ず天国で応援してる!」と言ったように、彼もまた地獄王のように現世の人間の強さを信じるようになれたのだ……

こんな『人間』と、なによりその人間がつく“おもしれーウソ”と出会ってしまった初代閻魔大王・地獄王。ウソ大好きでしょっちゅうからかってくる男の子、そしてウソが苦手でからかい甲斐ある女の子……何も起きないはずが普通なら何も起きねーよだってコロコロコミックだし。そういう…こう……恋愛に興味持ったらコロコロ卒業なのは有名な話だし、烈&豪や怪盗ジョーカーみたいな続編として後日談で子孫が出てくるのはあるっちゃあるけどそこにまで至る経緯までは深く描かれないものだし、だからこそ ぷにる がコロコロ初のラブコメと銘打たれるものだ。そう、上で語ったように人ならざる者と人間の関係の、今作が最初から最後まで描き続け積み重ねてきた紡ぎ生まれる“絆”の代表なだけであって………

11話「クラスメイトを笑わせろ!」にてクラスの笑わせ師ヒッチーを見たゴクオーくんより。たぶんウソはついてない……

……ん?いやいやいやこれはそうじゃない、そういうのじゃない。でもさ……全て読んだ上で改めて思うのよ、ゴクオーくん天子ちゃんのこと好きすぎじゃね?と。まぁ好きになるのも分かる。だって何万年以上も生きてる自分の人間に対する価値観を変えてくれた偉大なる存在だもん。いやでも、これは現世の人間への尊敬から生じる愛にさらに「友愛」に分類されるものが追加されてるやつよ。フィリアってヤツ。あくまで最高の友としてであって……

44話「完全復活!ユーリィの帰還!!」より。天国へ無断進入した罪で人間化なる天罰を受けたゴクオーくん。その隙を狙うサタ公に葬られそうになるも同じく罰として招聘されたユーリィに助けられたのだ。……無力な自分では天子ちゃんを守ることができない……人間になった彼が抱いた感情、それは嫉妬だった………

………うすうすは勘付いていた。ゴクオーくん、アンタは小学生の女の子に対して友愛を超える“そういう感情”を抱いてへんか?いやこれは流石に他の読者方々と解釈違いになるかもしれないし……なによりゴクオーくん本人からは決してそういう言葉は口にしない。彼はね、なんだかんだで齢数万年以上生きる人の概念を超えた神じみた存在だし、なにより罪人の魂を裁く閻魔大王としてだったりサタンやナナシノにしでかした過ちを反省してか言葉や行動につく責任の重みについては人一倍強いの。いつもあんなウソばっかついてるけどそーゆー真面目な所は一線引いてるの。天子ちゃんはあくまで人間として生きてほしいので彼女の今後の人生を大いに左右しちゃうような感情は彼女に対しては決して見せないのだ……まぁ我々読者はあの子には見せない部分も覗けちゃうんですがね

110話「世界の危機!?カウントダウン開始!!」より。今まで見せたことない程の怒り(たぶんHELL歴より魔男の一件がハザマ絡みと知り同じくハザマに幽閉されてたサトリが関与してると推測したから)を見せた一瞬の隙を突かれ天子ちゃんを空高く放り投げられ……気絶した天子ちゃんを助けた際のこの台詞。仮にウソでもあまりに重いので本人が聞こえない内に言っちゃう

この魔男へのやつとか究極の嘘の際の夫婦発言とか最後の最後にやってのけたコロコロでお出しできる限りの接吻も年長者としての矜持というか配慮を感じられる(でも真最終回と入れ代わりで新連載した漫画はコロコロだろうとやりやがった。やればできるんやな…比較対象これでいいのか?)現世に生きる存在の枠から外れた超越者にして観測者、そんなちょっと(どころじゃないが)大人な彼が残した人間の少女への“愛”……



じゃあ一方で天子ちゃんのほうは?自分は正直なところ天子ちゃんはまだそういう感情を抱くというか認識するような所まではなってないんじゃないかな〜とは思うんすよ。もちろん三白さんとか見てるしそういう感情はあるというのは知ってるけど自分では……

は。は。は?は?は?は?は?は?は?は?は?は?はあ〜〜〜〜?ちょ……ちょちょ待て吉もと先生それマ!?なの?えっじゃあ真最終回の「大好きだよ。」はその色々な感情の延長にあるってコト確定やん!?これ高校生とかになって(あっこの感情って恋だったんだな…)と気付くタイプの感情じゃん!!まぁそもそもがゴクオーくん、コロコロの主人公らしいカッコよさとコロコロの主人公を超えたスパダリっぷりを両立した稀有なキャラクターだもんな。身近にいて大切にされて惚れないワケないわ…

(あえて彼の大好きなヘタッピなウソで感謝する天子ちゃん)

