コロコロコミックの『ウソツキ!ゴクオーくん』が1話からずっと面白いことに震え上がっている件について(〜13話まで)
・コロコロコミック大時代、到来。そして辿り着いた衝撃の出合い
2022年3月15日からコロコロオンラインにて『週刊コロコロコミック』が始まったのはみなさん御存知だろうか。月刊児童誌でおなじみコロコロが最近色んな漫画誌が行ってる週刊web連載をこちらも開始したというものであり、そこには様々なオリジナル連載ものが掲載されている。
某地獄教師っぽいもナヨナヨ頼りない可愛さや時に見せる優しき包容力あふれる古ノ裏門戸先生が恐れ知らずすぎるカイキくん等の生徒が関わる怪奇現象を解決したり巻き込まれたりする『都市伝説先生ウラモン』、まんが未知なるテレビ番組にて企画されたマンホール好き声優・古賀葵(某かぐや様の声の人といえば分かるか)原案&テレビ朝日ディレクター北嶋一喜(かつて週刊少年ジャンプで漫画を描いてた)が描くマンホールホビー風王道バトル漫画『マンホール戦記アオイ』サメゾンビ化による人類滅亡寸前なるB級サメ映画みてぇな世界観でなんでも屋カルビがいくらなんでもやりすぎるだろと無茶苦茶な無双しまくる『サメゾン サメとゾンビとなんでも屋』などなど…コロコロ本誌の読者ターゲット層である小学生男子とはちょっと年齢が上がったり女性も対象にしてそうだったり独自の路線を攻めてきてるラインナップだ。そしてその中でも特に話題になったのは『ぷにるはかわいいスライム』だろう。コロコロ初のラブコメと銘打たれた本作はコロコロらしいギャグを交えつつコロコロ卒業してしまう年頃の中学生男子が小さな頃から一緒に暮らした幼馴染の美少女…の姿を模したスライムに対して抱いてしまう複雑かつ繊細な想いは的確かつ常時最大打点で描いており、自分は興奮のあまり2話の時点で猛烈に感想を綴ってしまった。あれから話も進みヒロイン候補と思われてたきらら先輩がやべー奴と判明したりと色々あったが今でも毎週木曜日10時のぷにる更新を楽しみにしている。
……そんな週刊コロコロコミックだが今回話すのは週刊オリジナル連載の方ではなく、同時に更新される往年の名作マンガの方である。ゲームセンターブームに合わせ連載され今見るとハチャメチャすぎる展開と攻略法のオンパレードである『ゲームセンターあらし』ミニ四駆ブームを生み出した『ダッシュ!四駆郎』に当時女性ファンから多大なる人気があった『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』外伝作品の傑作とよく呼ばれる『ドラベース ドラえもん超野球外伝』それぞれ世代の人もいるだろうギャグ漫画『絶体絶命でんぢゃらすじーさん』や『ケシカスくん』に『ペンギンの問題』そしてギエピーで有名な穴久保幸作版『ポケットモンスター』…さらにはアニメ化もした『コロッケ!』に『怪盗ジョーカー』そしてもはやひとつの一大ジャンルになった『デュエルマスターズ』と羅列すると本当にきりがないくらいの名作ぶり。これが期間限定とはいえタダで読めるのだからとんでもない。すげー時代になってしまったもんだ。あの頃を懐かしんで読むのもヨシ。自分が読んでなかった時代の作品を新たに読んでみるのもヨシ。
そして、今回において紹介したいのがこの漫画、さきほど言った『ぷにる』と同じく毎週木曜日に更新されている………吉もと誠作の『ウソツキ!ゴクオーくん』だ!!!
