京都駅ビル熱源改修 ~ASHRAE技術最優秀賞~
牛尾 智秋
日建設計 エンジニアリング部門 設備設計グループ
アソシエイト
全世界のプロジェクトを対象に、毎年行われるアメリカの暖房冷凍空調学会ASHRAEの技術賞(TECHNOLOGY AWARD 2021)にて、京都駅ビルの熱源改修が、最優秀賞(FIRST PLACE)に選ばれました。ここでは、その内容を紹介します。
京都で最も二酸化炭素排出量の多いビルからの脱却
京都駅ビルは、COP3で京都議定書が結ばれた1997年に完成しました。完成当時から地球環境問題に関心をもっておられた建築主は、2009年に京都市が環境モデル都市に選ばれたのを機に、京都駅ビルを自主的に調べられ、ビル単体として最も二酸化炭素排出量が多いことが分かりました。京都市を代表する環境モデルビルに生まれかわるため、2010年に省エネ改修プロポーザルが実施されました。
このプロジェクトに選ばれた私たちは、設計、監理と、改修後3年間の技術コンサルタントとして、省エネ改修に携わることとなりました。今回の改修によって、これまでと同じものを置き換える単純更新では難しかった京都市の厳しい温室効果ガス削減目標を達成することができました。
図1 単純更新と本省エネ改修での温室効果ガス削減率
省エネのエキスパートとのコラボレーション
このプロジェクトでは、建築設備コミッショニング協会により、発注者が目指す省エネ要求性能を達成するためのコミッショニング管理チーム(責任者:京都⼤学 吉⽥治典名誉教授)が結成されました。⽇建設計は、この管理チームが主催するコミッショニング会議を通して、建築主、コミッショニング管理チーム、施工者、運転管理者と共に知恵を出し合い、省エネ改修とイニシャルコスト減の両立を図る設計を成し遂げました。単純更新に比べ、増えたコストを改修後の光熱水費削減により約6年で回収できる見込みとなっています。
図2 プロジェクト体制
省エネ改修を営業したままで実現
京都駅ビルの熱源システムは、蒸気主体でした。東⻄に⻑い施設のため、蒸気配管から約25%の熱が失われていると推定されました。⼀⽅、照明のLED 化により、契約電⼒にゆとりが⽣まれていたため、蒸気を減らして、冷⽔をつくるのに最も効率の良いインバータターボ冷凍機を主体とした熱源に切り替えました。
改修にあたり、事前に調査を十分に行い、各⽉に必要な熱源能⼒を把握した結果、熱源容量を20%減らせることがわかりました。熱源切り替え工事中は、必要な容量の熱源だけを残し、それ以外の空いたスペースを熱源更新に使うことで、通常営業に影響を与えず、熱源を更新できました。
図3 改修前後の熱源システム
60%の省エネを実現
改修後も検証チームを中心に省エネ性能を確認する検証作業を続け、改修前と比べて、エネルギー消費量が、改修後1年目で56%減、2年目は59%減、3年目には60%減となり、改修によって、目標の60%省エネを実現することができしました。このような取り組みの成果が認められ、国際的な表彰を受けることができました。
図4 改修後3年間のエネルギー量
牛尾 智秋
日建設計 エンジニアリング部門 設備設計グループ
アソシエイト
京都駅ビルの熱源改修に調査開始(2011年)から改修後3年間の性能検証修了(2019年)まで担当。省エネ大賞経済産業大臣賞、リニューアル賞、カーボンニュートラル大賞を受賞。中之島フェスティバルタワー・同ウェストの機械設備設計を担当。BCS賞を受賞。
TOP画像:ISTOCK.COM / SEANPAVONEPHOTO
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