2022年7月28日に週刊コロコロコミックでついに配信され大反響を呼びTwitterトレンド入りを果たしここから全巻購入を決めた人も数人見かけた21話「地獄が危機!?天子の波乱のバースデー」ラストより。どれだけ大変な事があっても気にすんなとウソをつき一瞬で過ぎ去る筈の自分の誕生日に「だからこそ」と時間ギリギリで駆けつけてくれた。こんなん惚れないほうがおかしいわな……まじキュンキュンする!とコロドラゴンも言っている。

それでも天子ちゃんだってこの話でユーリィに言われたように住む世界が違うのは事実だし、地獄長との面談で王として地獄の民に慕われ愛されてるのも知っている。いつか別れが訪れるのも分かっている。だから記憶が消える最後の最後に本当の気持ちを伝えたのだ。そして石豆くんとナナシノのように、消されようとも心の中に残り続ける時間が………………とか思ってたらあのラストだよ!!中学生いわば思春期突入する時期にこの想いを引き継いでるってさぁ…………それに初代閻魔大王は責任感はめちゃくちゃ強い…………もうこれはさ、これはさ………どうなっちゃうんだろうなぁ〜〜〜〜〜〜いやほんとどうすんねん初代、おい初代!!初代ぃぃぃぃ!!!!

(あとは読者みなさまのご想像におまかせします)

ゴク天。オタク特有のカップリング名称を用いるならばまさしくゴク天と呼ばれるふたり。それは人間と人ならざる者が出会い始まった神話のような物語であり、自分と違う他人が互いに大切に想い合う友達としての物語であり……それでいてコロコロにてさりげなくお出しされた男女としての物語であろう。これコロコロで出したの本当にすげぇな……これもまた1話から10年間ずっと描き続けてきたからこそである。そしてふたりの物語はきっとこれからも…………


・総評の総評〜カシバトルもよろしくね!〜

この作品に出会えて本当によかった」心からそう思える作品だった。ダークで怖い魅力あるヒーロー、ウソ暴きミステリー、人に真正面から向き合った人間ドラマ、人外と人間が互いに影響し合う縦軸ストーリー、そして隠し味のように添えられたちょっとオトナな要素……自分の持つコロコロコミックの固定観念を打ち砕き、それでいて最初から最後までずっと面白かった奇跡のような漫画だった……間違いなく自分の人生に少なからず影響を与えている気がする。そのくらいすごかったのだ。

そしてこの漫画を読むキッカケを作ってくれた週刊コロコロコミック様や以前から面白いぞと勧めていたフォロワーのV氏、そして何より今作を生み出してくれた吉もと誠先生(そして彼を支えてくれた編集の方々も!)に感謝したい。本当に、本当にありがとうございます………


こんな大作を描き終えた吉もと先生は……決して燃え尽きたりなどしていなかった。依然その炎は熱く輝くように燃え盛る、現在週刊コロコロコミックにて連載中の『カシバトル』として。

ゴクオーくん114話「よみがえれ!マンガへの情熱!!」より。出版社に原稿を持っていくも現実を知り二度と筆は取りたくないと落ち込む漫画家志望の少年・田塁一郎。しかし自分を信じてくれる親友の赤花や自分に嫉妬するライバルの描込の言葉を受け彼は……再び筆を取った。どんな現実を前にしても決して絶やさぬと決めた、夢と情熱の炎を原稿に刻み込む。

時は西暦2121年、庶民たちがお菓子を食べることを禁止するオアズーケ王国が支配するようになってしまった世界…楽しさを奪われ虐げられる者たちの笑顔を取り戻すために主人公・鐘木(ベルギ)チョコはお菓子の力を持って戦う!ウソの裏に存在する本当の気持ちを描き続けた作者が今度は嘘偽りなき誠の信念を描く!多種多様にて馴染み深いお菓子による能力者バトル!波乱極まる現実を経たのもあってかもはや他人事には思えない世紀末描写!そして2話の時点でゴクオーくんの作者が描いてる漫画だとこれでもかと分からされるあまりにも力強き人間ドラマ!刮目せよ!この漫画は、決して甘くないッ!!!(ちなみに114話にて田塁くんがゴクオーと“ある約束”をした後に彼が描いた設定も含む1話をよく見ると…)

週刊コロコロコミックに移行してこの漫画はさらなる躍進を遂げた……戦いに用いてしまったお菓子に込められた“想い”を、そしてそれを通じて語られる人々の“心”の物語を……是非ともこの目で見てほしい……

それではそろそろ8度に渡って書いた『ウソツキ!ゴクオーくん』の感想記事をこれにて締めさせていただきます。これを機に他のコロコロコミック作品に興味を持ったのでなんか違う作品のプレゼンを書くかもしれない……それでは!

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