「ウソ」を題材にしたこちらの作品、2011年6月号の別冊コロコロコミックにて読み切りとして1話が掲載されアンケートでも好評だったから10月号から連載が始まり翌年には月刊コロコロ本誌へ移行、そして2021年10月号にて完結の全119話とコロコロにて10年も連載したというとんでもない大人気漫画である。その10年連載したという事実だけでもすごいのだが……この漫画、自分の想像を遥かに超える“ヤバい”ものだった。
さて先ずは週刊コロコロコミックにて今作を読む前に自分語りを。自分はコロコロ読んでたのが小学生の頃だった90年代くらいにおいて2年間程度であり後に(当時はライバル児童誌として鎬を削っていた)コミックボンボンに移行、そして自然と週刊少年ジャンプを読むようになっていた。世代でいえばギエピーが始まったばかり。まぁ正直コロコロにそこまで思い入れなかったりする。そんな自分でもゴクオーくんの存在は大人になったからハマったニチアサ枠(日曜朝7〜9時の特撮やアニメやってる並び)に打たれるコロコロのCMで見かけ名前は知ってる程度の認識はあった。その程度であったのだが………このゴクオーくん、自分のTwitterでのフォロワーさんが愛読しており度々「ゴクオーくんはすごいぞ」「ゴク天はとんでもないぞ」と言及を繰り返していたのでちょっとばかし気になってはいた。最終回でボロボロ泣いてたみたいだしめちゃくちゃ面白い作品なんだな、機会あったら読んでみたいなとは思っていた。
そしてそんなゴクオーくんが最終回を迎え約半年後の2022年3月15日が火曜日……週刊コロコロコミックが開設し『ぷにる』もあってSNSでサイトの存在が認知され、その中に見かけた過去作品シリーズにおいてゴクオーくんもあった。先程言った機会が来たのだ。1話を読んでみた。「面白いなこれ…コロコロでこういう高度な推理ものの漫画やれるもんなのか」が嘘偽りない感想だった。木曜更新もあって2日後に2話が掲載されたので読んだ。「ちょっとまって2話の時点で作品としての完成度が高くねえか?」と驚きすら抱いた。そして翌週木曜日の3話。「小学校の事件でここまで話広げるとか面白い漫画すぎるだろ…」話の巧みさに呑まれていた。そして4話。確信した。これは“ヤバい”漫画だ。懺悔します、正直コロコロを舐めてた……こんなとんでもない漫画が連載されてたなんて……しかしそれで終わりではない……そのフォロワーさん含むゴクオーくん既読勢は口を揃えて言うのだ、「ここから最終回までずっと面白いぞ」と。は?ずっと?119話の10年ものですよ??それが中だるみなくずっと面白いってマジで言っておられるのですか???
さてそんなゴクオーくんを始めとした週刊コロコロに毎週掲載されている過去作レジェンド作品、5話くらいまでは今でも読めるのだがそれ以降は公開されてから3週間ほど経ったら終了してしまうようになっている。実はこれ各コミックの1巻に掲載してる話は常時いつでも無料にしているが、それ以降いつも読みたいなら単行本を買ってほしいということになっている。あちらだって商売なのだ、むしろ期間限定でタダで読ませてくれるだけ感謝するべきである。古すぎて紙としては絶版になってる作品だろうが電子書籍としてなら普通に販売してるので気になったら買おう。そしてこの『ウソツキ!ゴクオーくん』は単行本を買い揃えるのを強くオススメする漫画であると自分は考えている。なぜなら物語を通じて紡がれるキャラクターの描写の積み重ねがとても強く、さらには話に散りばめられた伏線が長編シリーズにて一気に回収されたりするからだ。後述するがコロコロでこういう作風を描き通せたのは珍しいと思っている。
ということで俺は先駆者の「ずっと面白いぞ」を信じて5巻まで買って読んでみた。結論から言うとずっと面白い。そして21話(5巻掲載)はヤバい。当時ちょうど夜行バスに乗りながら読んでたのだが自然と涙が流れてしまっていた。バスにカーテンの仕切りがあってよかった。勢いに乗ってさらに長編の区切りがつく7巻まで買った。30話でも泣いた。先駆者様の言ってたことは本当すぎて俺は逆に怖くなってしまったね……これは積み重ねありきの作風も含め一時的に読めるものにしておくには勿体ない。是非とも買うべきと自分から強く推奨しておく。
てなワケで前置きも長くなってきたので今回は現在公開中の13話、いわば3巻ラストまでの話をおさらいしつつこの漫画の魅力を語って単行本の販促に繋がったらいいな〜といこうと思います。いってみよー!
