【読書記録】サキ短編集
おすすめ度 ★★★★☆
津村記久子さんの「やりなおし世界文学」で気になった本の一つ。
ブラックなショートショートで面白かった。
津村さんは何て書いてたっけな?と思って自分の読書記録を読み返したら、書いてないやんけー!ポンコツ自分!
21もの短編なので全部は紹介できないんだけど、星新一のようなシュールさ、意外性がある。
文学性高めで、些細なことや超くだらないことを必要以上に壮大にドラマティックに表現しているのが面白かった。どことなく三島由紀夫の比喩表現を彷彿とさせる。
自分の世界にうっとりしている人に対して、冷ややかに「あの、何してるんですか」とツッコミたい人にはぜひお勧めしたい(ニッチやな)
好きな話をいくつか紹介。
二十日鼠
あらすじは「ちょい潔癖の男の服に二十日鼠が入り込んでしまう。全部脱がないと鼠を出せそうにない。電車で同室になった中年婦人にバレずになんとか鼠を出さなければ」という、なんのこっちゃな話。
でも男が鼠に焦る必死さが、無駄にドラマティカルなのだ。
体を走り回る鼠に慄く様がこちら。
最終的に全裸になって、毛布で隠してしのぐのだけど、まもなく終着駅に着いてしまう。このままでは毛布を被った露出狂として駅を降りることになる。どうしよう。その様子がこちら。
とまあこんな感じで、「今なんの話でしたっけ?」という気分にさせられる。ラストに笑えるどんでん返しがあるので読んでみてほしい。
家庭
これも必要以上の比喩表現が好き。なかなか結婚しないモテ男が親族の圧に耐えかねてボチボチ結婚するかーって話なんだけど、
こんな感じで例え話が多い上に関係なさすぎて、話がよくわかんなくなる。三島由紀夫でもよくあるし、津村記久子さんでもよくある。
この手の表現が大好きなので、大好き。
十三人目
ずば抜けてアホな話。
戯曲タッチで、男と女が再婚する時にお互い連れ子が13人いて…って話なんだけど、この二人が紳士淑女に見えて超アホでクズ。
アホな会話が無意味にドラマティック。何考えてたらこんな話がかけるのか、サキさんに聞いてみたい。
おせっかい
どんでん返しで怖い系。因縁を付け合った二人が和解しそうで、なんか最後にあって和解できないんやろな…と思ったらもっと怖いラストだった。これはゾワゾワ系。
七つのクリーム壺
海外文学あるあるだけど、登場人物の名前が覚えにくい。覚えにくいレベルではなくこの話にはウイルフリッド・ピジョンコートという人がたくさん出てくる。イライラするが、それも狙いどおり、同姓同名を逆手に取ったドタバタ劇だ。上手いなぁ。
以前書いた「5分後に意外な結末」にのっていたサキの作品の原作もこれに載っていた。
ストーリーのどうでもよさ(褒めてます)とブラックな笑いは、年代を問わず受けるんだろうと思う。翻訳者が違ってもまた楽しみ方が変わりそう。
好みにも合うので、他のも読んでみたい。