つな木 Challenge5 ー 地域と神社をつなぐ|つな木×神社カフェ ー
大庭 拓也、熊田 翼
日建設計 新領域開拓部門 Nikken Wood Lab
遊休地を活性化する「どこでもつな木」の実装トライアル
一昨年10月に日建設計東京ビルにて実施した「OUTDOOR LOUNGE」の発展形であり、ポップアップショップやワークプレイスとして利用可能な「どこでもつな木」の実装トライアルを紹介します。
東京・調布の総鎮守 布多天神社の境内で、森林浴を楽しみながらハンドドリップコーヒーを飲むことができる屋外カフェが2021年5月1日に開かれ※1 カフェブース及び飲食スペースとして日建設計が開発した「つな木」が導入されました。
緑×コーヒー×ものづくり|地域に寄り添う神社として
調布駅から徒歩10分の距離にある布多天神社には、都心にいながらにして森林浴を楽しめる豊かな緑な境内があります。
図1 布多天神社|緑に囲まれた境内
神社はかつて学び・交流の場でした。
「再び神社と地域の人々がつながり、交流する場をつくりたい」「神社として地域貢献をしたい」という思いから様々なイベントを開催している布多天神社に共感したオフィスミゴトの岸田さん(カフェ運営)は、地域でも貴重な布多天神社の緑・広場空間を活かしたカフェを開くことが最適なメディア・コミュニケーションの場になると考え、この企画が始まりました。
そこで開発中の「つな木」の実用性の実証実験も兼ねたトライアルとして、簡易型カフェを岸田さん、Nikken Wood Labの2者で共同開設することになりました。
図2 岸田さん|カフェ運営・企画を担当
図3 神社で味わう本格ハンドドリップコーヒー
今回カフェブースの組み立ては地域の子供たちと共に行いました。つな木は場をつくるだけでなく、地域の人々と神社をつなぐきっかけとして、また子供たちが木と触れ合う機会をつくる木育活動 ※2として活躍します。
図4 子供でも簡単に施工が可能な接合部
図5 子供たちの活躍により1時間程で骨組みが完成
境内の緑を楽しむ空間づくり|カフェブース+折り畳みブース
2mの木材10本、0.5mの木材4本、クランプ20個で構成される「どこでもつな木」は単位ユニットを組み合わせることでポップアップショップやワークプレイスなど様々な用途に展開することができます。今回のトライアルでは2ユニットを用い、カフェブースとして利用しました。
図6 どこでもつな木|組み換えバリエーション
つな木の特徴は、ベースのユニット形状から敷地や使用条件に合わせてカスタマイズが可能なことです。
今回は屋外で使用されること考慮し、木材を追加の上、寄棟形状とすることで雨仕舞を確保しました。また、境内は地面の凹凸が激しいので、運搬しやすさを考慮してキャスターの径を通常より大きくしています。
図7 カフェブース|条件に合わせたカスタマイズ
カフェブースに加え、神社で椅子として利用される「胡床」をモチーフに収納が可能な折り畳みブースを飲食スペースとしてデザインしました。購入したコーヒーを飲みながら座ってゆっくり過ごすことができます。
図8 胡床|神社などで利用される座具
図9 折り畳みブース|4人掛けの飲食スペースとして利用
図10 折り畳みブース(畳んでの運搬・収納が可能)
コラボレーションにより広がるつな木の可能性
「どこでもつな木」は名前の通り、使われる場所に応じて変幻自在にカスタマイズすることが可能です。
今回のトライアルでも岸田さんとの会話の中でつな木の姿が変わってゆき、最終的に新しい形のつな木が生まれました。
今後は、ここでのトライアル経験を活かしながら、「どこでもつな木」を全国へ普及すべく、さらなる改善・バリエーションの検討をはかっていきます。ご期待下さい!
図11 クライアントを交えたモックアップ確認の様子
注釈
※1 営業日|祭事開催日。
※2「木育(もくいく)」は、幼児から高齢者までを対象とした、生涯にわたる幅広い活動。木についての様々な体験は、単に木についての理解を深めるだけでなく、鋭い感性や自然への親しみ、森林や環境問題に対する確かな理解の基礎を育むもの。(www.mokuiku.jp より引用)
共同チーム
デザイン:株式会社日建設計 Nikken Wood Lab 大庭拓也 熊田翼
/中村彩乃設計デザイン(カフェブース外装,折り畳みブース側面外装,ベンチ)
クランプ製作、ユニット販売:三進金属工業株式会社
木材調達:江間忠木材株式会社/株式会社篠原商店
外装製作:株式会社もちひこ(折り畳みブース天井膜,テーブル膜)
外装製作ディレクション:倉持有沙(カフェブース外装,折り畳みブース側面外装)
ロゴデザイン:佐藤はなえ
企画・運営:株式会社オフィスミゴト
協力:布多天神社
クレジット
タイトル画像/動画/図2、4、5:中戸川史明 撮影
図3 佐藤はなえ 撮影
図8 座間郷総鎮守 鈴鹿明神社ブログ「社務日記」https://blog.goo.ne.jp/suzukajinja/e/ec00134e1e1401d80b724be68e617903より画像引用
大庭 拓也
日建設計 新領域開拓部門 Nikken Wood Lab
ラボリーダー
「つくればつくるほど生命にとって良い建築」をマニュフェストに、都市・建築の木質化に従事し、その実証実験として「つな木」プロジェクト等を推進中。 新領域開拓分野である「Nikken Wood Lab」を発足し、代表を務める。有明体操競技場、選手村ビレッジプラザ、渋谷区北谷公園などを担当。
林野庁長官賞、グッドデザイン賞、JIA25年賞などを受賞。
熊田 翼
日建設計 新領域開拓部門 Nikken Wood Lab
プロジェクトデザイナー
Nikken Wood Lab に所属し、主に木関連プロジェクトに従事。
建築以外にも絵、音楽、ダンスなどの芸術活動を行う。様々な分野から求められる居場所づくりに対し、同じ材料、構法で解くつな木に面白さを感じ、参画。プロジェクトを通じて空間づくりの探求を行っている。