【漫画】おすすめの短編集を厳選!
随時更新中(最終更新日.2024/10/30)
長編も短編を分け隔てなく読むニケです( 'ᢦ' )
短編集は皆さんお好きですか?
作家買いする自分にとっては、好きな漫画家さんの知らない一面が垣間見えたりと、とてもお得な気持ちになります(^^)
まあ中には世界観や作風が趣味嗜好に刺さらず、一つも面白いと感じれない短編集も多々ありますが...笑
そんな中で、自信を持って紹介できる短編集・作品集を集めました。
時代も性別も問わない、メジャーなものからマニアックなものまで、多種多様な厳選をとくとご覧あれ!
『竜のかわいい七つの子』
九井諒子 / KADOKAWA
九井諒子ワールド全開の、前代未聞の世界観で描かれる7つの物語。竜や人魚、神様といった想像界のものたちと人間の触れ合いを描く。SF、ファンタジー要素を現代的に落とし込むのが巧い。どの作品も、じんわりと心に染みるファンタジー加減で、読み心地がとても良いです。ふと思い出した時に、また帰って来たくなるような世界が詰まっています。
『と、ある日のすごくふしぎ』
宮崎夏次系 / 早川書房
ぶっ飛んだ設定、シュールな状況を肯定したような世界感。ここまで先の展開が読めない漫画があるだろうか。発想、着眼点には目を見張るものがあります。ふしぎな日常に溢れる、喜び、哀しみ、鬱憤、葛藤を優しく、ときには激しい筆致で描く。ふとした時、何気ない瞬間に読んで欲しい一冊。心にスっと優しさが流れ込んでくる。唯一無二のセンスが最大限に発揮された短篇集です。
『放浪世界』
水上悟志 / マッグガーデン
多種多様な水上悟志の5編のSF短編集。突出していたのは「虚無をゆく」。不穏な導入から、世界が一変する衝撃展開。予想を裏切られ、終着点の見えない世界に没入してしまいます。露骨な伏線では無く、後に伏線と分かる演出が抜群に巧い。74Pの読切であるが、一冊分の漫画を読んだような満足感が得られる。どの短編も目を見張る面白さがあります。
『室外機室』
ちょめ / 双葉社
目次すらも世界観の一部のようで、本編が始まる前から既に引き込まれます。個人的に好きなのは「地下図書館探検譚」。ファンタジーとリアルの交差が絶妙。図書館の地下に広がる異様な世界に迷いこむ少女。何処かジブリのような雰囲気を纏っており、空想から現実に戻っていく過程が軽やかで後味も良い。自分の好きが全て詰まった良質なローファンタジー作品です。
『神様お願い』
小骨トモ / 双葉社
表紙の可愛らしい単調な絵柄とは裏腹に、内容は暗く陰鬱な空気が漂う。どの短編も思春期におけるリビドー、葛藤、不安といったネガティブなテーマを題材としています。歪んだエロティシズムの終着点は、どの作品も途絶したような終わり方。それがまた衝撃的で、印象に強く残ります。後味は最悪なのだが、気持ち悪さと美しさが同居し、僅かな心地良さを生み出している。その心地良さが癖になり、何度も小骨トモさんの世界観に浸ってしまう。怖いもの見たさで是非読んで欲しい一冊です。
『あと一歩、そばに来て』
武田登竜門 / KADOKAWA
独自の世界観で様々な愛を描いた短篇集。繊細な筆致で描かれる登場人物が魅力的。異国から自国のお話まで、幅広い人物像を描ける漫画家さん。人間臭さも垣間見えることで登場人物に寄り添いやすく、物語により没入することができます。切なさの中にある美しさを描いたような7つの物語。心を奪われる良質な短篇集です。
『ヌードモデル』
山口つばさ / 講談社
『ブルーピリオド』とはまた違った顔を覗かせます。独創的な世界観に引きずり込み、芸術的な漫画表現で圧倒させます。エロスの中にある美しさと言いましょうか。羞恥心、背徳感が快感、開放感へと昇華され心地良さすらある読後感でした。
中でも「おんなのこ」が好きです。
『シスタージェネレーター』
沙村広明 / 講談社
久誓院家に潜むマゾヒストを卓越した展開力で描き、時事ネタを織り交ぜた女子高生の会話劇で笑いを誘う。余りのテンションの違いに困惑するが、これが妙に心地よい。妹の身代わりとなった少女の奮闘記では、沙村広明のマイルドな部分が垣間見える。かと思えば「シズルキネマ」で沙村広明の趣味嗜好が全開。そして幻の短編「エメラルド」の完成度の高さに思わず唸る。西部劇もいけるんかと.....振り幅の広さに驚嘆させられます。
『心臓』
奥田亜紀子 / リイド社
独特な感性で紡がれる、感情揺さぶる日常の数々。表題は二つの物語が同時進行で描かれ、感情と展開がリンクする様が面白い。一番好きなのは「ニューハワイ」。切っても切れない友情を、生々しく繊細に描き切る。 嗚呼、友情って素晴らしい…..