・小学校だからこそ起きる事件に小学生らしいウソツキな理由〜人は誰もがウソにすがり、そして堕ちゆく可能性がある〜
まずはやっぱりこれ。初代閻魔大王・地獄王であるゴクオーくんが“ウソ”を求めて転校?してきたのは八百小学校…コロコロコミックのメイン読者ターゲット層である小学生らしい舞台、そこに通う小学生だから起こりうるやらかしが次々と発生する。3話の給食のカレー鍋こぼしてしまった事件、7話の窓ガラス割り事件、12話の彫刻破壊事件……推理ものが扱う事件としては他作品が刑事事件絡みばかりなので比べると本来ほほえましい案件ばかりだが今作はそこをメインに置く……それでも決して些細な事件とは思わせない内容になっている、なぜなら犯人の小学生が罪から逃れる為につくウソは常に本気だ。それを相手のボロを誘発させるハッタリめいたウソも用いて華麗に解くゴクオーくんの鮮やかさはまさに今作を推理ものとして成り立たたせている。しかも毎月1話ものとして完結させてる……なんとそのスタイルを(時に長編挟むとなれど)10年も描き続けていたのだ!
こんな小学生のやらかし事件をメインに捉えたことによって生まれるのがメイン読者ターゲット層である小学生もつい共感してしまう、人の心が闇に染まりウソに手を出してしまう理由である。上記の大荒輪くんだって本来は正義感に燃える高潔な精神の持ち主なのは7話を見てれば分かる。しかし、それでも、児童会選挙での演説を前にして窓ガラスを割ってしまったなど大顕わになれば積み上げた信用は一瞬で崩れる……だから彼は魔が差したといわんばかりにウソをついて天子ちゃんに罪をなすりつけようとした。
大荒輪くんだけではない、3話の押結くんは「空腹に耐えれず給食のカレーをつまみ食いしまくったのを隠蔽したかったから」でトリックを仕込んで給食当番の中底くんに別の罪を誘発させ自身のは有耶無耶にしようとした。12話の壱兆くんは「金持ちでイヤミとか思われがちの自分が嫌われたくないから」でやらかす度に他者を買収して身代わりにしたり口裏合わせで共謀し他者になすりつけようとした。それらはまさしく醜き保身、しかし読者によっては幼き頃に思い当たる節があるかもしれない。己のやらかした罪から逃げたくなるなんて誰だって考えてしまう。小学生がやりうる刑事事件にも満たない案件だからこそ却って読者の共感性をこれでもかと呼び寄せる。自分も似たような状況になったら素直に謝らず、ウソで誤魔化したくなるようなものばかりなのだから。コロコロコミックという児童誌目線だからこそ描けるじっとりとした恐ろしさ。しかしゴクオーくんはそのよう小さな事件だろうとしっかり断罪する。それは自分が都合よく助かるために他者を悪者に仕立て苦しめるつまんねーウソ……ゴクオーくんがいつも地獄で相手してる悪人どもが他者を挫き嘆き悲しませたウソそのものだからだ。
そう、悪人…死して地獄に堕ちるべくして堕ちた愚かな悪人。あんなちっぽけな気の迷いからの罪から生まれたウソを常習犯と化した哀れな罪人と同じように並べるなんて大袈裟な……とは思わせないのが本作。『ウソつきは泥棒の始まり』といったように、他者を傷つけてないつもりの小さなウソですら容赦なくその辿り着く“末路”…地獄への道筋を描く。
8話「完ペキなウソテストを作り出せ!」においてこのまま成績低いまんまじゃお母さんに塾に通わされると焦る生家伸はクラス一の秀才・江里戸秀一に宝物の玩具を交渉にテストすり替え作戦を持ちかける。それはゴクオーくんの介入でうまく行くも彼は「(お母さんを)ちゃんと騙してやらなくちゃな」「今後(くれた玩具で)遊ぶ度に息苦しさが常にあるぞ」とウソを背負う罪をチクチク責め続ける……互いに100点取るという交換した意味なかった顛末においても皆を騙した事実から残り続ける罪悪感……彼らは怖くなって素直に謝りに行くと言うが……
ウソツキはすぐに、反省したフリをする。
調子のいいこと言ってんじゃねェゾ…!
