怖いもの知らずが開ける世界への扉①

そこで私は、この魂の誘惑にほとんど逆らうことができず、ある日、家をも富をも後に残して、(中略)大きな船に乗り込んだのでありました。

千一夜物語 船乗りシンドバードの第四の航海より

元々恐怖を感じにくい人がいます。

サイコパスとかに分類される人も、その中の一つです。

進化の過程では、怖さを感じにくい人がいることで危機に打ち勝ってきたと言う説明がなされているようですが、そこに付け加えたい要素があります。

未開の地を怖がらない、です。


小学校の頃、田舎に住んでいたのでそこらじゅうに空き地があり、森とかもありました。

友達と遊んでいても、「これ以上は怖いからやめておこうよ」と言うのび太みたいな子から、「怖がらないで、いくぞ」と言うジャイアンみたいな子までいました。

僕はどちらかというと前者でしたが、なんで怖くないんだろう、どのようにして怖がらないで済むようになったんだろうと思ったものでした。

時は流れ、僕は今パートナーである小鳥と過ごしています。
彼は、家の中でも僕や家族の周りを離れません。というか、飛ぶのも少ないです。
家の中は彼にとってはとても広いはずなのに、自分から探検したりしません。

部屋の中を飛び回るのは、僕がいなくなった時とかで、探しているようです。(家族にそのエピソードをよく聞きます。)

誰もいない部屋では、自分から行きたがらないようです。
どうやら怖いようです。
とても速い移動手段を持っているのにも関わらずです。

小学生は探検ばっかりしますが、それより広範囲を移動できるはずの動物では、探検はするのだろうかと疑問を持って調べてみると、
人間の散策にあたる発散型探索という行動は、ほとんど議論されないそうです。
議論されないとは、見られないのか、それとも研究できない、しても意味がないのかはっきりしないですが、おそらく前者なのかなと思います。(技術的に検知できないわけでもなく、興味深い行動と感じる研究者もいるかなと思うからです。専門家の方、違ったらご指摘ください)

少なくとも、人間ほど頻繁に見られないのでしょう。

食料があって、安全が保たれている場合、未知の世界に出かけていくことはリスクでしかないですよね。

しかし、人間は安心安全が保たれていても、好奇心を持ってなぜか冒険に出かけます。

のび太くんとジャイアンの例を持ち出すまでもなく、未開の地に対する恐怖の感じ方は人にとってばらつきがあるようで、

どうやら恐怖の感受性は、遺伝的にも決まっているらしいです。
https://mycode.jp/fumfum/fear-extinction
https://www.oist.jp/ja/news-center/news/2022/9/9/jumping-gene-found-be-strongly-linked-depression-fear-and-anxiety

恐怖を感じにくい人というのは、探索に出かけて行きやすいのかもしれません。


未知の土地に、リスクを顧みずにいくのは、現代でも見られます。

僕にとっては狂気の沙汰にしか見えない、洞窟探検家とか、洞窟ダイバーなんてのもあります。

知恵や道具の活用のおかげもあるかもしれませんが、
これだけ地球上に広く分布しているのも、この特質のおかげもあるかもしれません。

文明を発達させても、他のところに全くいかないで過ごすことも可能ですよね。

実はこれも何らかの形で生存に一役買っていたのではないでしょうか。

恐れ知らずは、漆黒の宇宙でも発揮され、
惑星を飛び出して、月にまで行ったかと思うと、止まるところを知らず、
2機のボイジャー探査機は恒星間空間にまで達し、
太陽と地球のラグランジュ点には、宇宙の彼方を見るジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を飛ばし、
500ペタバイトの全天の天体データを取得する、ベラルービン天文台による時空間レガシーサーベイも始まっています。

ところで、僕の小鳥の祖先は、江戸時代にインドネシアから日本に連れてこられました。
人間が恐れ知らずで探検する心がなかったら、今一緒に過ごすこともなかったでしょう。

恐怖を感じない心と探索への押さえがたい欲求、この二つが合わさって、新しい世界を開け続けてきたのでしょう。