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その人の香り

マスク生活も長くなりました。

皆が敏感になって、バスの中で咳をする人への冷たい視線は、そこまでと思うことがあります。

満員の中、若い女性が乗って来たとたん強烈な香水のにおい!

露骨に嫌な顔をする人や手を振ってくさいくさいをアピールする人もいて、においには十分に気を付けるべきでしょう。

自分のスキは他人の苦手かもしれません。

私は訓練生時代に行ったフランスで、香水と出会いました。

それは町なかの洗練されたショップではなくて、古いホテルのエレベーター。

とびらは、鉄製の蛇腹式でした。私が乗り込むとそこにはシャタン色(栗色)の美しい髪をシ二ョンにまとめた夫人が乗っていました。軽く会釈して2,3階一緒に上りました。小さく微笑んで降りて行きましたが、かすかな香りを残しました。なんて素敵な!とそれが香水との出会いです。

日本のようにぷんぷんと香水のにおいをさせている女性はあまり見かけず

これぞ香水の国という印象を持ちました。お風呂にあまり入らないからという習慣もあるそうですが、今はどうでしょう。

子供たちは小さな時から私のかすかな香水のにおいを身近に感じていたようです。

「私が逝くとき棺に入れてね」と娘に言っているくらい、トレゾアという香水が好きです。

人によって体臭が違います。体温によってもその人の香りになると聞いたことがあります。

気に入って同じものをつけてもまた違う香りとなって、その人を包むようです。残り香という素敵な言葉があるようにいままでその人がいた証とは少々大袈裟ですが、その人の雰囲気にぴったりで主張し過ぎななければいいものだと思います。

最近娘が孫たちにドーナッツを出したところ、二人の兄弟が、「のりちゃんの味!」だと言ったそうです。

それはシナモンの入ったドーナッツで、私はコーヒーにも毎日振りかけているのですが、味!といったところが、幼い子供らしくておかしかったです。

微かな香水より、そちらの方に反応している。それも子供の感性でしょう。

父はパイプたばこを吸っていて、その香りが幼い時から大好きでした。象牙のパイプを母に内緒で吸ってみた時の何とも言えないいい香りを思い出します。見つかってこっぴどく叱られたことも…。しかし成人になってもたばこの香りはスキですが喫煙者にはなりませんでした。

健康のためというよりは、かっこよく煙をくゆらせる女性にはなれそうもなかったからです。

母は着物に小さなにおいぶくろを忍ばせていました。私にはビャクダンも線香の印象が強くてあまり好きではありませんでした。

汗っかきの主人はいつも清潔が大事!とシャワーをよく浴びていましたから、シャンプーの香りでしょうか?初対面の清潔感がそう思わせたのかもしれません。

その香りでその人を思い出す。

においと香り。大きな違いです。

今日もいい日にしましょう!






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