「ウソをつき続ける人生に待つのは地獄のみ」という青年誌みてーな破滅待ったなしのスタートラインを児童誌だろうとこれでもかと丁寧に見せつける。初めてこれ見た時に「嘘から出た真エンドでよかったネ!」と思い込んでた自分が甘かった。既読勢がたびたび「全国の子どもに道徳としてゴクオーくん読ませたほうがいい」と言ってるのも分かる気がする。ちなみにこれ以降にも何度かそういう話があるそうだし、自分も7巻までにあったとある話(既読勢はこれだけで分かると思う)は「ここまでやるのかこの漫画…」と戦慄した。
このようにゴクオーくんにおいて描かれるウソというのは等身大の小学生が犯す過ちとして描かれている(たまに大人の先生もやってしまうし、校外に出ると児童ばかり狙うみみっちいカツアゲ犯や仕入れたガチャポン商品の当たりを中抜き横領して転売しやがるカスなコンビニ店員とか警察案件も出てくるけど)しかしその小学生が起こす事件をメインに描いてるからこそ、もう一つの要素を描けるのだ。
・ウソの先…罪を受け入れた後の物語がアツい〜紡がれ生まれたつながりはウソじゃない〜
ここからが今作『ウソツキ!ゴクオーくん』の他の推理もの作品には珍しい要素にして真髄であろうと思っている部分である犯人の動機説明パート、そして“ウソの先”も取り上げたい。先程も言ったようにゴクオーくんが取り扱う事件は刑事事件よりも小学校内で発生する小さな事件がメイン、それでも犯人は罪を隠すために本気でウソをつくしゴクオーくんはウソを用いてそれを解決し…そして素直に己の罪を認めない者を文字通り地獄送りにし「悪漢舌(あっかんべー)」と舌を引っこ抜く。
『ウソをつくと閻魔さまに舌を抜かれる』と誰もが一度は聞かされたであろうしつけ言葉……それを実際に抜かれてしまうと皆さんも御存知のとおり犯人はウソをつけなくなりベラベラと犯行の動機をゲロってしまう。推理ものでの自供パートを閻魔大王だからこその設定を用いて強制的に行わせるのは一話完結ものとして話のテンポを削ぐことなくまとめられる手段としてもうまいなぁと関心した。そして普通なら警察のお縄だったりなオチがつくのだが今作は小学生のやらかしばかりなので逮捕なんてのは基本ならない。だからこそ…ウソをついたその後のドラマが描ける。
6話の捻田くんのウソつきキャラや11話のヒッチーのお笑いキャラのように小学生同士のコミュニティ中にでも独自に構成される社会的地位のようなクラスや学年でのポジションがある、それで己の自尊心を構成するアイデンティティを失い周囲から見下されたり嫌われるのはものっすごく辛いものであると読者の中にも痛く共感するだろう。ゴクオーくんはそういう少年少女なりの等身大のプライドも真正面から向き合って描くし、それを守りたいために卑怯なウソをつくこともあるというのを描く。上で語ったようにどんな理由あれど人を騙す者が辿り着く先は地獄であるのは事実、されど……地獄に堕ちた手遅れな悪人どもとは違い、彼らの過ちは一時的な気の迷いが殆ど。己の罪を認め謝り、皆から許され反省し、この先の人生を真っ当に進む道だって存在するのだ。小学生の起こした事件だからこそ着地できる結末である。7話の大荒輪くんだって演説中に己の罪を暴露してしまう最悪のシチュエーションにおいてもだからこそ心を入れ替え反省していると彼が本来持つ正義感あるからこそ正直に伝えた。8話の生家くんと江里戸くんだってウソをつき皆を騙した罪悪感の辛さを感じもう二度とこんなことしないと心から誓った。そして彼らのウソを交えた物語は一話完結の範囲内には収まらないのだ。
