40代おっさんがポジウィル使ってみた
「想定“じゃない”層」が25万円もの安くはないお金を積んで実践。迷える中年にこそオススメ?
ポジウィルの概要
ポジウィルは正確にはポジウィルキャリア(以下ポジウィル)という名称で、有料のパーソナルコーチングサービスである。マンツーマンのコーチングで個人個人に寄り添い、利用者の理想に近づけていく支援をする。パーソナルコーチングとしては、mentoというものがすでにあるが、ポジウィルはおもに転職などのキャリア支援に特化しているのが特徴だ。
ポジウィル自身は「あるべき、こわそう。」をミッションにサービスの位置づけを「キャリアのパーソナル・トレーニング」と標榜していて、その形態からキャリア版ライザップなどと評されることもある。
ポジウィルのビジネスモデルと料金体系
私が不勉強で知らないだけかもしれないが、ポジウィルはtoCがメインで基本的にエンドユーザーは個人となる。無料相談をとっかかりに、ユーザーが継続したければ利用料を支払ってサービス開始というベーシックな流れにあり、HR業界のサービスでありながら、企業側から利用料を徴収せずに成り立っているかなり珍しい形態である(後述するが、逆にここの結びつきがないので、最終的にはユーザーに依存する部分がある)。詳しくは以下が参考になる。
肝心の料金体系は、“超”がつくほど強気だ。端的にいって高額。ポジウィルは自己分析コース、キャリア実現コース、キャリア実現+コースの3種が存在していて、それぞれで料金が異なる。自己分析コースは20万円、キャリア実現コースは45万円、キャリア実現+コースは60万円。
初回利用時は入会金の5万円が加わり、消費税がのっかってトータルコストは、27万5千円、55万円、71万5千円だ。つまり、最終的な一回あたりのコーチ料は約6万円~8万円。これはコーチングサービスとしてはかなり高い印象だ。たとえば、自分がかじっているストレングスコーチング界隈でも、1時間あたりの料金でここまでいくことはなかなかない。著名なプロコーチに頼んだときと同じくらいの料金ではなかろうか。とはいえで、会社組織としてコーチを自社で抱えている(社員≒コーチ)ようなので、かかるコストと利益を考えるとめちゃくちゃに暴利を貪っているわけでもない。
実際に使ってみて
今回私が使ったのは自己分析コース。1時間のコーチングセッションが4回で、サポート期間は一ヶ月。実際には、先にも述べたように無料相談を申し込んで、そこでよければ次に進むという形になるため、無料セッション1回+有料セッション4回という形になる。
はじめに書いておくと、おそらくこのサービスは自己が確立されている人には不要である。とくに私のようなある程度無難に仕上がってしまったおっさんは自分のスタイルが築かれているゆえ、相性がいいか悪いかで言えばよくはない。基本的には、「俺はこのままこの会社でやっていっていいのか」とか「この仕事であっているのか」とか「この生き方で大丈夫なのか」というような悩みを抱えている若者向けである。
なのに、なぜ40代のおっさんである自分が利用したかと言えば、ここ数年、会社の中での評価と外での評価に強くギャップを感じていたからだ。今、所属している会社ではそこそこ評価を頂いているが、外に履歴書と職務経歴書を装備して出ていくとこれがおもしろいことにまったく箸にも棒にもかからず打ちのめされる。自分は凡人であり、その他大勢であり、何者でもない。夢は叶うとか馬鹿なこと言ってんな、何にも期待せず生きるのが一番などとある種の悟りをひらいていたつもりだったものの、それでもやはり無価値であるということを受け入れるのは容易ではなく、どうにかしたいと考えていた。そんな折にポジウィルが資金調達をしたという記事をTechCrunchで見かけ、この座組で資金調達できたということは評価できるサービスなのだろうという、ただその一点だけで無料相談を申し込んだというカラクリである。多分、年齢的にも動機的にもポジウィル側からすれば想定の外の人間だったろうが、それでも門戸を開いてくれたことには感謝したい。
閑話休題。
さて、使ってみた感想としては「素直によかった」。値段以上の価値はあったし、先程若者向けと書いたが、私のような無難に仕上がってしまった40代のおっさんこそ使ってみる意義があるサービスではないかと思う。ただ、無難仕上がりおっさんがこのサービスを使うのはある種の苦痛が伴う。なぜならば、ポジウィルのミッションである「あるべき、こわそう。」を愚直にコーチがやってくるからだ。40代のおっさんにもなれば自分なりの人生哲学がある。成功体験をもとにした自負もある。それらをコーチはアルカイックスマイルを浮かべながら容赦なくぶっ壊しにくる。
私は以下の岡さんという方にコーチをしていただいたのだけど、もうこの人に相当追い込まれたものである(褒め言葉)。
コーチングセッションの詳細を書きすぎると同業他社にパクられてしまう恐れがあるので控えるが、いわゆる「Will」「Can」「Must」の自己分析のフレームワーク(以下参照)に近いものを使って進める形。私がしんどく、苦痛を感じまくったのは2回めのセッションであった。2回めはキャリアの棚卸しがテーマ。キャリアを棚卸しして、自身が持っているストロングポイントを言語化していく。していくはずの回だったのだが……。