本の中盤には黄色のページが挿入され、小口から見える黄色がまた美しい。物語も前後のお話と打って変わり、宮崎夏次系さんを彷彿とさせるシュールギャグ。己の趣味嗜好に刺さります。双子の姉妹を描いた「神様」は、刹那的な美しさが際立つ物語。これまた感慨深い余韻に浸れる良質な短編集です。
『ぷらせぼくらぶ』
奥田亜紀子 / 祥伝社
またもや奥田亜紀子さん。
青春時代に負った傷をまた抉ってくるような群像劇。思春期特有の心と体の不安定さ、そこから紡ぎ出される人間模様。解像度の高さから、読んでいて辛くなるものがあります。
「あっち」と「こっち」の世界。取るに足らないモノで出来た壊れやすい友情。一人だけおまつりの外側にいる気分。そんな人間の繊細で脆い部分を飛び抜けた表現力で描き出す。残酷ではあるが、容姿やコミュ力でカーストが決まってしまう狭い世界。そんな「生きづらさ」を抱えた日々に共感しては、嗚咽する。良い思い出も、悪い思い出も、全てが詰まった連作短編集です。
『私は貴兄のオモチャなの』
岡崎京子 / 祥伝社
愛と暴力、これぞ岡崎京子と言わんばかりの尖った作品たち。表題作は余りにも痛々しいが、歪ながらも愛が詰まっている。「3つ数えろ」も中々に衝撃。これがフィーヤン掲載ですよ?センセーショナルな部分が目立つ中で、「虹の彼方に」の駆け抜けていくシーンが個人的には大好きです。
『HER』
ヤマシタトモコ / 祥伝社
女という生き物の姿を、卓越した心理描写で描く連作オムニバス。男からすると「女って怖い」という結論に落ち着くが.....お互い不完全な部分を補ってるわけで、それがエピローグに全て集約されています。女の醜さと男の愚かさ、それら全てが愛おしいものだと。女性向けであるが、男こそ読むべき一冊です。
『神罰1.1』
田中圭一 / イースト・プレス
田中圭一最低漫画全集「神罰」の改良版。史上稀に見る最低で最悪なお下劣ネタのオンパレード。子供には絶対読ませられない、でも大人になったら読んでほしい。ここまで下ネタに一意専心する著者を俺は天才と呼ぶ、最高です。
『雪の峠・剣の舞』
岩明均 / 講談社
異才・岩明均の歴史作品集。新しい所領で本城を何処に築くか評議するだけの話を、何故こうも面白くできるのか。家老の矜恃、若手の躍進、様々な思惑が蠢く"佐竹家"を、確かな人物描写で描き切る。正に手腕が為せる業、脱帽です。
「剣の舞」は『レイリ』のプロトタイプとでも言いましょうか。いやはや、傑作です。
『絶対安全剃刀』
高野文子 / 白泉社
新しい表現方法を追求した高野文子の商業誌デビュー作。
死生観を覆される画期的な着想点の「ふとん」
おばあちゃんを幼女として描く大胆さ、扉を隔て人生を魅せる独自的なセンスが光る「田辺のつる」
どのジャンルにも属さない観念的な作風で、一読では理解し難い心情描写が魅力的です。作品ごとに作風を変え、新たな表現方法を模索する姿が垣間見える貴重な作品集でもあります。
『鉄道少女漫画』
中村明日美子 / 白泉社
小田急線を舞台に展開される純情で美しい恋物語。巧みな物語展開に、緻密な人物描写で、繊細な恋愛模様を描き出す。それぞれの登場人物を絡めてくる描き下ろしの手腕たるや。中村明日美子さんの短編は非の打ち所がないです。
『さよならガールフレンド』
高野雀 / 祥伝社
単調な絵柄で淡々と青春時代の憂鬱、葛藤などが女性目線で描かれる。詩的な表現が美しく、心にじわじわと染み渡る。閉鎖的な空間で、煌やかに映るビッチ先輩に友情以上のものを抱いてしまう気持ちが、男ながらに理解してしまいます。
軽いテンポで物語が進行していくのだが、内容は決して軽くはない。爽快感みたいなのは得られないが、ほんのり優しい温かさを感じる読後感。
『ミッドナイトブルー』
須藤佑実 / 祥伝社
どの作品もノスタルジーが漂い、叙情的で心を揺さぶられます。リアルとファンタジーの匙加減が絶妙で、著者の世界にぐっと入り込んでしまいます。静寂で冷たさのようなものを感じるが、不思議と心は温かい。緻密な人間描写がその温度を上げる要因であるが、青春への郷愁も少なからずあるのだろう。切なくも愛おしい日々がたくさん詰まった短編集です。
『それを言ったらおしまいよ』
よしながふみ / 太田出版
所謂BLもので苦手な分野ではあるのだが、よしながふみだとすんなり読めてしまう。話の面白さが、苦手意識すらも超越したとでも言うのか。
SF要素などもあって、振り幅の広さにも驚かされます。BLってこんな設定にも落とし込めるのかと、概念を変えられた一冊。
BLデビュー作に如何でしょうか?