かつてウソをついてしまったからこそ言える台詞がそこにある。この積み重ねた描写ありきで生じるドラマこそが俺の中でのコロコロコミックという固定観念を打ち砕いた。コロコロはある程度の年齢になったら自然と卒業しちゃうものとはよく言ったもので、どうしても読者の入れ代わりが激しいコンテンツでそれに応えてか掲載される漫画も基本的にどこから読んでも面白いよう一話完結ものが多いような気がする。ゴクオーくんもそのスタンスは守っているのだが、それでも個人個人で取り上げられた一話完結のストーリーあってこその彼らの深まるキャラクター性が以降の話においても如何なく発揮されている。戸屋くんだけでない……詳しくは言わないがカレーをこぼしてしまった中底くんにも、カレーをつまみ食いしてしまった押結くんにも、なんでもお金で解決しようとした壱兆くんにも、後に再び彼らにスポットライトを当てたメイン回があるのだ。すごい。当時の読者はこれを現在進行系で追っていたのか。一話一話のクオリティがただでさえ高いというのに積み重ねある描写でさらに面白さが加点される……3週間限定の公開で果たしてそれを満喫できるだろうか……自分は己の記憶力に自信がないので単行本を買って常に手元にある方を選んだ。君たちはどうする?
こうやってみんなをあらためて見てると思うんだよね。ウソから始まったつながりなんだって。
『ウソをつくと閻魔さまに舌を抜かれる』とあるようにゴクオーくんは確かにウソをつく悪人どもの舌を引っこ抜く。しかしその聞き慣れたしつけ言葉にはウソをつくような過ちを諌め正しき方向へ進むことを促したいという本意があるように、ゴクオーくんに舌を抜かれ嘘偽りない本音を吐けたからこそ紡がれ生まれた人々の“つながり”が描かれる。そしてゴクオーくんは(地獄で相手してる)悪人どもがつく卑劣なウソと違って、現世での生きた人間のウソ…各々にドラマを抱え正直になれず、そして己のコンプレックスや過ちと向き合い悔い改め結果的に互いに絆を深めることもできるウソが好きなのだ。
さて、今作にはそんな人間らしい現世を生きるうえでついてしまうような泥臭くも悪に染まりきらないウソがいっぱい出てくる。しかしそれだけではない……地獄の閻魔大王に“とあるウソ”を教えてくれた一人の人間の少女がいるのだ……
・強く、優しく、美しいウソ〜小野天子という奇跡のようなヒロイン〜
なんだそのGo!と続きそうなウソはと思われがちだが、まずは11話「クラスメイトを笑わせろ!」におけるクラスでのギャグキャラなヒッチー(平近鉄平)が自分の幼馴染であるノンコ(内見ノリコ)だけいつまで経っても笑ってくれない……彼女がなぜ笑わないのかという理由を思い出していただきたい。
上記に挙げた自分の立場や尊厳を守るためだけにつかれたウソなんかではなく、大切な幼馴染を傷つけたくないため笑えないなんてウソをついた……こんな愛しく美しい思いやりを“ウソ”呼ばわりしていいのかと一瞬思ってしまうが、ゴクオーくんにはこれもまた…だからこそ“ウソ”としてカウントするのだ。そして彼女が打ち明ける本音にヒッチーも「確かに最初はそうだったが、今じゃみんなを笑わせることが本当に楽しいから心配しないでくれ」とウソから出た真と言ってくれて最後はノンコちゃんの笑顔で終えたのだった(幼馴染だから分かっている、幼馴染だけど分かってない、幼馴染いいよね……いい)
……まずはみなさんに謝らねばならないことがある。前回書いたぷにるのやつでコロコロ初のラブコメとあってコロコロは基本的に恋愛をメインに扱わない云々と説明した際に「そりゃ探せばヒロインとのドラマがある漫画だってあるかもしれないが」なんて言ったのだ。うん……あったや〜〜〜〜〜〜ん!!!ゴクオーくんがその「ヒロインとのドラマがある漫画」や〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!!そういうことである。当時は本当に知らなかったのだ。すまない。というかフォロワーさんが「ゴク天はいいぞ」とつぶやいてたやん。灯台下暗しとはこのこと。いやゴク天はそういう恋愛観念かと言われると違うような気が……ともかく、だ!今作においてまさしくヒロインのポジションに相応しい少女・小野天子について触れねばならない!彼女のつく“ウソ”を!
