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【読書記録】ジヴェルニーの食卓

おすすめ度 ★★★★☆

ほとんど読んだことがない原田マハさんの小説。帰省中に母に勧められて読んだ。


マティス、ドガ、セザンヌ、モネの有名な4人の芸術家の物語で、フィクションではあるけど実際の芸術史とも矛盾していないらしい(あとがきで国立西洋美術館長が書いてた)。
どの話も情景描写が美しく、文章に気品が漂う。それでいて読みやすい。

ただ私は西洋美術の素養が無さすぎて、読み終わってから、「マティスて誰や」とググってしまうようなタイプなので、たぶん作品の魅力を1割も理解できてない。
「あぁ、あの作品のことね」ができないのが悔やまれた。
母は美術畑で、西洋美術に詳しいので物語の細部まで理解できるのだろう。羨ましい。


唯一知ってるモネが描かれて、表題にもなっている「ジヴェルニーの食卓」はやっぱり1番楽しめた。

話はモネの義理の娘の視点で語られていて、第三者的に事実だけ見ると割とスキャンダラスな話。きっと美術史としてはそう残ってるんだろう。
でもそこは原田マハさんの小説の力で補完されていて、穏やかで切実で、でも心が温まるストーリーになっている。
とてつもない芸術家という面と、人間らしく共感できる面のコントラストが上手いなぁ〜と思いながら読んだ。


素養のなさが丸見えで恥ずかしいけれど、1番描写の美しさを感じたのは食べ物のシーンだ。
とにかく美味しそう。
義理の娘、ブランシュは亡き母に代わってモネの食事を作るのだけど、それがもう、全然知らん食材の知らん料理だけど美味しそう。
白タマネギのファルシとか、若鳥の狩人風とか、ノルマンディ特産のバターとか。
モネが貧しかった時代の質素な食卓も、有名になってジヴェルニーという場所に移り、畑で取れた新鮮な食材で作る食卓も、なんというかこう……香りが漂って色が目に浮かぶように描かれていて「おいしそーーー!」なのだ。

「ジヴェルニーの食卓」というだけあって、食が終始大切に描かれているので、たぶん私の感想も的外れではないと思う。

美術館に行ったあと、ちょっといい美味しいフレンチを食べたような気分が味わえる。普段私が手にとらないけれど、優美な良い作品だった。



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