『東京発 異世界行き』
大武政夫 / KADOKAWA
デビュー作「こまきまき」に、クセが凄い捜査官コンビ、異世界トリップをした高校生の一生など、怒涛の連続シュールギャグ全9作品。
見たことも無いボケの連続に冴え渡るツッコミが面白いです。独特な間と世界観に一度ハマれば、笑いが絶えない作品集。「最後の晩餐」「失策バッテリー」には思わず声が出ました。
『足摺り水族館』
panpanya / 1月と7月
表題作、親戚から贈られた本にはさまっていた水族館のチケット。裏に書いてある道順に従い、目的地の「足摺り水族館」に辿り着くまでを描く掌編。
どの作品も日常のワンシーンから始まり、夢のような不思議な世界へと誘われます。独創的な世界に漂う郷愁、既視感はこの空間でしか味わえない。「完全商店街」では失われたもの、忘れたものを想起させられる。見知ったもの、見知らぬものにも何故か親近感が不思議と湧いてきます。「新しい世界」では、日々新しく生まれ変わる世界が垣間見える。儚さが残るオチが何とも感慨深い。「マシン時代の動物たち」の着眼点、創造力には驚かされるばかり。panpanya作品全て紹介したいところだが、一つだけ選ぶとしたら本作をオオスメします。
『惑星9の休日』
町田洋 / 祥伝社
まるで"惑星9"の住人になったかのように物語に引き込まれます。日常からかけ離れ過ぎないファンタジー感が良いです。町田洋さんは不必要なもの取り除いたような無機質な線を描くが、どの漫画よりも生命を感じます。静寂で淡々としながらも、登場人物それぞれの心の温かさに触れることができる短編集です。
『ミラーボール・フラッシング・マジック』
ヤマシタトモコ / 祥伝社
表題の突飛な設定ながらも、しっかりと纏めてくる手腕。ミラーボールが世界を平和にする掌編、余りにも好き。脇毛、二の腕、おっぱいやら著者のフェチシズムが垣間見え、それが生々しくも爽やかに描き出す。ヤマシタトモコの女という生き物の捉え方、毎度のことなから勉強になります。
『式の前日』
穂積 / 小学館
夏のある日、結婚式を翌日に控えた男女が家で過ごす一日を描いた表題。少し変わった日常の切り取り方が秀逸で、巧みな人物描写に惹き込まれます。どれも毛色の違う作品だが、主体は人間ドラマでこんな設定、世界観でもドラマを展開できるのかと。穂積さんの多才な表現力に魅了される短編集です。
『うみべのストーブ』
大白小蟹 / リイド社
どの短編も淡々としながらも、表現の美しさに魅了されてしまいます。突出していたのは「きみが透明になる前に」。消えてしまったからこそ、視えてくるもの。夫の稜線をなぞるシーンが儚くも美しい。短編の合間に挿入される短歌が、これまた心に沁みる一冊です。
『友人の式日』
るぅ1mm / 双葉社
前編、男性同性愛を描いた青春群像もの。BLではあるが、絡み描写などは無く入門編として最適です。友達に特別な感情を抱いた高校生、地縛霊に一目惚れした青年、造った友達から向けられる愛情、触れられない恋の終わり。どの作品も、好きになってしまったことへの罪悪感、葛藤などが描かれ心に訴えてくるものがあります。切なくも温かい余韻が残る作品集。
『夏を知らない子供たち』
山本和音 / KADOKAWA
太陽から手紙を送る少女、夏を知らない少年、恋愛を強いられる世界といった毛色の異なる物語を独自のセンスで描く。ポップで可愛い絵柄ながらも、テーマ性が秘められており、著者のメッセージがひしひしと伝わってきます。また、着眼点が面白く、他にはない設定を楽しめる。デビュー作・「100ドルは安すぎる」は新人とは思えない完成度。この才能の塊に触れてほしい。
『死刑執行中脱獄進行中』
荒木飛呂彦 / 集英社
