久米島紀行⑦球美の島、泡盛と青梅
泡盛と青梅は非常に相性が良い。
梅酒作りが初夏の風物詩となり早20年が経った。
長年、スーパーで手に入るホワイトリカーやブランデーで梅酒を作っていたが、泡盛で漬けた梅酒は家族の評判が特に高く、ただほったらかしの手仕事にしては鼻が高い。
泡盛以外、比較的安価な材料で出来ている。すべては泡盛様さまなのだ。
泡盛の中でも久米島の久米仙、特に久米仙ブラウンで作った梅酒は他に類を見ないほどの代物になる。
梅雨明けの知らせを首を長くして待ちながら、仕込んだ梅酒瓶は、6ヶ月後には全体的に琥珀色で、オーロラの輝きを放つ。
梅の旨味をギュッと吸収した泡盛は弾力さえ感じるとろみがあり、みずみずしい香りは鼻の奥をさわやかに駆け抜ける。五月の季節を、まるっと梅酒瓶に閉じ込めた達成感がたまらない。
短期タイムカプセルのフタを外した気分とでも表現したくなる。
生まれて初めて口にした泡盛が久米島ブラウンであった。
二度目に訪れた久米島の居酒屋海坊主で、柄にもなく泡盛の水割りを注文した。真夏の久米島で過ごす夏休みに完全に浮かれた勢いで呑んだ。
それが旨かった。
グラスに鼻を近づけた時の刺激的な香りは、のどを通る頃には丸く角が取れ、数秒後に再び鼻の奥からふんわりと旨味の尾っぽが顔を出す。
一口飲み終わる毎に「フーッ」とさわやかなため息と共に日々のストレスが体中から逃げていく。
泡盛の旨さは格別である。
泡盛の味を知ってしまってからというもの、梅酒は泡盛で漬けることが定番になった。余った泡盛はちゃっかり晩酌にあやかり、2度おいしい。
いつの頃か、久米島で知り合った素敵な女性ダイバーの自宅で食事会にお招きいただいた時の事だ。
彼女が作った久米島酒造の美ら蛍という銘柄の泡盛で漬けた梅酒をいただいたが、これもまた美味で、すっかり飲み過ぎた。
もはや梅シロップのようであり、あっという間に飲み干すニクい梅酒である。
残念ながら泡盛は自宅近所のスーパーにはほとんど並ばない。わざわざ電車や車を使って大きな酒屋や沖縄のアンテナショップで買い求めている。いつでもそばにあるわけではないから、なおのこと泡盛が飲みたい時がある。
沖縄には47の酒造所がある。
昆布ダシのような風味があるもの、スパイス感の強いものなどなどキャラクターは少々濃いめ。
近頃は泡盛の美味しさをもっと知りたくて、手当たり次第に買い求めては、去年やちむん通りで買ったお気に入りのカラカラに注いでノドを鳴らしている。
ついでに梅酒にした時の味なども想像する。楽しみはふくらむばかりだ。
しかし、やはり今年も久米島の久米仙、久米仙ブラウンで梅を漬けてしまうのだろう。