雨の桜もいいもんだ
花冷えの公園。少しどころか冬のような寒さです。やっと3人お花見の約束がかないました。と言っても今のご時世。遠方に行くのではなく近くの公園。
傘を差しながら、もちろん透明の!最近は傘に凝る人が少ないような、みんな実用的なビニール傘がほとんどです。たとえどこかに忘れてもあきらめがつくしお手軽な価格。全方面がよく見える。おしゃれでないことを除けばほぼほぼ合格点。
そんな傘にひらひらと桜の花びらが舞ってきてこれはこれで、楽しい花見になりました。
鈍色の空模様に灰桜のそれはとても可愛くて、そのまま持って帰りたいくらいです。
傘をくるくる回して、子供みたいに全員がします。いい年なのにと笑われそうですが…。
東京に来て同時入社の人との共同生活はすれ違いばかりでした。こちらのシフトとあちらのとが重なって1、2日はお休みが一緒の時もありましたがほとんどが一人暮らしのようなものでした。
そんな時は実家にとんぼ返りしたり買い物に出かけたりとあっという間のお休みになりました。あるとき一緒の休日となり高尾山に行こうとなって二人で行きました。関西出身同士、二人になれば関西弁。なれない電車を乗り継いで到着した山頂から小仏城山に向かうハイキングコースに咲く山桜やソメイヨシノの千本桜、それはそれは素晴らしい眺めでした。
その時の桜を押し花にと持って帰ったのですがすっかり忘れていました。雨が降り出して傘を持たない二人が急いで拾った桜。下宿のアパートに戻ってお互い自分のノートにはさみながら、これまでのこと、これからの事を話ました。訓練は厳しかったですが、その先にある世界に今飛んでいけるようになったという現実、まだ見ぬ外国の風景だったのが自分の目で見てその地を歩いている。お互い小さなころからの夢がかなったという幸せ。あきらめないで良かったと笑いました。
その記念の桜は知らぬ間にどこかに行ってしまいました。
何十年もたってそれが母がくれた文箱から出てきました。「わ―こんなところから」とつまんだとたん音もなく崩れました。残ったのは真ん中の硬い部分だけ。いっしょに暮した彼女も今は音信不通。どこでどうしているのかもわからないままです。でもあの時の共同生活はいい思い出です。青春の1ページとしていつまでも残っています。
彼女の押し花はどうなったでしょう!一期一会の出会いを今は懐かしむ場所にお互い立っているようです。
いろんな人と出合って別れていく。また出会っての繰り返し。その時に合うべき人であったと思われることばかりです。
今年はひとひらの桜をもう一度大事なノートにはさむことにします。
今日もいい日にしましょう。
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