『ジョジョの奇妙な冒険』で知られる荒木飛呂彦の短編集。一部ジョジョのスピンオフ作品も含まれるが、ジョジョを全く知らない方でも十分に楽しめる。癖のある画風、奇妙な雰囲気、入り込んだら抜け出せない世界観がそこにある。画力は勿論のこと、構成、展開、台詞回し、ネームの段階から面白いことが伺える。唯一無二の存在感を放つ荒木飛呂彦ワールドをこれ1冊で堪能できます。
『夢中さ、きみに。』
和山やま / KADOKAWA
不思議な魅了を持つ男子高校生の日常を描いた、青春群像劇。なんてことない日常が、和山やまの手に掛かれば笑いに溢れる瞬間に。漫画でこんなにも声を出して笑ったことがあっただろうか。あらゆる賞を総なめにした本作、是非このシュールな笑いの世界に飛び込んで頂きたい。
『スキエンティア』
戸田誠二 / 小学館
身体をレンタルする自殺願望のある女、死んだ娘のクローンを育てる母親、寿命と引き替えに天才となった男など、「禁断の化学」と「ヒト」が織り成すヒューマンドラマ。奇妙な物語ながらも、心温まるドラマが展開され涙を誘われる。個人的に「婚薬」「ロボット」のお話が好きです。
『回游の森』
灰原薬 / 太田出版
疚しさは罪か?を問いた意欲作。少女への愛を秘めた青年、親友に恋情を抱く女子高生、冷えきった白い手に恋をした老教授、それぞれが抱える"疚しさ"を繊細に美しく描き出す。生々しく冷たい物語の中に、ほんのりと肌の温かさを感じる読後感。冒頭の少女が最後に主人公として描かれる構成も良い。
『黄色い本』
高野文子 / 講談社
高野文子さんは文学的でわかり易いものではないが、一コマ一コマの表現力に惹き込まれてしまいます。文字を追っていくうちに、少女と同じように黄色い本に没入してしまう。
比類ない空気感、たわいない日常の解像度、つい噛み締めながら読んでしまいました。傑作。
『大王』
黒田硫黄 / イースト・プレス
駄作もあれど、黒田硫黄臭が色濃く滲み出た愛すべき作品集。どれも先鋭的で、シュールかつ唯一無二の空気感があります。不思議と郷愁なんかも感じたりして、心地良さすら漂う読後感。手塚治虫原作の「メトロポリス」なんてめちゃくちゃな展開なのに、妙に惹き込まれる。"ヨシキ君観さつ日記"が"あさがお"の自由研究に変わってたシーンが何とも感慨深くて好き。
『2週間のアバンチュール』
中村明日美子 / 太田出版
少女の無邪気で残虐なまでのエロへの渇望。毒々しくも美しさがある中村明日美子の世界に、どっぷりと浸かってしまいます。「彼の左目」もこれまた"毒のある耽美"に魅了されます。結末が何ともショッキング。本作を好きだと言ったら道徳性が問われるだろうか、いや傑作なのよこれが。
『Spirit of Wonder』
鶴田謙二 / 講談社
タイムマシン、水没都市、エーテル航行、ミクロ宇宙といった重厚なSFの世界観にどっぷりと浸かれる短編集。ノスタルジーが仄かに漂う空気感がこれまた素敵。アニメ化された「チャイナさん編」も収録。読み応えがあります。
『25時のバカンス』
市川春子 / 講談社
市川春子さんは観念的で"高野文子"さんを思わせる世界観があります。理解なんていらない、エモーショナルな瞬間を感じろ。説明し過ぎないが故の美しさだったり、類のない表現方法に痺れます。前作の『虫と歌』もオススメです。
『異種交流会』
ハルタ編集部 / KADOKAWA
ハルタ連載陣による、人外との交流譚を集めた短編集。それにしても豪華な作家陣!人外と言っても多種多様で、シリアスからシュールなものまで振り幅の広い物語も魅力的です。個人的に『司書正』の丸山薫さんと、『珍獣のお医者さん』の二宮香乃さんの作品が好きでした。
『タラチネ』
南Q太 / 祥伝社
様々な女性の恋を描いた「恋愛物語」はどのお話もグザグサと刺さります。そして最後の「わずか10センチ」で完全にトドメを刺される。切ない恋模様を描いたら一級品ですね南Q太は。エッセイなんかもあったりしてバラエティに富んだ短編集。心の傷を抉られますよ。