わたしは絶対にやってないから。
だいじょうぶ。
泣きたいくらい辛く…というか実際に涙がこぼれ落ちてようと己の身の潔白を表明するためにどれだけ謂われのない罪で謗られようが平気と装い(きれてないにも関わらず)ふんばる……謎の転校生ゴクオーくんは―初代閻魔大王・地獄王は―それを前にゲラゲラ笑う。この人外めそれほど可笑しかったか?否。断じて否!
おもしれー女ならぬおもしれーウソ。地獄の罪人どもが吐くつまんねーウソ…それこそ生徒の些細な指摘を根に持ち冤罪をおっかぶせ集団リンチに追い込もうとした教師失格にも程がある担任のつくウソ(改めて記述するとヤバすぎるなコイツ)と違い、現世にて生きる人間の少女の、悪意に負けたりはしないために泣きたい本心を隠し立ち続ける強がり…それをゴクオーくんは“おもしれーウソ”と例える。そう、これも“ウソ”。地獄に堕ちた罪人からじゃ決して見れない清く美しい“ウソ”。困難という強風に吹かれても折れたりしないと現世に根ざし咲く花のような“ウソ”。だからこそ地獄の閻魔さまは彼女に、人間に興味を示した。心躍った。こんなおもしれーウソがあったのかと。
この小野天子なる少女、見た目は意図的にそう描いただろうな素朴な女の子(ちなみに単行本だと初期案デザインも見れるぞ!)だが性格がコロコロ本誌で普通はお目にかかれないだろうまでに『光』な女の子だ。困難に決して負けないとする強い心、己が身を削ってでも他者を助けようとする優しさ……まるで女児向けアニメの主人公に選ばれてもおかしくない健気な活躍を作品テーマである“ウソ”という一括りにおける側面として出してくる。自分はそんな天子ちゃんの行いすらも“ウソ”であると扱う今作を見て一本取られたと関心してしまった。まさに物は言いよう。このような形でコロコロでは非常に珍しい王道ヒロインを惜しげもなく出され、さらには現世の人間の代表として……謎の転校生ゴクオーくんの正体を唯一知る人間として物語の主軸に関わり続ける。初代閻魔大王・地獄王がいるべき地獄においても……
そう、地獄。4話「地獄に落とされた天子…!」にてゴクオーくんの正体を知ってしまった天子ちゃんは彼によって地獄に連れていかれる……地獄を知ってしまったのを後悔させたかったから。地獄に、死しても意地汚くウソ吐く罪人を裁く閻魔大王たる自分に恐怖し、知ってしまった恐怖でこれ以降の人生を正気で過ごせなくならないよう記憶を消してもう二度と会わない。怖かったなら正直に答えろ。地獄でウソつくとどーなるかってのは、さっきのでわかったろ?「こわく…なかったよ?」足が竦み目どころか鼻からも液が流れるほどの恐怖に震えてるのに、どうして分かりきったウソをつくのだこの人間は?そこまでして何を……
こわくないったら……、こわくない!
