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8/24 読了『廉太郎ノオト』

『廉太郎ノオト』谷津矢車

 誰もが聞いたことのある作曲家、瀧廉太郎の物語。
 本日はなんと彼の誕生日なんだとか!
 せっかくなので、今日のうちに感想を残しておきたいと思います。思うがままですが。
 内容はこちらに詳しく載っています。


 病床の姉との合奏の思い出が、従順な子供だった廉太郎を音楽と結びつける。脳裏にはいつも音楽に憧れ、彼の才能を眩しがった、亡き姉の姿があったのだろう。胸の中の彼女に勇気づけられ、思いを継ぎ廉太郎は音楽の道へとつきすすむ。

 文武両道で音楽の才能にも恵まれた廉太郎だが、性格は至って控えめ。演奏も、主張を控え相手や場に自然と協調してしまうところがある。厳格な父を恐れて育ったこと、病床の姉に合わせる姿勢が染み付いていたことが影響したのだろうか。自分が自分がと前に出る我の強さが廉太郎にはないのである。それは演奏にも現れてしまう。旋律の弱さとして……。

 廉太郎は自分とは対照的に、苛烈な印象を残すバイオリニスト幸田幸と出会う。共演者を振り落とす勢いで奏であげる幸には、人に合わせるつもりがない。ひとり孤独な場所にいる。

 二人の呪いのような、祝福のような出会いは、それぞれの成長に必要なものを自然と浮かび上がらせた。いつの日か、刺激し合って成長した二人の合奏が実現する。当人たちも、周囲の人間も皆期待を膨らませていただろう。私も小説の中でその時が描かれるのを待っていた。

 説得力のある人物像。音を感じる確かな描写。
 夢半ばに夭折した彼の人生がドラマチックに描き出される。

 廉太郎が生み出した数々の唱歌は、彼が演奏者としての欠点を克服しようとチャレンジする中で生まれた。彼は広く人々に愛される強い旋律で、歌の世界を表現した。
 廉太郎にとって強い旋律を奏でることは、対立を恐れて言い控え、傷つけるのを恐れて合わせていた、こどもの私を乗り越えることであっただろう。
 そしてまた、作詞者と一つの作品を作ることは、幼い頃姉と音を重ねて遊んだことを思い出す、奏でる楽しみの原点でもあったのではないか。
 そんなことを思った。



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