私はもともと普通の範疇から外れている食えない男だが、先の中途半端さとり野郎だったことと、「コーチングってロジハラとどう違うんだ?」という最近自分自身が抱えている疑問が組み合わさった結果、やたらと反抗的になってしまったのである。要するに大人気なかったのだ。今考えて見れば、岡さんは丁寧に掘り下げようとあの手この手の質問を投げてくれていたのだが、「何か工夫は、成果はないのか?」という問に対し、「いやー、何もないですね。社会人として当然のことを当然のようにやっただけです」などという返答に私が終始してしまい、空気が最悪になってしまった。
転機になったのは岡さんが仕掛けてきたぶっ壊しである。
自分自身としては、とても有意義で社会的価値もあり、そのことを話すと大体の人がすごいですねと言ってくれる過去事例があるのだけど、それに対して、「お前は意義を感じているかもしれないが、それは主観だから。価値なんてねーよ(大意)」とにべもなく返され、「こいつは何て事を言うのだ」と相当なショックを受け意気消沈。その後2日間はロクに眠れず、思考もまとまらない状態になってしまった。
ただ、これによって自分が囚われていた常識の枠が壊され、考え直す余地がうまれた。私が好きな話に、光浦靖子さんが飯島愛さんに「おめーの『恥ずかしい』に、そんなに価値ねーぞ」と言われて覚醒したエピソードがあるが、おそらくはあれに近い。
何があろうが・言われようが構わないという生き方でいくならいい。ただ、今回自分は、内外の評価を一致させたいというところからスタートしてポジウィルに流れ着いたのだから、相手(他社)にどう売るのかという観点を見出していかないといけなかったのだ。それなのに、高倉健気取りで「自分は不器用ですから……」などというポーズをとってしまったため、前に進まなかったのである。それを岡さんが壊してくれたわけだ。おかげで、いろいろと考えが整理でき、3回め、4回めのセッションは比較的スムーズに進めることができた。私が今後のキャリアを考えるうえでの攻めるべきポイントや売り方が明確化され、結果として作り直した職務経歴書もかなりわかりやすいものとなって無事に終了である。
結びに
ポジウィルは解放運動である。囚われた人たちを解放し、余白を作る。
無難に仕上がったおっさんになってしまうと、営業成績が悪くて怒られることはあれど、有益なフィードバックがもらえる機会が減る。そりゃそうだ。同じ熱量を向けるなら素直で伸びしろのある若者に振り向けたほうがよい。だから、無難仕上がりおっさんはどんどん放っておかれる。切磋琢磨しあう同期や同僚がいればいいのだろうが、私はそういった仲間も少ない。だからこそ、苦痛は伴うが40代のおっさんこそがお金を払ってでも使うべきサービスではないかと考える。
ただ、決して万人にオススメができるかというとそうでもない。
まず、このサービスは基本ベースとしてはコーチングなので、自分自身が持っている答えにたどり着かなくてはいけない。つまり、使う側も頑張る必要があり、お金を払ったからとお客さん気分で行ってしまうと痛い目にあってしまう可能性がある。ポジウィル自身が「トレーニング」と言っているのも、多分にその意味合いが強いのだろう。
アウトプット保証がないことにも注意したい。あたりまえの話だが、別に希望の会社に入ることを約束してくれるわけではない。ポジウィルの方々は熱心に付き合ってくれるから採算度外視の向き合いをしてくれるものの、最終的なアウトプットがどうなるかは利用者個人の才覚と努力による。
あとはやはり価格が高め。とくに若者にとってこの金額はなかなか勇気がいる。個人のプロコーチに頼めばもう少し安く済む可能性もあるし、冒頭で紹介したmentoなどを使っても金額を抑えられるかもしれない。ストアカやココナラといったスキルマーケットで探すのも手だ。ただ、ポジウィルはキャリア支援に特化している強みがあるし、個人的には対人の向き合いにおいて、必要以上のコストをかけている印象があり、相対的な価格としては安いのではないかと感じた。自分も管理職として部下向き合いをやったからわかるが、人と真剣に対峙するのは本当に疲れるし、油断をすると魂を引っ張られてしまう。対人は個別化をしていけばしていくほど手間がかかるので、数をさばこうとするとフォーマット化して流れ作業のようにやっていくのが王道だけども、ポジウィルに関してはそれを感じることはなく、逆に個に向き合いすぎて「大丈夫か? 今はいいが、長く保たないぞ?」と勝手に心配になってしまったほどだ。
聞けば、ポジウィルは破壊と再生を経てリブランドしたという。今、組織には熱意のある人達が集まっていて、サービスとしても勢いがついてきている状態だ。こうなった組織の熱は凄まじいが、それがいつまで持続するか。アドレナリンワークは一時的であり、継戦能力においては不安がある。つまり、今の品質で走り続けられるのか(サービス提供を続けられるのか)、ということだ。自分としては、よいサービスだと思ったので長く続いてほしいが……どこかで折り返しが来ると思うので、そのときに組織がどうなっているか。継続発展かつ持続してくれることを望む。
散々書き散らしたが、自身が何かしらの不安を持ち、それでもなんとかしたい、前に進みたいという前向きさと向上心がある人にとっては有益なサービスである。まずは無料相談をし、不安な点を解消した上で、懐具合と相談して利活用を検討するといいだろう。
この記事がなにかの参考になれば幸いである。
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