京都を暮らすように旅した7日間~4日目~(素敵なタクシー運転手さん、菊水のビアガ、祇園の夜)
最高な宿で迎えた4日目(水曜日)の朝。昨晩は不可抗力で夜更かししたが、意外と怠さはない。
今日もお昼まで仕事をして午後はお出かけという、この旅ですっかり定着したタイムスケジュールだ。
京都はパンもおいしい街
今日の朝食は、宿近くの「村上製パン」でテイクアウト。ディスプレイの器がこの可愛いさ、ああもう最高だ。
京都市はパン消費量全国一位ということをご存知だろうか?パンをよく食べる人たちの街だから、パン屋さんのレベルも高い。テキトウに入った店がびっくりするくらい美味しいなんてことは、ザラだ。
しかも東京なら500円くらいするパンが、200円台で買えてしまう。井上製パンの目の前は通学路のようで、我々と入れ違いで女子高生2人組がやってきた。こんなにハイクオリティなパンを高校生のお小遣いで買えるのか、キミ達それは相当にラッキーだぞ。
セブンイレブンでコーヒーを調達して、テラスで食べる。
私はカプレーゼサンドと紅茶クリームパンを買った。どちらもとてもおいしくて、特にカプレーゼサンドは塩気が絶妙。トマトも全然水っぽくない。パン屋さんのプロの仕事に触発されて、その後の仕事にも気合が入った。
今日も午前中に仕事を終わらせて、後ろ髪を引かれつつもこの最高な宿を出た。また泊まりたいなあ。
紳士な京男との邂逅
さて、二条の宿へ向かうべく五条でタクシーを拾ったのだが、思いがけず忘れられない出会いが。
タクシーの運転手さんが、大変に素敵な紳士だったのだ。
きっちり整えられたロマンスグレーの髪、品のいい銀縁眼鏡、60代と思われるが姿勢の良いスラッとした長身。抑揚のない、ダウナーなトーンの京都弁。この時点でスペックてんこ盛りなのだが、「ずっと京都ですか?」と訊ねると”太秦の呉服店の生まれ”とのお返事。トキメキが致死量に達しかけた。
直後に「自分がタクシー運転するとは思てへんかった」と零されたので、呉服店についてそれ以上掘り下げる気にはならなかったが、「道理でお召し物が素敵だと思いました」と返した。おべっかではなく本心だった。
トランクに荷物を入れていただいた時に見た、パリッとしたシャツとスラックス、センスの良いネクタイが印象に残っていたのだ。その時は「お召し物てそんなん…」と苦笑していたが、到着後に荷物を下ろすため立ち上がる際、チラッと自分の服に目をやっていたのを私は見逃さなかった。褒められた今日の服装がどんなだったか気になったのね…!かわいい…!
宿のチェックインがなければ、「今日はこのタクシーを貸し切るわ!まずは太秦に向かってちょうだい!!お金ならいくらでも出すことよ!!!」とドライブしたかったくらい、なかなかお目にかかれない上品な紳士だった。
お昼は京都中華
宿に荷物を置いてから、徒歩で市役所前の「鳳泉」へ。私は京都中華が好きで、学生時代は北大路の「鳳飛」に通った。ただ鳳飛は市内中心地から遠いため、卒業後に旅行として京都を訪れるようになってからはアクセスの良いこちらに来ることが増えた。
京都中華特有の春巻、エビカシワソバ、チャーハン、フーヨーハーをビールとともに堪能する。残念ながら、私が一番好きな「からしどり」は調味料が輸入できなくなったとのことで休止中だった。
T女史は、好き嫌いなく何でも「おいしい!」と食べてくれるので気持ちが良い。この旅に限らず、私はお店選びを任せていただくことが多いのだが、どんな店に連れていっても楽しんでくれるのが本当にありがたい。
浪人時代を過ごした二条城界隈を散策
昼食後は二条城界隈を散策した。私は浪人時代をこのあたりで過ごしたので、とても懐かしいエリアだ。
二条城は大政奉還をした場所だと思っていたが、勘違いだったといまさら知る。正しくは「大政奉還を”決意”した場所」。T女史は「確かに、天皇を城に呼びつけるなんて無理よね」と納得していた。それもそうだ。
予備校の前では、化学のI川先生を目撃した。私が教わっていた10年前の時点で「おじいちゃん先生」のイメージだったのに、全く変わらないお姿に内心変な汗をかいた。いや、お元気そうで何よりです。
その後もT女史に付き合ってもらい、私の思い出の地を散歩する。神泉苑や三条商店街、浪人時代の下宿先近くの銭湯。
寝不足な体で連日2万歩近く歩いているので、さすがに疲労が蓄積してきた。宿に戻り、電池が切れたように1時間ほど夕寝をした。
大正5年創業、「菊水のビアガ」
夕寝をしてすっかり元気になり、19時頃に晩ごはんを食べに外へ出る。お手本のような、夏の夕暮れだ。そして忘れたころに遭遇するッ…「不意打ちのエモ」…!!(※1日目参照)
(京都で学生生活を送った人には言葉は不要だろう。写真だけ掲載する。)
この日は「レストラン菊水」へ。大正5年創業のレトロなレストランの屋上で、京都の町を見下ろしながらビアガーデンと洒落込める。
したり顔で書いているが、私は初訪問。T女史が毎年祇園祭の時期に、”菊水のビアガ”で飲み会を主催しているのだ。最高に粋な女だぜ…!T女史…!
学生時代の互いの黒歴史を肴に飲む。
店を出るころ、1階のレストランホールはすでに閉店作業をしていた。京都は、町のパン屋に「カプレーゼサンド」なんて東京でも見たことがない斬新なものがあるかと思えば、大正5年創業のレストランが長年愛されていたりする。つくづくズルい街だ。
菊水を出て、酔い覚ましに花見小路~鴨川沿いを散歩する。
祇園の夜があまりに美しくて、道行く人もみんなどこかゴキゲンに見えた。与謝野晶子の短歌「清水へ 祇園をよぎる桜月夜 こよひ逢う人 みなうつくしき」がぴったりだなあと思った。まあ、今は夏なんだけど。
いつの間にか話題は互いの黒歴史から「胸キュンエピソード」に移っていた。そして、それらすべてが数年前のものと気づいて苦笑する。
ゆらめく鴨川の水面を見つめていたためか、ふわふわとした心地よさを感じながら眠りについた。
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