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昭和の梅雨
小さなころの6月は毎日しとしとと音もなく雨が降って家の中もなんだか暗くて…。ぼんやり庭の濡れた風景を見るのが憂鬱でした。
学校に通うようになっても一番うれしくない季節でジメジメした空気が特に苦手でした。
まだまだ扇風機も出始めたところ。
その風は部屋の空気を混ぜるだけで新しい風を生むこともありませんでした。
「ずーっと顔を当てていると顔がいがんで来るよ!」と脅されて遠くから…。
束の間の晴れ間。庭に出来た水たまり。秋田犬のフジは犬小屋から出て
いろんな匂いを探しているようでした。
庭の草木はたっぷりと水を含んでアジサイの大きな頭はしなってうなだれています。
ちりん!と縁側の風鈴が鳴って少し生ぬるい風が吹きました。
今、その時と同じなのは庭のアジサイだけです。
縁側もなければ風鈴もつるしていない我が家の風景。
フジに代わってニケが寝っ転がっています。
アレから何十年も経って梅雨の季節は変わらなくてもその時期を通って来た家族の一コマがふと思い出される時があります。
現代のように豪雨はあまり記憶にありませんが規則正しく静かな雨音。「これもお米を作るには大切なこと」と教えられて田んぼにカエルの鳴くころや卵からオタマジャクシ。
たくさん連れて帰った?その子たちに足が生えてまもなく朝には空っぽのバケツを覗いたときの驚き!
庭のあちこちで雨に濡れるカエルのかわいらしさは絵本の中のようでした。
今はそんな風景もなくなってしまいましたが、子供たちの山みずが流れる溝の落ち葉の勢いよく流れるのを追いかける様子は同じです。
昔が豊かで今がということもなさそうです。その年代に生きてきたことを何の疑いもなく楽しんでいる。
大変な思いをして生き抜いてきた祖父たちは今はもう会うことはできませんがそんな家族も故郷があって田植えの季節。知り合いの但馬まで手伝いにいった話を楽しそうに話す姿も…。
今朝の雨音はそんな遠い昔のことを思い起こさせてくれました。
なぜか朝から湯気立つ白いごはん、茄子の味噌汁、だし巻き卵が食べたくなって台所に立ちました。ニケは不思議そうに見ながら卵焼きのおすそ分けを期待しているようですが…。
今日もいい日にしましょう!