マッピング解法で解く!私大現代文《3》──青山学院大学(後編)
❖ダイレクトマッピング撤収,次の作業へ
前回予告したように,残りの設問のうちの4問を解きます。
まずは問一の傍線部問題から。いつものように,傍線部の言い換え表現を選択肢に探すダイレクトマッピングから入りましょう(本文を読む必要はありません)。
選択肢はいずれも「~に変わった」「~に(と)なった」で結ばれ,傍線部「新たな局面に入った」の具体的な内容に触れています。しかし,傍線部には具体的な内容が書かれていません。
これじゃダイレクトマッピングで絞れない・・・・そうと分かれば長居は無用, 早急に撤収して次の〔作業②〕に移ります。
❖その前に,ちょっとだけおさらい
〔作業②〕 の前に,マッピング解法の手順およびその成立根拠についてチャチャッとおさらいしておきます。すでにご存じの方は,読み飛ばしちゃってください。
❖《傍線部──本文》マッピングで参照範囲を確定!
〔作業②〕は傍線部の言い換え表現を本文中に探して「参照範囲」とする,さっそくやってみます。
傍線部a「新たな局面に入った」の言い換え表現として,同じ段落の最終文の「新しい局面が始まった」が目に入ります。とりあえず,このフレーズを含む一文を参照範囲として確定します。参照範囲は,原則的に狭いほど作業が効率化します(読解量削減+"地雷"の除去=マッピング精度向上)。
❖視野を広く取って正解を射止める!
参照範囲を確定したらすかさず〔作業③〕に移行,「選択肢の言い換え表現を『参照範囲』の中に探す」の実践です。見やすいように,参照範囲と選択肢を下に併記します。ここから一発で正解を仕留められるでしょうか?
〔作業③〕の《選択肢──参照範囲》マッピングのコツは,前回お話ししたダイレクトマッピングと同じ。すなわち鷲の目(イーグルアイ),少し高い位置から全体を眺めるイメージで参照範囲と選択肢を見比べます。
もう一つ,選択肢の文が短いときは,その一文の半分以上(長いほどよい)と対応するフレーズを参照範囲に探すように心がけます。これはマッピングの精度を上げるためです。
また,参照範囲と対応しない(言い換え表現がない)選択肢は,自動的に落としてしまってかまいません。こうした思い切りの良さも大切です。
さあ,どうでしょう。
・・・ありました! 「言い換えマップ」で示します。
➄が正解の最有力候補,それに対抗し得る選択肢はありません。
短い語句では,④「平等」と参照範囲「等しく」が対応しているように見えるかもしれません。しかし,参照範囲の「等しく」は「(同じ競技の)享受者」にかかる修飾語に過ぎず,④の趣旨「誰にとっても平等になった」に力点を置く表現ではありません。
よって④と➄を比較した場合,➄が勝ちます。正解も➄。
続いて問四。
❖傍線部中の“目印”を追跡して参照範囲を確定!
問四もダイレクトマッピングで正解候補を絞り込めないため,〔作業②〕による参照範囲の確定に入ります。
傍線部eの中では,「造形」というちょっと異質な言葉にひっかかりを感じます。そこで,「造形」を目印に,本文中にその言葉を探してみます(本では「目印ハンティング」と命名)。
ありました。その段落を下に引用します(太字は筆者)。
このあとまだ続きがあるのですが,上に引用した範囲(斎藤夫人の「造形」の具体的描写)だけを参照範囲にして〈作業③〉を行うと,早くも選択肢②に当確マークが付きます。下の「言い換えマップ」をご覧ください。
選択肢③「ラジオ放送だけでなく、新聞の記事によっても試合経過を確認している」が近いようにも見えます。
しかし,彼女は新聞記事を「試合経過を確認」するために読んでいるのではありません。「ゲームを反復して享受する」ために,“ラジオで野球放送を聞いた翌日”に新聞を読んでいるのです。この違いに注意しましょう。
正解は②です。
❖空欄補充も「言い換え表現」でケリ!
次は空欄補充問題の問十です。設問と,空欄E,Fが設けられた本文の一節を下に引用します。
E「散漫な情景に色付けを施し」とF「散漫さそのものを滅しさる」の言い換え表現をそれぞれ探してケリがつきます。
分かりやすい方から見るのがコツ,これはFからです。
F「滅しさる」となれば,➄「F消去」しかありません。①「F縮小」は意味的には近いですが,いくら縮小しても「滅しさる」のは不可能(極限まで小さくなるだけ)。
E「色付けを施す」は,③「E色彩」か➄「E修辞」かで迷う人がいるかもしれません。分からなければFだけで判断して、➄を選んでしまってかまいません。正解は➄です。
マッピング解法とは言えませんが,空欄補充問題でも言い換え表現がカギを握っているのです。
ところで,中編で解いた問九と問十一の選択肢に「アナウンサーの魔術」が出てきたのを覚えていますか? この設問を解くと「なるほど,そういうことなのね」と納得です。
❖ラストの内容一致問題,本文に戻る必要なし!
最後は問十二,内容(不)一致問題です。
本文の内容に合致するもの(もしくは合致しないもの)を選ぶ問題は入試現代文の定番中の定番,たいていラストに出てきます。
内容一致問題は,いちいち本文の該当個所に戻って確認するのに時間がかかり,面倒かつストレスフルです。しかし,この設問は本文に戻る必要がありません。問十の「アナウンサーの魔術」を思い出せば一発!
「散漫な情景に色付けを施し」たり「散漫さそのものを滅しさ」ったりするのが「アナウンサーの魔術」でした。ということは,③「ラジオ放送によりアナウンサーは本物の野球試合を正確に中継した」が本文に合致していないのが明白,もちろん正解は③!
❖「積極法」を積極的に使いたい!
ひと通り片づけたので,まとめに入ります。
マッピング解法は,全ての選択肢を本文と照合して最適解を見つける消去法ではなく,いきなり正解を当てにいく「積極法」を持ち味とします。
消去法の長所は確実性(正解精度の高さ)にありますが,時間がかかりすぎたり"地雷原"に迷い込んでしまったりするのが難点です。対する積極法の長所は手早く設問を処理できる,"地雷"を踏みにくい,などです。短所は正解精度が消去法に比べて若干劣るところでしょうか。
したがって,易~標準レベルの設問はあまり神経質にならずに積極法で手早く処理し,手ごわそうな難問(紛らわしい選択肢が多い)だけを消去法で解くといった時間配分を心がけると,得点力が向上し安定感も増すでしょう。
以上,ご参考にしていただければ幸いです。
********************
最後に戦果発表。まだ残兵が潜伏していますが,あとはお任せします。
大丈夫,手ごわい相手ではありませんから!