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運転免許証 返納は吉
運転免許証を返納するのに迷いはありませんでした。
車の運転は大好きでした。
最近高齢者による人身事故という痛ましいニュースを聞くたび自分もそんなことを引き起こす可能性はないとは言えないと思っていました。
私より若い人の家族を悲しませるなんて辛すぎます。
そこで還暦で運転することをやめました。さあ、いつ免許証を返納する?
息子は「運転するのが好きなんだから、もう少し持っておきよ!」「まだ使うことがあるかも。」と言いました。娘は「どっちでもいいんじゃない!」と関心なしです。
子供が小さな時、車は必需品でした。荷物は多いしウロチョロするし、時間はないしで、生活に欠かせない便利なものでした。
日常が一変。商売を継いで、毎日電車で通勤するようになってもたまに会社へ車で行ったり、土日にはドライブ、近くのスーパーさえも車。ほとんど歩くことが無くなりました。時は金なり!早く用事を済ませたい。
交通違反もなく事故もなし。運転は楽しいことばかり…。今のようにあおり運転もなければネズミ捕りが張っているその少し手前で対向車のヘッドライト点滅。その合図で助かったこともたくさん。私も何度かお返しの点滅サイン。そうそうスーパーカーが大流行りで子供たちが陸橋から外車を見つけてはパチリ。バブルが来るもう少し前です。いい時代でした。
旅行は愛車でというのが夫婦での約束でいろんなところに行きました。
主人が逝っても同じメーカーの車。その後の買い替えは3台になりました。
ファミリーカーに始まって、だんだんと小さくなり、最後は小さなスポーツカー
念願の車でした。車体が低い分、少々年寄りにはきつかったですが…。そんな様子は決して見せまいと。
運転はしなくなっても免許証はそのまま。身分証明書になるからと手放すことは頭からありませんでした。
このままでもいいかとも思っていたころ二度目の断捨離⁈、私が次にすることは免許証返納だと思うようになりました。「身辺整理」最後の仕事です。
それまでにはカードで買い物することはすでに卒業して、今の身の丈の生活をすることは車に乗るのをやめることに繋がりました。
「もう運転はしようと思わないの?」と聞かれることがありますが、あんなに運転するのが好きで少々自信もあったのにハンドルを握るのが怖くなっている自分がいました。この年になって誰かを傷つけたら、今から後悔するジンセイは送りたくないという少々大袈裟ですがそんな気持ちが生まれていました。
返納日は突然やってきました。たまたま下山手にあるビルに用事があり歩いているときです。「こちらで免許証の自主返納ができます」の看板です。
その前から返納に必要な書類は準備してカバンにいつも入れてました。
「今でしょ!」導かれるようにビルに入ると「もう引き返せませんよ」というかのようにエレベーターのボタンを押してくれる係員がいました。「6階へどうぞ―」
あとはベルトコンベアーに乗ったようなもの。
30分のあっけない幕切れでした。
帰宅して夜、子供たちに電話しました。言い出したら聞かない、急に実行する私の性格は熟知している二人はあっさり納得したようでした。
ひと~つずつ、自分からはがしていく。なんだか快感なのです。しがらみにも似たものが一緒にほどけていくような気もします。また一つ荷物を下ろした感じです。
心はピュアに向かって…。ますます身軽になりました。
今日もいい日にしましょう!