この漫画が“ヤバい”と確信した瞬間だった。現世の人間の少女が、小野天子がどれだけ地獄の恐怖を前にしてでも怖くないなど無謀じみたウソをつく……彼女の目の前で地獄の恐怖を突きつける少年は地獄の鬼どもを束ねる初代閻魔大王・地獄王であり、自分を助けてくれた友達・ゴクオーくんでもある。そんな彼にまだ恩返しも全然してないのに……脅されようと決して譲りたくない心からの気持ち、絶対に失くしたくない出来たばかりの…それでも大切な少年との“つながり”を守るための「こわくない」という強いウソ。こんな特大の感情を全119話中の4話でやる。こんな早々から投げつけられたら読者の誰だってゴクオーくんみたいに人として惚れるわ。側近のバトラーさんだって納得せざるをえない。コロコロでは少々異質な王道ヒロインかもしれない、けれど……現世に生きる人の強さの象徴として描くのならば当然いなくてはならない。それこそが小野天子。
4話でこんな関係性の最大打点叩き出してこの後なんかやることあるの?と自分は公開当時ちょっとばかし思ったのだけど……それは杞憂でしたね。そこから際限なく積み重ねてくる。ゴクオーくんは積み重ねの描写が強い漫画というのは先程言ったのだが、この天子ちゃんの描写も当然のように積み重ねられる。そうするとどうなるかって?大変なことになる。いや正直ここまでとは思ってなかったよマジで。ゴクオーくんと天子ちゃんのカップリング…いわばゴク天、“沼”通り越して“冥府”と例えてもおかしくない深さですわよ。
……さて、この奇跡のような少女・小野天子。このように強く・優しく・美しいウソをつき現世を生きる少女。読者のみなさんの中には彼女の心の清らかさに感服している人もいるかもしれない……そして一度はこう思ったのではないか?小野天子は天使のようだって……
13話「二代目閻魔大王、決定!?」にて再び地獄に招待された天子ちゃん(実家とか言ってますがいいんすか!?ねぇ!!?)それは地獄に危機が迫り地獄王が現世に留まれない隙を狙う不届き者がいたから……空に残るは輪っか雲に羽毛雲、天上から舞い降りただろう使者が企てる策謀とは?奴らは小野天子をどうするつもりだったのか?そしてここから物語はどう進むのか?来週から新章が開幕する、それがどういう風になるかは見てからのお楽しみだ。けれどひとつ言えることがある……
この漫画はさらに面白くなる、それは決してウソではない。
・ひとまずのおわり〜ここからさらに面白くなるぞ〜
いかがだっただろうか?今回は週刊コロコロで公開されていた範囲で自分なりに『ウソツキ!ゴクオーくん』の魅力を語ってみた。これまで呟いてくれたおかげで自分にも興味を持たせてくれたフォロワーさんに深く感謝したい。こんな面白い漫画があったなんてよ……みんなも何がキッカケで推しの作品を他者に見てもらえるチャンスが分からないから愛はおもいっきし叫ぶべしだよ。
しかし実のところ13話の区切りだけでは今作の魅力について語るのはまだまだ足りない。特にゴク天においては来週から始まる新章において21話という大量破壊兵器クラスの火力を誇る話が待ってるので覚悟の準備をしておいて下さい。いかにハードルせり上げても悠々に飛び越えて燃やし尽くす威力なので無駄です。諦めて己が身を灰になるまで焼かれましょう。
そして自分はこの記事を脱稿した記念として新たにまた区切りのいいと言われる13巻まで読んだのだが…………56話がすごすぎてリアルで叫んでしまった。そして61話でめちゃくちゃ泣いた。ずっと面白いってそりゃ言ってたけどここまでかよ………こわいよこの漫画……ちなみにここらへんは週刊コロコロ配信が滞りなく進めば来年以降に配信されるぞ。そもそも119話ある漫画なので毎週配信でも完走にはあと2年以上かかる。もし待ちきれないだの面白すぎて作者に印税として還元したいと少しでも思うのなら…………
損はさせませんぜ………それでは!ということで続きを書きました!(30話までのネタバレあり注意)