医師としてあまり口にしない技術的な悩み①

ほとんど毎日自由時間の中、趣味として医業を少しだけやっていますが、
日々自分の誤診やミスを記録したり、他の医者と話すと、やはり技術的に限界を感じることがかなりあります。
医療業界以外の方も共通の限界を感じている方もいるかもしれません。
非医療業界の方でもわかりやすいように心がけながら紹介します。

知識と実際が全然噛み合わないケースばっかりに出くわす、です。

患者さんがどんな患者さんか把握して、どんな病気または怪我だと判断して、どんな治療やケアをするまたはしない、といった一連の流れがあります。

僕は、真ん中の判断をする仕事が今は多いです。昔はある領域では全部やっている時期もありました。

患者は、いろいろなパターンが来るので、喉の痛み→風邪と簡単に判断できないです。
咳から風邪だったという方もいます。

これが機械の修理と違うところで、ある原因があっても、異常の出方がさまざまなバリエーションがあります。

ここが誤診が生まれる一番のポイントですね。

とはいえ、風邪で足の先が痛くなるというのはあんまり起こらないことで、それぞれの原因に対する起こりやすいパターンがデータとして記録されているので、それを元に、典型的なものを覚えおいて目の前に来たら思い出して、反応できるようにしておく、というのを学生時代とか大学卒業後もやっています。(もちろん、やらないで仕事する、生ける屍のような人間もたくさんいます)

皆さんが受けたことがあるであろう検査も、ちょっと一概にはいえないです。
異常があると必ずしも異常”値”がでるというわけではないので話が複雑です。

僕の最近の悩みは、認知症に関してです。ここから少し技術的なことになってきます。

認知症は、人間にとって普通の記憶が、徐々に失われていったりする症状です。メカニズムやパターンはいろいろ言われていますが、結局のところ、原因が何かについてわかっているのは全体として少数にとどまるというのが僕の理解です。

患者が典型的な症状の場合は、それに沿った治療をしていくわけです。

例外を除き、治療法は事実上存在せず、正確にいうと対症療法だけです。

いくつかのパターンがあり、パターンによって症状の出方が違いますので、対処療法の選択が変わってくるので、ほぼ治らないとは言っても、どんなパターンになるのかを判断するのは、一定の意味があります。

脳の機能低下が原因なので、脳の形を見るとわかるとされています。

脳の記憶を司る領域が小さくなっていると、アルツハイマー型認知症というタイプに典型的とされていたりします。

僕は、実際、脳を輪切りにした画像を見る検査で、認知症ではないかとされた方の脳の形を見ることが多いのです。

しかし、あまりにも調査研究で言われているパターンに当てはまっていない人が多い。

認知機能が低下しているのに、ほとんど脳の形が変化していないケースから、
脳の萎縮がだいぶ進んでいるのに、認知機能は全く問題ないケースまであります。

僕には、いくら教科書や論文を読んでも、この違いがいまだに明確に自信をもってわからないです。
大体、典型的な症状を呈していて、脳の形の異常パターンに合致している例は体感数割だと思います。
こんなんじゃ、全然役立に立たないです。

http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/jkpum/pdf/121/121-12/yamada12112.pdf

続く