【読書記録】跳びはねる思考
おすすめ度 ★★★★★
とても、とても失礼なことを書くけれど、まず自閉症者が文章をかけることに驚いた。
同時に、自分に「自閉症者が文章をかけるはずがない」という偏見があることにもショックを受けた。
自閉症者が書いた本ということは知っていて、「きっとすごく独特な文章なんだろうな、読めるかなぁ」なんて決めつけていた自分が恥ずかしい。
とても理性的で、静かな文章。
ページをめくるたびに、自分の思い込みや偏見がぶっ飛ばされる気がした。
自閉症と思われる人が、ブツブツいいながら歩いていたり、急に叫んだりするのがずっと怖かった。小学校の朝礼でも、道を歩いていても、見ないようにしていた。
そんな風に考えていたなんて想像もしなかった。私は彼らを恐怖の対象としか思ってなくて、同じ人間だと思ってなかったのだ。
読み進めるたびに、自分の認識が恥ずかくなった。
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ただ、自閉症者が書いている文だからすごいわけではない。内容も的確で、わかりやすく、ハッとさせられる。無駄な装飾やカッコつけた感じがなく、真っ直ぐな文章。
でもどこか詩的な表現があったり、哲学を感じる部分もある。
全部引用したくなるくらい、言葉の選び方が秀逸で、印象的だった。
どうしてこんな表現ができるんだろう。
著者が会話によるコミュニケーションができないことが理由かもしれない。
会話のように流れて消えていくものではないから、とても慎重に、丁寧に言葉を選んでいるのだと思う。
健常者が安易に言葉を口から出すのと違って、自分と向き合い、自分の中で言葉を咀嚼しているんじゃないか。
そういう向き合い方が常人のレベルとはかけ離れているのだろう。
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最後にある、佐々木俊尚さんの解説も胸を打つ。多様性を認められるようになりたいと思いながらも、ステレオタイプから脱却することは難しい。
この前読んだ「目の見えない人は世界をどう見ているのか」でも感じたけど、社会には色んな人がいてそれぞれ見ている世界が違う。
当たり前のことなのに、まだまだ凝り固まっていることを自覚させられる。
人間はひとりひとり違うのだから、すべてを知ろうとするのは不可能だし、傲慢だ。
それでも自分以外の世界の見え方を知るたびに新鮮な驚きがある。
少しずつ、世界を広げて、寛容になりたい。